私はこの身体で『女優』を演じるの③
それからは、マダムの店を私が買い取り、マダムには社長代理兼チーフとして働いてもらうことになり、三つの体型に合わせたドレスを世に出した。
途端、体型に悩む女性たちは殺到した。
そりゃそうよね。
私が宣伝塔で、今やあちらこちらで〝Oタイプ〟の画期的なドレスで社交界に復帰したのだから。
それに、化粧も髪型も違うだけで、棘となって飛んでくる言葉は減ったわ。
棘となる言葉を告げられても、扇で顔を隠して〝憐れんで笑ってやる〟と、相手は大声で叫び散らし、それだけで自分の品位を落とす。
自分で自分の首を絞めているのよ。
馬鹿げてるわね。
さて、確実に利益を出して、着実に売上を伸ばし、今では〝ファッション・ロザリー〟と名を変えたブランドはうなぎ登り。
富も名誉も手に入れた独身女を放っておくほど、この世界は甘くない。
「ロザリー嬢。よろしければ俺と」
「いえ、ロザリー嬢、よろしければ僕と」
そんな、『コイツの金が欲しい』というのが透けて見える男たちが群がってくる。
私の嗅覚と勘を舐めないでいただきたいわね。
――あなた達が欲しいのは、財産と店だけでしょう?
本当に愛を囁く時、人というのは目の色が違うのよ。
真摯に愛を紡ぐ時、男性の瞳、声色、全てに『真心』というのが籠もるわ。
「上辺だけのおべっかはいらないわ」
「そ、そんな」
「上辺だけなんて」
「あなた方、以前のわたくしを指さして笑っていたのは覚えていてよ」
「ッチ!」
「記憶喪失と聞いていたのに……」
「分かったらどうぞお引き取りを」
「そう言わずさぁ……」
「そうそう、過去のことは水に流して」
馬鹿かしら?
馬鹿だからそんなことが言えるのね。
気持ち悪い。
「あら、ではあなた方、自分を卑下して笑った女性と結婚できるの?」
「は?」
「え?」
「できないでしょう? わたくしも一緒。笑ったような男とは結婚しないわ。言っておくけど、わたくしを笑い飛ばした男たちは皆、顔を覚えていますからね」
「くそっ!」
「お高くとまりやがって!」
「あら? それのどこが悪いの? わたくしは結果を残したわ。あなた方は、何か、結果を残したのかしら?」
「もういい!」
そう言って去っていった。
こういうことが最近増えたわね……。
いい加減、婿養子も欲しいし……どこかにいい人いないかしらね?
◇◇◇◇
そう思っていた時、隣国の第三王子が国に訪れ、パーティが開かれることになった。
隣国の第三王子にはまだ結婚相手も婚約者もいないらしく、女性たちは色めき立っている。
(王子と結婚なんて、よく夢見れるわね)
私だったら、ノーサンキューだけど。
でも、ふくよかな身体を了承してくれるのなら、ある程度の金額は稼いでいるのだし、多少の我儘は聞けるかな?
そんなことを考えつつワインを飲んでいると、「レディ?」と声をかけられた。
振り向くと、褐色の肌に黒髪、エメラルドの瞳の美しい隣国の第三王子が立っていて――。
「ああ……そのふくよかな身体。正に〝豊穣の女神!〟。我が国では、ふくよかな女性を娶ることは〝豊穣の女神〟と婚姻すると言う誉れなのです!」
「え? あ、はぁ……」
「どうか、どうか私と是非婚姻を……。豊穣の女神と出会い恋に落ちたとあれば、我が父も喜ぶでしょう」
「え……」
「豊穣の女神との婚姻は、我が国では止められない〝真実の愛〟とされています。どうか、私と結婚を是非!!」
周囲の女性が悲鳴を上げる中、こんな場所で求婚されてはどうしようもなく。
陛下がお越しになり――。
「是非、ロザリー・カタリシアとの婚姻を進めたいのだが」
「つ、つつしんで……お受けいたします」
陛下相手に嫌だとは言えない。
こうして、私は隣国の第三王子との結婚が決まり――。
「ああ、我が豊穣の女神よ……。君はなんて美しいんだ……」
そう毎日愛を囁く夫を手に入れたのは、良かったのか悪かったのか。
とはいえ、悪い気はしない。
「可愛い人。あまり褒め称えていると、天に戻ってしまうかもしれないわ?」
「ああ、それだけは許しておくれ。君がどうすればこの地上に残れるか考えるから」
「ふふふ」
こんな可愛い夫を持てたのは、ある意味――幸せかもね。
ロザリー?
あなた、きっと人生で今、最も輝いてるわ。
あなたの悩んだこの身体のおかげでね。
――完――
『短編』私はこの身体で「女優」を演じるの ~悪役にされたって、私は私を生きたい~ 寿明結未 @taninakamituki
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