「どうも家に猫が住み着いたらしいのだが」、飲み友達の傭兵コウから唐突に切り出され、“僕”はとまどう。姿は見えないが実害もないのでそのままにしておくとコウは言うが、しかし。話を聞くにつれ、“僕”にはそれがただの猫だとは思えなくなって……とうとうコウの仕事の手伝いを始めたり家を守ったりし始める猫の正体とはいったいなんなのか?
『シャーロック・ホームズ』のワトソン君的主人公である“僕”ですが、おもしろいのはコウさんがやはりワトソン君役であることですね。そんな彼が猫というホームズの行動を記録して語る――しかも猫の正体にまるで疑問を持たず、顛末だけを告げていくからこそ、“僕”と読者は猫の正体知りたい欲を掻き立てられるのです。
そうして焦れた“僕”に激しく詰め寄られてもコウさんは一切動じません。だからもう我々はキーッ! とさせられるわけですよ。本当に憎たらしい男ですねコウさんは!
ともあれコウさん家の猫、その正体やいかに!? 正解は本編で!
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)