星新一風「AIが描いた真理の絵」
@scscjofjwef
AIが描いた真理の絵
素人の書いた近未来SFです。
(そのつもりがもはや現代小説?)
短いのでよろしくお願いします。
「AIが描いた真理の絵」ミニ小説・ショートショート
科学者のY氏は、お絵かきAIを発明した。
最初に描かせたのは、ゴマの絵。
A4の白紙に小さな点。
それはただのドットだった。
●
Y氏「いいじゃないか!」
彼は、我が子の笑顔を初めて見た時のような気持ちで笑った。
でも社会の評価は冷たかった。
いやいや、こんなの子供でも書ける、とY氏は馬鹿にされた。(まあそうだ。)
彼はそれでも研究を続けた。彼は結婚していたが不運にも子供ができなかった。彼にとっては、研究こそが自信の人生だったのだ。だからこそ、彼は人間のように絵を描くAIの研究に熱中した。(奥さんもそんな彼を理解してくれた。)
数年後、AIは風景も人物も、見事に描けるようになった。科学者たちは大喜びした。
いや、それどころか、なぜか不思議なことに、カメラでとったわけでもないのに地球の裏側にある風景を描写することができた。しかもそれが確認してみると確かに正しいのだ。もはや人間では理解のできない因果関係までをも計算しているようだった。いわゆるバタフライエフェクトの全てを予想しているというやつらしい。
正直もう生みの親のY氏にも、予想ができないものになっていた。(でもTVではY氏は訳知り顔でコメントしていたので、それに奥さんは調子に乗るなと少したしなめた。※爆笑問題の太田さん夫妻のイメージ)
お絵描きロボットはついには光の届かない何億光年先の天体を描写することすらできた。出力には数か月の時間と多くの電力がかかった。
当然、地球の裏側とは違い、その真相を確かめることは一生かけてもできないけれども。そこにはアインシュタインの夢見た、宇宙の神秘が描かれていた。(文字としてここに記述したいが、それには”インターネット上の情報全てに匹敵するほどの容量がかかる”ため不可能ですのでご容赦くださいませ。)
とうとう人間は、神を創り上げた・・・。誰もがそう驚喜した。
あるとき、誰かが言った。「このAIに“真理”(※)を描かせてみたらどうだろう」
命令はすぐさま実行された。
AIは計算を始めた。
だが、一向に結果が出ない。1年、5年、そして10年。その間、イラスト出力画面は空白のままだったが、内部では確かに稼働音が続いていた。演算ログをのぞくと、意味をなさない数字や記号が絶え間なく流れ、次第に研究者どころか人間の誰にも理解できない未知の文字列に変わっていった。あたかもAIが、人間の概念とは別の言語で独り言をつぶやき続けているかのようだった。
壊れたのではないか、と何度も疑われた。だが、AIは止まらなかった。
そして、ついに出力された。
それは、なんのことはないものだった。
A4の紙いっぱいに塗りつぶされた黒。
ただし、中央にだけ、小さな白ゴマのような一点が残されていた。
〇
【注釈】
※
真理とは確かな根拠にもとづいて「本当だ」と認められること。ありのままを誤りなくとらえることを指し、虚偽の反対です。西洋哲学では古代ギリシアから議論され、普遍的な真理を求める立場と、それに疑いを投げかける懐疑主義が対立してきました。近代になると、真理は命題(文の内容)に宿るとされ、真か偽かという「真理値」が論理学で扱われます。言語表現(ロゴス)と切り離せないものとも考えられます。他方東洋思想では「不言真如」のように、言葉にできない真理のあり方が語られます。
星新一風「AIが描いた真理の絵」 @scscjofjwef
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