第4話 トニーの心
小さなトニーの心臓が止まった後──
エデンは腕時計を見て、冷たい声で告げた。
「――17時52分。死亡時刻。」
サリーが部屋に駆け込んできて、叫んだ。
「いや……いや!トニーじゃない……まだ七歳にもなってないのよ……嘘よ!うちのトニーじゃない!」
ソフィーとボーンズ夫人はドアの前でその知らせを聞いた。
「いや!うちの弟じゃない!」とソフィーが叫ぶ。
ボーンズ夫人は涙を浮かべ、ささやいた。
「ああ……そんな……また……」
サリーは再び叫んだ。
「デイヴィッド!いや!何か言ってよ、頼む!」
デイヴィッドは冷たい目をしたままトニーに近づき、言った。
「行け、トニー……まだ終わりじゃない。君はずっとヒーローになるって夢見てただろ。ここで終わるわけがない。」
「さあ……目を覚ませ、トニー……」
トニーの頭の中は真っ白だった。声が聞こえる。
「行け、トニー!」
「この声……知ってる……家族だ……ママ、パパ、ソフィー、ミスター・エデン、ミスター・ラマー、ミセス・アリヤ、ボーンズ夫人、ミスター・リック、ミス・ケイティ……そしてミスター・ボーンズ……ぼくはここにいる、でも君たちが見えない……」
すると、もっと低い声が響いた。
「ははは……終わりだ。もう彼らには話せない。もう感じることも、見ることもできない。」
「君は誰だ?」とトニーが尋ねた。
「名前を知ったところで何にもならない。お前は終わりだ。迎えに来たのは俺だ。」
「いや。パパとママは、話す相手には名前を聞きなさいって言ってたんだ。だから、話を続けたいなら名前を言って。そうでなければもう話さないよ。」
「なにっ?!小僧ごときが俺に逆らうのか?!自分が誰に向かってるか分かってるのか!?」
「分かるよ!君はキキクルーだ!」とトニー。
「キキクルー?それって誰だ?」
「パパが言ってた。動かなくなった人間を迎えに来るのはその人だって。」
その時、ラマー、ボーンズ夫人、デイヴィッド、ソフィー、サリーが一斉に声を合わせた。
「行け、トニー!行け!行け!」
その声に嘲るように声は言った。
「残念だが、まだお前の番じゃない、小僧。好意で教えてやる……俺は『彼』と呼ばれている。」
「『彼』?」とトニー。
「そうだ……そしてエデンに伝えろ。次はそいつだと。」
皆が終わったと思い、部屋を去ろうとしたその時、ボーンズ夫人が言った。
「神様……私を彼の代わりにお取りください……」
突然、トニーが目を開け、立ち上がってサリーのそばに寄り、同じ言葉を口にした。
「ママ……お腹すいた。」
「邪魔しないで、トニー……」と彼女は無意識に答えた。
全員が叫んだ。
「トニー?!」「いる!」「トニーだ!」
エデンは青ざめた顔で言った。
「なんてことだ……トニーの幽霊だ!連れて行く者を探しに来たんだ!」
皆は恐れて逃げ、隠れた。ボーンズ夫人は数分前に「神様、私を」と言ったことを心の中で思った。
(こんなに早く来るなんて思わなかったわ……)
「いいや、私は幽霊じゃない!」とトニーは抗議した。
「信じられないぞ、トニー!黙れ!」とエデン。
「前は聞こえなかったけど、今は話せるんだ」とトニーは言った。
「前は、だめだった……でも今はちゃんと聞こえるよ!」とラマー。
「そうだ、確かにトニーの声だ」とサリー。
「本当かい、愛しい子?」とデイヴィッド。
「男らしくしろ、デイヴィッド!こいつは私たちの息子よ!」とサリー。
「うん、俺もトニーだって分かる!」とソフィー。
「そうだ、元気かい、チャンピオン?」とデイヴィッド。
家族は抱き合った。
「任務完了だ」とエデンが宣言した。
「ミスター・エデン……眠っている間に『彼』に会ったんだ」とトニー。
「『彼』?」とエデン。
「そう。そして彼が、次は君だって伝えるように言ったんだ。」
その言葉を聞いて、エデンは無表情になり、部屋を出た。 ラマーが彼を追った。
「子どもの空想だろう……」
エデンが答える前に、家屋が激しく揺れた。皆は制御室へ走った。
「カラミティだ!」とデイヴィッド。「普通ならこんなことはあり得ない……でももう手遅れかも……」
「映像は取れるか?」とエデン。
デイヴィッドは地下の制御室でボタンを押した。カーテンが開き、ダイヤモンドのような窓が現れた。そこに――
巨大なカラミティの眼が彼らを見据えていた。エデンは尋ねた。
「雨は降ってるか?」
デイヴィッドは答えた。
「はい、降っています……でもそれがカラミティを倒すのにどう役立つんですか?」 「地上にある物では無理だ。」
エデンは微かな笑みを浮かべた。
「地上のものはそうかもしれない。だが空ならどうだ?試してみるまでは分からない。」
彼はバイクを取りに向かった。ラマーが追い、言った。
「エデン、本当に子どもの話だからって侮るなよ。」
「大丈夫だ。俺はこれを一生やってきた。今死ぬわけにはいかない。心配すんな、兄弟。」
ラマーはバイクに飛び乗ろうとした。
「エデン、行かせてくれ。俺がやる。」
エデンは落ち着いた高圧的な口調で言った。
「ラマー……バイクはやめとけ。」
アリヤがバイクの前に立って止めた。エデンは横を抜け、冷たい視線で出て行き、エンジンを轟かせた。
「俺はお前を避け、戦ってきた……だが今日という日は甘くはない。もし今日がその日なら、簡単には屈しない。」と言い残し、走り出した。
巨大なカラミティが彼を追いかけた。ラマーが電話を掛けた。
「もしもし、エデン聞こえるか?」
「聞こえるよ、兄弟。」
「五分しかないぞ。自信あるのか?」
沈黙の後、エデンは答えた。
「俺を誰だと思ってる?俺はエデン、カラミティの殲滅者だ。相手は何だ?カラミティだ。だからビールの用意をしろ、今夜は祭りだ!」
ラマーが言った。
「デイヴィッドが言ってた。効果があるならポイントXだって。半径三十キロに引き寄せるから、外すことはできない」
通信は切れた。カラミティは暴れた。エデンは手を切り、手のひらから何かを放った。地面からトランポリンのようなものが噴き出した。エデンは跳び、カラミティはバイクを呑み込み、地中へ潜った。エデンはトランポリンで空中へ放り出された。
「もっと速く……」
彼がさらに合図を送ると、カエルのような形をした二体のカラミティが城壁に舌を引っ掛け、第二基地まで彼をさらに高く押し上げた。彼は最初に見た稲妻の形をした物体を掴んだ。物体が外れて彼の手に収まった。
地上で、カラミティは破壊された基地の中心に陣取り、大口を開けた。エデンはその真上にいた。ラマー、ソフィー、デイヴィッド、トニー、ボーンズ夫人、サリーは数を数えた。
「五……四……三……」
エデンは攻撃を溜め、物体を持ち上げた。
「食らえ、この巨大なソーセージめ!」
「二……一――」
「神の怒り!」
雲の向こうに巨大な人影が浮かび上がり、同時に攻撃を溜めた。
「天罰!」
稲妻がカラミティを直撃した。衝撃波でエデンは空中に吹き飛ばされ、意識を失った。アリヤは長い飛行機のはしごから彼を受け止め、遠ざかった。エデンは先ほどトニーがいた場所に落ちた。
「しまった……俺、死んだかも。」
声が響く。
「本当に……馬鹿だな、お前はやったことを考えたのか?」
「お前は誰だ?迎えに来たのか?」
「違う。お前の番じゃない。」
「じゃあ過去について教えてくれるのか?あの女を僕に書き送ったのは誰だ?キムはどこだ?本当のアリヤは誰なんだ?」
「答えはお前の最初の死を探せば見つかる。」
エデンはアリヤの腕の中で目を覚ました。彼らが驚く間もなく、さらに巨大なカラミティが覚醒した。今までのものをはるかに上回る大きさだった。
その光景を見たラマーは飛行機の中で言った。
「ほらほらほら……お母さんが目を覚ましたぞ。子どもを殺されたことにご立腹のようだ。」
彼は飛行機から飛び降りた。
「待て、ラマー!何してるんだ?!やめろ、逃げられるだろ!」とエデン。
「そんなはずはないだろう。約束を守れよ。」とラマー。
「おい、ラマー……」とエデン。
「力を分けてくれ、チェックしてくれよ。」とラマー。
ラマーがエデンのところに到着すると、二人は叫んだ。
「兄弟は一生のものだ、こっちでも向こうでも!」
ラマーは地中のカラミティの口へ突進した。
「アトミックキャノン!」
彼の腕は巨大化し、膨れ上がった。
「ビッグバンフラッシュ!」
爆発はあまりにも巨大で嵐を吹き飛ばした。エデンとアリヤは飛行機に乗り込んだ。デイヴィッドが説明した。
「第四のカラミティのことは、お前に話すなと言われていた……発見したときは眠っていた。ラマーが知ったとき、言うなと言ったんだ。彼が対処すると。だから……ごめん。」
「構わない。彼が勝手に決めたことだ。」とエデン。
もくもくとした煙の中から歓声が聞こえた。
「フハハハハ!」
人影が浮かび上がる。皆が見る。その者はラマーだった。上半身裸で、片腕の機械部分は爆発で粉々になっていた。彼は何かを別の腕で抱えて着地した。
「見ろ、何を連れてきたか……」
その手の中にあったのはミスター・ボーンズで、アリヤの剣を握っていた。 飛行機が着陸するとミセス・ボーンズと他の者たちは彼に駆け寄った。ミスターとミセス・ボーンズは抱き合い踊り始めた。小さなトニーが近づくと、ボーンズ夫人はパイロットが子どもに渡すつもりだった贈り物をこっそり取り出してミスター・ボーンズに渡した。
「コード・ブルー。」
ミスター・ボーンズはプレゼントを差し出した。
「誕生日おめでとう、我が小さきトニー!」
「間違えてるよ、ボーンズ、それはコード・レッドだよ。私はコード・ブルーって言ったの。」とミセス・ボーンズ。
「お利口にしてたからだ、トニー……さあ、よく頑張ったご褒美だ。」とミスター・ボーンズ。
皆は喜んだ。エデンが尋ねた。
「ミスター・ボーンズ、説明してくれないか?」
「呑み込まれたとき、アリヤの剣を見つけて、それにしがみついていたんだ。剣が守ってくれて、生き延びられた。」
二つの基地が破壊されたため、ヘリコプターがそれぞれを目的地へと運んだ。
カラミタス 闇に生まれた世界で、ただ一人の彼女だけが僕を覚えている 氷 @ICEVALIN
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