伊藤計劃先生を偲んで

秋野 公一

伊藤計劃先生を偲んで

 君は伊藤計劃を知っているだろうか。'07年6月に出版した『虐殺器官』でデビューした作家先生だ。

 『虐殺器官』は、特殊部隊所属のクラヴィス大尉が一人の男を追いつつも自身の内面と葛藤する内容となっている。この作品は、初めてのセックスの100倍以上の衝撃を私に与えてくれた作品で、初めて自身の小遣いで購入した小説でもある。

 その続編として『ハーモニー』が出版されている。ネタバレになるので詳細はふせるものの、『虐殺器官』を読破後に読むことを強く推奨する。 

 どちらの作品も伊藤先生らしい文体で書かれており、いずれもディストピアな作品だ。

 理想郷に見える世界とその実態を描く、独創性に優れた素晴らしい先生だった。

 『メタルギア 』で有名な小島秀夫監督の友人であり、『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』のノベライズは伊藤先生が担当している。

 『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』のエンドロールに伊藤計劃先生の名前が出てくるので、ぜひとも一度はプレイするように。

 そんな新進気鋭で大天才だった伊藤先生は'09年3月20日にユーイング肉腫の転移によってヒロシマへ行く。

 遺作の『屍者の帝国』では、死体と人間が共存するスチールパンクSFだった。

 元々は書き上げるつもりだったのだろうが、忌々しい病でこの世を去ってから、盟友である円城塔氏が作品を引き継ぎ完成させた。

 もし、伊藤先生が完結させていたらどうなっていたのだろうか。と考えずにはいられない。

 アニメ化した『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』に納得したのだろうか。

 私故人としては、どれも今一つの作品ではあったので、ぜひとも伊藤先生の意見を知りたかった。

 小島秀夫の『Metal Gear Solid 5 The Phantom Pain 』に満足したのだろうか。と考えずにはいられない。

 惜しい人を亡くしたと思う。もっと先生の世界を知りたかったし楽しみかった。できれば弟子入りなんかもしたかったし、自宅に原稿を送りつけるような失礼なこともしたかった。

 早すぎる。早すぎるだろう。そう思わずにはいられない。

 10年以上前に購入した『虐殺器官』の表紙は取れ、僕の手汗が滲む単行本にサインが欲しかった。

 それを無くしたと思って購入した二冊目にもサインが欲しかった。

 そしてその二冊を家宝として、世代を超えて読み継がれる本にしたかった。

 残念でならない。先生の無念を思うと、雨が止まらなくなる。

 先生。私は先生を越えることはないとは思うし、烏滸がましいけれども、私の拙い文章が、どうか天国での退屈しのぎになりますように。

 伊藤計劃先生、いや伊藤聡さんへ。闘病生活お疲れ様でした。今はどうか、ゆっくりと、安らかでありますように。

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