切ない白
沙華やや子
切ない白
ふたりはインターネットのサークルで出逢い、初めは遠い街に暮らす友人同士だった。
果ては、地方に住まっていた
この光があるからふたりは呼吸ができる。
10月のある日、
前日、シーツにくるまりながら
翌日の夕方、
家族があるから自宅で泣くわけにもいかず、車でお気に入りの川原まで行き思いきり泣いた。
と、美しい菫色の分厚い日記帖を
震える手で受け取った
そして、今度は最初から1ページずつ丁寧に読んでゆく。
『1月10日 晴れ 良いお天気で気持ちイイ。空気は凍っているが乾燥してるから、お洗濯物がよく乾きそう。今日がステキな一日になりますように』……『5月23日 曇り 春だというのに蒸し暑い。お花の季節で嬉しい。写真をもっと撮りたいな……』『12月12日 雪 空から妖精舞い降りた。テレビを観てると、東京の人はちょっぴり積もっただけで大騒ぎするって。面白い』……。
しばらくページをめくって行くと、ここだ! ここを開けば……オレたちの想い出が書かれているんだな……それはふたりが初めて逢った日。声だけでずっともどかしかった。やっと逢え、
しかし、そのページは空白だった。
ふたりで熱く過ごした3日間は空白として空けてある。
読み進めてゆくと、そんななんにも書かれていない日が時々現れた。
それらはぜんぶ、
そういえば、さっきあった1ページの空白は? ……なにも考えなかったが、もう一度ページを戻り日付けを確認した……。やはりそうだ。
それは
夢のない現実的な考えで言えば証拠隠滅なのか。それは否めないが、
愛が零れている。後ろ指をさされても、失う訳には行かなかった恋慕。
こんなに狂おしい空白というものがここにある。
切ない白 沙華やや子 @shaka_yayako
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