第5話 永遠の考え

「これが、君にしていたお話の本筋だ。」


旅人さんは何とも言えない表情をしていた。多分まともに眠れていないんだと思う。


「つまり、旅人さんは永遠の命を持っているって事…なんですよね。それは…辛い、ですね。」


「俺もだぞ。俺も永遠の命を持っているから、今ここにいる。」


「あ、はい。それはどうでもいいんですけど」


「あ"ぁ?」


「…旅人さん、昨日ネックレスくれましたよね。ネックレスに模様があるの分かりますか?これは、スミレって言うお花の模様で、花言葉は小さな幸せ、なんですよ。旅人さんは、私に幸せをくれたんです。それで、今日私が出店を見ていた時に買ったんですが、この指輪、何の花の模様かわかりますか?」


旅人さんは眉をひそめた。


「この花はアングレカムっていって、ちょっと重いかもしれませんが…花言葉は、いつまでもあなたと一緒、という意味なんです。受け取ってくれますか?」


旅人さんは、優しい微笑みをして指輪をうけとった。そして左の薬指につけた。私は少し驚いた。


「た、旅人さん…!流石に照れるのでせめて中指…もしくは人差し指とかにつけて……」


「いいんだ。俺は、ここがいいんだ。」


私は自分の頬が赤くなっていたのがわかった。ガーノは引き気味な顔をして私たちのことを見ていた。


「ガーノ、俺はこれから生きる。」


「ようやく、決めたのか。ならいい。お前は今まで生かされているっていう考えだったからな。俺はそれを聞くために来たんだ。もう用はねぇ。」


「ちょっとガーノ!」


「は?何でお前みたいなガキに呼び捨てされねぇといけねぇんだよ。」


「旅人さんに、謝って!」


「…はぁ?何で俺がコイツなんかに??」


「旅人さんがこんな事になったのはあなたのせいでしょ?だから、責任持って謝って!」


「……」


ガーノは図星を突かれたので何も言い返せず険しい顔をした。


「…はぁ、おいカズノ。」


「謝らなくていい。お前そういうの苦手だろう。」


「えー、長生きしてるのに苦手なんだぁ〜」


「テメェら…ふざけんなッ!!!」


あっという間に夜が明けた。皆ずっと起きていたから深夜テンションみたいだった。でも流石に旅人さんは疲れが溜まっていたので私が寝かせた。相変わらず座っていた。私は旅人さんが寝てる間にガーノと話していた。


「ガーノ、永遠の命ってどうやったら手に入るの?詳細を教えて。」


「…お前はまだガキだ。教えるメリットは何もねぇよ。」


「…このままだと私はいつか死ぬ。そうしたらまた旅人さんがどうなるのか…考えなくてもわかるでしょ?」


「教えないっつってるわけじゃねぇんだ。永遠を手に入れると同時にお前は人間から一歩離れる。しかも体の成長もそこで終わる。だからまだだめだ。あとは、カズノがなんつーか次第だ。気長に待ってろ」


私は言葉をちゃんと受け取って、少し考えた。


「…わかった。じゃあその代わりに1つお願い聞いて」


「なんで俺が聞かねぇといけねぇんだよ?」


「いいから!」


「…チッ、はぁ……」


「いつか、何年後でもいいから、いつか旅人さんのいた場所に連れてって。」


「それって…村ってことか?でもあそこは…」


「いいの。ただの興味本位。好奇心旺盛なので、私は。」


「…いつかな」


「うん、お願い。」


「というか、なんでお前はカズノと一緒にいるんだよ。」


「…え!?」


「えってなんだよ…お前がカズノと一緒にいる理由を聞いてんだよ。アイツのどこがいいんだか…見る目ねぇな。」


「はぁ〜!?そっちのほうが見る目がない!だって旅人さん優しくてカッコよくて落ち着いてて…可愛いじゃん!!」


私は慌てて反論してしまって口が滑ってしまったのを自覚した。でもあとには戻れなかったからそのままを貫いた。


「なんだお前、幻覚作用のあるもんでも食ったか?解毒剤でも作ってやろうか?」


「うっさい!!というか一緒にいる理由なんて…好きだからに決まってるじゃん。」


「あぁ、そりゃぁわかるからいい。」


「なんなのよあんた!腹立つ!!」


「年頃の恋心っていつ見てもおもしれぇんだよな。いじりがいがある。」


ガーノはニヤついていた。とても腹が立つ顔だった。


「最低死ね!!」


「残念、死なねぇんだなぁ〜」


「…永遠の命って、やっぱ死ぬことできないんだ。」


「まぁな、生きる以外の選択を貰えることはない。」


「…何歳?」


「覚えてるわけねぇだろ。」


「じゃあクソジジイよりクソジジイってことなんだ。」


「その言い方やめろ。それに俺は老いてない。見ろよこの若々しい肌。赤ん坊にも負けず劣らずだろ?それに加えてこの顔だ、女に困った事なんてない。」


正直少しだけ…いや、だいぶ気持ち悪かったから顔が引きつってしまった。


「なんだ?お前も俺に見とれたか?」


「えぇっと…ごめん、きっっしょw」


「よし、やっぱ永遠は教えない。」


「あ、ごめんって嘘だから!」


「そもそも永遠は知らないほうがいいんだ、だから言わねぇ。」


「ねぇごめんってー!!」


雑談をしていると後ろに旅人さんが立っていた。


「楽しそうだな。」


私はびっくりして勢いよく振り向いた。


「た、旅人さん!どこから聞いてました…?」


「…秘密だ。」


「旅人さん!?」




私は自由のために家を出た。それとは別に旅人さんと一緒にいたいのもある。これからも旅人さんのそばにいる。こんな日々を過ごしたい。くだらない事を話して、それで笑って、例え私が永遠の存在になっても、この考えは変わらないと思う。


これが私の永遠の考えだということを願ってる。

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永遠の代償 やんまた @ymmysh

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