第4話 思いの先に

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俺は昔、身体が弱く、すぐに体調を崩すような子供だった。周りは俺に気を使って遊びに誘ってくれなかった。でも1人だけ他の人と遊びに行くのをしない、俺の部屋でずっと一緒にいてくれる奴がいた。それがミトだった。


「カズノ、今日は顔色いいね!」


「…まあ、うん。」


毎日俺の部屋に来ては面倒を見てくれた。俺より2つ歳が下なのに少し情けなく感じた。


「…ねぇ、どうして毎日ここに来るの?もっと面白い子と遊べばいいのに…」


「え、僕達が友達だから一緒にいるんじゃん。もしかして迷惑だった?それだったら正直に言ってよ!友達じゃん!」


俺は自然と涙が出た。俺に友達ができるとは思わなかったから、それなのに友達って言ってくれた事に感動してしまった。

数日後俺は改めて医者に診てもらった。その結果を聞いて父さんと母さんは悲しんでいた。俺にはその結果を話してはくれなかった。でも、またミトが家に遊びに来た時に親はその事を話していた。ミトは怒った声を出しながら俺の部屋に飛び込んできた。涙を流していた。


「…ミト?」


「…カズノ、僕、将来医者になる。それで、カズノと一緒に長生きする…!」


「…ありがとう。でも、ミトは将来ミトの父さんと商人やりたいんじゃ…」


「これが今の僕がやりたいこと!夢なんだよ。だから、側にいてくれるよね?」


俺は頷いた。ミトの優しさを無駄にしたくなかったから。

俺は歳を取るごとに体がさらに弱くなっているのを感じた。元々咳が多かったのに、それに加えて血を吐くようになった。何度も布団を汚した。母さんはその度に可哀そうという目を俺に向けた。正直やめてほしかった。ミトは相変わらず毎日俺の部屋に来た。唯一の心の行き所だった。他愛のない話をして、笑って、怒って、泣いていた。そのうち俺は口癖が新たにできていた。


「俺はさ、多分20になる前に死ぬからさ、やっぱり商人になりなよ。」


その度にミトは俺の頭を軽く叩いて怒っていた。そんな日々が少し楽しかった。

ある日、村に1人の旅人がやって来た。俺は部屋から出ることはできないからミトが詳細を話してくれた。金髪で身長が高く、赤い目が綺麗らしい。俺が会ってみたいと言うとミトは連れてきてくれた。その人はガーノという名前だった。


「君がカズノ君、そうだね?」


「こんにちは、こんなみすぼらしい格好ですいません。許していただけると嬉しいです。」


「君はそうなりたくてそうなっているわけではないだろう?謝らなくていいさ。」


「ガーノさんね、少し医者に関する知識持ってるらしくてさ!僕この人の弟子になる!!」


ミトは満面の笑みで言っていた。正直俺は生きる事を諦めていたからどうでも良かった。でも、ミトが頑張っている姿を見るのは心地が良かった。だから、応援をした。それからミトは俺の部屋にいる時間が少なくなった。応援する気持ちとさみしい気持ちで少し葛藤した。そして月日が流れる事に俺が目を覚ましていられる時間がどんどん短くなっていた。ミトがいつものように看病しに来た。そして、覚悟を決めたような声で俺に宣言した。


「カズノ。僕ね、ガーノさんにいろいろ教えてもらったんだ。その中に1つだけ君が長生きできる方法があったんだ。その方法を試してみるよ。3日の猶予をちょうだい。必ず失敗はさせないから。」


俺は意識が朦朧とする中で、その言葉を信じてひたすら我慢をして、待っていた。その3日後。俺は目を覚ますとなぜか体が軽かった。咳も出ず、血も吐かなかった。嫌な予感がした。前に教えてもらったミトの家に行った。このときは気づかなかったけれど、俺は生まれて初めて自分の足で走って、生まれて初めて外に出ていた。でもそんな事考えるまもなく家に着いた。何だか鉄の匂いがした。扉を開けると、ミトの両親、妹が血だらけで倒れて、死んでいた。刺されたような傷があった。俺は驚きながらも中に入って進んでいった。家の一番奥の部屋に、ミトがいた。


「...ミト?ミト…俺、今自分の足で歩けてるんだ。なぁ、少し見てくれよ。」


恐怖心を隠しながら俺はミトに話しかけた。でも返事はなかった。顔を見てみると、死んでいた。俺はもっと怖くなって家からすぐに出た。するとガーノが近づいてきた。


「…カズノくん、君は、彼に感謝をしなさい。」


「ガーノさ…ミトが、ミトが息してないんだ…血もいっぱい出て…治してよ。ねえ治してよっ!!」


ガーノさんは驚きながら話し始めた。


「君、体調が良好だろう。それは俺がミト君に教えた方法でそうなっている。」


「…は?」


「俺がミト君に教えた方法は、命を犠牲にして、1つの命に永遠を与える方法だ。」


意味がわからなかった。でも、なぜか俺がガーノに怒っているのがわかった。


「俺は絶対にその方法は使うなと言った。でも、ミト君は君に長生きをしてほしかったんだろうな。1つ、提案をしよう。俺と一緒に来ないか?その尊い命の価値を分かってほしい。君は俺と同類になったんだ。」


俺はもう何も考えることはできなかった。だから、ガーノについて行った。何年も何年も、ずっとガーノについて行った。でもふと思った。俺は何のために生きているのか。この命はミトの物だ。俺のじゃない。ミトがしたかったことを全部俺が奪った。俺のせいだ。その事が頭に入ってから俺はどうしようもない気持ちに襲われて、気づいたらガーノから逃げていた。そして、1人で旅を続けていた。行く当てもなく、死んだ目をしながら歩き回っていた。腹が減ったり、怪我をして痛くなったりする事にとても腹がたった。そんな日々を過ごしていた。そしてある村に行き着いた。その村は俺の住んでいた場所に似ていた。だからか、なぜか愛着がわいた。いつも自分の部屋から見えていた木に似たものがあったから、その木に寄りかかって、いつも部屋からはあまり見えなかった空を眺めていた。すると、一人の女の子が話しかけてきた。


「ねぇ、何してるの?」


俺は、驚いた。多分ミトの姿が重なったからだ。1人の俺に話しかけてくれる人がまだいるとは思わなかったからだ。


「…なんだ?何か用?」


「ううん、ただちょっと気になっただけー」


「…そうか。」


俺はミトが生きていた事を誰かに証明したかった。だから、女の子にお話というていでミトの今までの事を話していた。気が少し紛れた。だから、数年おきにこの村に来ては話していた。話す度に俺は故郷の村の事を思い出して、ある日思い立って村に戻ってみた。すると、村はもうなかった。その代わりに荒れた大地と、枯れた草木があった。俺は何も言うことが思いつかなかった。何とも言えなくなり、俺は再び、女の子がいる村に戻った。村に着くなり、女の子が走って俺の方に向かってきた。その姿は、ミトにそっくりだった。俺は気の迷いで、ユイと一緒に旅をする事にした。楽しかった。何年も味わっていなかった感情だった。


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