最終話:第二の人生

反乱は鎮圧され、王国に平和が戻った。健司は、王都に英雄として迎えられた。国王は彼に貴族の位と莫大な褒賞を与えようとしたが、健司は全てを固辞した。


「私は、しがない中間管理職です。分不相応なものは、胃に悪いですから」


その代わりに、と健司は一つだけ願い出た。「エリアーナと共に、静かに暮らすための小さな土地をいただけませんか。できれば、あの森の近くがいい」


国王は、少し寂しそうな顔をしたが、快くその願いを聞き入れた。エリアーナもまた、姫騎士の地位を妹に譲り、健司と共に生きる道を選んだ。


数ヶ月後。二人は、あの森の入り口に建てた小さな家で、新しい生活を始めていた。


健司は、畑仕事に精を出している。慣れない手つきだが、その顔は充実感に満ちていた。サラリーマン時代には感じたことのない、確かな手応えがそこにはあった。


エリアーナは、そんな彼のために昼食を用意している。彼女が身につけているのは、銀の鎧ではなく、質素なエプロンだ。だが、その姿は、どんなに着飾った時よりも美しく見えた。


「ケンジ、お昼にしましょう」


「おお、今行く」


縁側に並んで座り、焼きたてのパンとスープを食べる。何気ない、穏やかな時間。それこそが、健司がずっと求めていたものだった。


「なあ、エリアーナ」


「何です?」


「俺、こっちに来て、本当によかったよ」


健司がそう言うと、エリアーナは優しく微笑み、彼の手に自分の手を重ねた。


「私もです。あなたと出会えて、本当によかった」


人生の折り返し地点で、全てを失ったと思った男。彼が見つけたのは、チート能力でもハーレムでもなく、たった一人のかけがえのないパートナーと、地に足の着いた穏やかな日常だった。


田中健司、42歳。彼の第二の人生は、まだ始まったばかりだ。


(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

追放された社畜(42)、エルフの国で年上姫騎士と第二の人生を始める @kenji06

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ