操れない人形サン

勇崎りりは

嘘つき

私は自分の顔が嫌いだ。

嘘つきの顔を好きになれるはずがない。

何度もぶんなぐってやりたいと思った。

人からはかわいいともいわれるこの顔だが、どうしても許せない。

許容できない。

別に顔自体は嫌ではないんだ。不細工でも美形でもない、普通な顔。


私はこれを許すことができない。



『自分を嫌いにならないで。』

よく聞く言葉だ。

でも、誰に言われたとしても私はこの顔を許すことはできない。

こんな顔じゃなければ。ずっとそう思っていた。

私の顔は嘘つきの顔だ。

私は物心ついたときからSOSを口にできなくなっていった。

そしていつの日か感情が顔に出なくなったのだ。

人が望む顔をつくるようになった。それは私の感情ではないのに周りは信じて疑わない。傷ついても適当に笑い飛ばして、楽しくても心の底から笑えなくて。

私の顔は嘘つきの顔だ。誰よりも嘘つきなんだ。


こんなことを考えているとたまに思う。自分が顔に出やすい性格だったのなら……。

傷ついたらすぐに気が付いてくれて、笑えていなくても楽しんでいるとわかってくれる。

笑っていても、それが本当の笑顔じゃないことに気が付いてくれるというものは、どれだけ心地がいいのだろうか。

だから私は自分の顔が、自分の顔にずっと張り付いているこのお面が嫌いだ。

いつかこの面が割れる時まで、わたしはこの顔を呪う。

いや、違う。私がこの面を叩き割ってやるんだ。私を救えるのは同じ痛みを背負ってきた未来の私だけだ。


世間では自分を愛せないものは悪、という価値観があるように見える。

私はこのお面を愛してまで善になりたくはない。

いや、自分の意思で操れないお面は自分と言えるのだろうか?

自分を許せないのは罪だろうか??


私は、いつか自分を救えるくらい強くなるまで、その罪を背負って生きていく。

人に好かれたとしても、自分で操れない人形はいらない。

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操れない人形サン 勇崎りりは @yuuzakiririha

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