道草を食む

【PM】

 夜空一面に瑠璃が敷き詰められている。

 涼やかな狐の嫁入りで、霞んだ月が凍っている。

 少し遠回りをして帰りたいだけだった。

 八十円の缶コーヒーは、背徳感の味がした。


【AM】

 白んでゆく朝霧が、灰色の街を覆い尽くしてゆく。

 まるで蜘蛛の巣に絡めとられるように。まるで白昼の夢のように。

 光るともいえぬ北極星は、帰るべき処を示してはくれなかった。

 アスファルトに靴底が軋む。

 指先から溶けさせてはくれなくて。

 また一つ、朝に借りができてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

涼風に乗せて 白湯の氷漬け @osuimono_gubi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ