第11話 生き延びた!
森の上に沈みかけた太陽が、空を橙と紫に染めていた。
汗で張りついた服。息を吸うたびに喉が焼けるように痛む。
だが──これが最後の区間だ。生存試験の終盤。
スクワッド・ゼロ。俺、サクラ、ミキオ。
なんとか倒れずにここまで来た。……ギリギリで。
サクラの九尾の狐のオーラはまだかすかに揺らめいていたが、その足取りはもう跳ねるというより、引きずるようなものだった。
ミキオの炎はもう消えている。先ほどの構築体の群れとの戦闘で、ほとんど力を使い切ったらしい。今は静かに歩きながら、音で周囲を探っている。
そして俺は──影が薄く、重い。動かすたびに脚が震えた。
それでも、諦めるわけにはいかない。
「あと十……分だよね……」とサクラがつぶやく。
その声には安堵と絶望が半分ずつ混じっていた。
「クラリッサ先生の言ってた通り、時間切れまで耐えれば合格なんだよね?」
俺は短くうなずいた。だが、十分は永遠にも感じられる。
そのとき、前方の木々が不自然にざわめき、影が濃くなった。
思わず足を止め、手で合図する。影が勝手に揺れた。
「……来る。」
空気が張りつめ、森が息を潜めた。
そして木々の間から、三つの影が現れた。
クラウド・ナイン。
フジ。山のように揺るがぬオーラの持ち主。
ミカサ。眼鏡の奥のスピリット・アイズが鋭く光り、すでにこちらを解析している。
そしてタリア。羽を小刻みに震わせ、いつでも飛び出せる構え。
──嫌な予感しかしない。
これは偶然の遭遇じゃない。試験の「仕掛け」だ。
ミカサが静かに言った。
「スクワッド・ゼロ……ここまで来たのね。」
サクラは疲労を隠さずに一歩前へ出た。九本の尾がかすかに揺れる。
「争うつもりはないよ。そっちも邪魔しないで。」
フジがわずかに笑みを浮かべる。
「そう簡単ならよかったんだがな。」
空気が重くなる。──挑戦の予感。
クラリッサ先生の狙いは、きっとここだ。
ミキオが舌打ちした。
「よりによって、こいつらか。」
その瞬間、地面が震えた。
反対側の木々の奥から、さらに三つの影が姿を現す。
ニュー・ムーン。
ジャクソン。腕に血の輝きをまとい、不気味に笑う。
ユキとスキ。鏡のように同じ動きをする双子の剣士。
「おやおや、にぎやかになってきたな。」
ジャクソンが軽い調子で言う。まるで遊びの始まりのように。
九人の生徒が輪を描くように対峙した。
鼓動が耳の奥で響く。疲れているのはうちだけじゃない。
誰もが限界の中に立っていた。
──クラリッサ先生の声が脳裏で響く。
「生存とは、ただ自然を相手にすることではない。
敵意、競争、そして“選択”。
時に、生き残るとは──誰が残るかを決めること。」
最悪の最終試験、ってわけだ。
「戦う?」サクラが小さく問う。
「……相手次第だ。」俺は答えた。
だが世界は待ってくれない。
ジャクソンが血の糸を放った瞬間、混沌が爆発した。
──血、炎、音、影、羽、光。
森そのものが戦場に変わった。
生き残る。それだけが目的。
俺たちは──スクワッド・ゼロは──まだ倒れない。
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作者メモ(ヒカル)
……うん。まじで死ぬかと思った。
血のムチ、炎の手、鋼みたいな羽、ミカサの弾丸が耳元をかすめて──影は焼け落ちる寸前。
楽しいね?(嘘だ。)
でもまあ、生き残った。それだけで勝ちだと思う。
(サクラ:「あたしが助けたんだからね!」)
(ミキオ:「二人とも、俺がいなきゃ死んでた。」)
(サクラ:「最初に倒れたの誰でしたっけ~?」)
(俺:「……こういう毎日です。」)
とにかく、試験は終わった。
でもクラリッサ先生のことだ、次は地獄だろうな。
というわけで、読んでくれた人はコメントとフォローをよろしく。
……俺がまた死にかける前にね。
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「影を操る俺が、落ちこぼれから世界最強の祓魔師になるまで」 ゼナ キラ @XenaKira
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