ミステリーは山登りだ

sorarion914

全ての山に登れ

 ミステリーとは登山と同じだ――


 そう思うのは私だけだろうか?



 いきなりドラマチックに始まるミステリーも、その後、謎解き展開に入るまでの導入は、やや単調だったりする。


 登場人物の紹介。

 ストーリー上の立ち位置。

 事件の概要などを読者に指し示す時間は、さしずめ


『登山準備』


 ――だ。



 登山に行く前に、何の準備もせず行く人はまずいないだろう。


 弾丸登山が問題視されているが、大抵の人は装備を整えていく。

 最近はなんでもタイパ優先で、いかに早く目的を達するかを重要視するけれど……



 ミステリーで、それは邪道だ。



 開始早々、犯人を明かして始まる刑事コロンボや古畑任三郎系のミステリーもあるが、王道はやはり『謎解き』と『犯人捜し』だろう。


 随所に張り巡らされた伏線に、巧妙に仕掛けられたトリック。

 それらを、ゆっくり時間をかけて読み進めていく過程は、まさに登山。


 初めはなだらかな登山道も、標高が上がるにつれて徐々に険しくなってくる。

 時に足を滑らせたり、悪天候に苦戦したり。

 ドキドキハラハラしながら、それでも一歩ずつ登るにつれ、全体の景色が少しずつ見えてくる。


 自分が今登っている山が、一体どういう山なのか――

 そこから見える景色は、一体どんな景色なのか。



 頂上に辿り着いた時、初めてその姿を見ることが出来るのだ。




「謎は解けた――――!!」




 全てが明かされた瞬間。

 それすなわち、登頂成功!!――だ。





 こんなに気持ちの良いものはあるまい。















 登山。


















 したことないけど。










 ミステリー好きな者たちよ。

 全ての山に登れ!!




【完】

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