(番外編)とある10/31

 今日はハロウィン...。リア充どもがお菓子交換やらコスプレやらで盛り上がる日だ。

俺?もちろん今年のコスプレもしっかりと用意してある。

今年は...テッドプール、俺ちゃんあげみ〜ってやつだ。

なんのために?

もちろん二つ下の妹のために、だ。誰に似たのか知らんが友達が少ないんだ、アイツは。

そのくせこういうリア充お達しのイベントごとはやりたいやりたいっていうモンだからしゃーなしで、付き合ってやってる。


「おにぃ、準備できた?」

「ちょと待て、思ったり着辛いぞこれ。」

「背中にチャックあるタイプじゃん。締めようか?」

「頼むわ、くれぐれも勢い余って...。」


「あ、おにぃ、ここ取れちゃった...。」


あの開け閉めするアレ。アレが吹き飛んだわけだ。はい、脱ぐのめんどくさい。

去年もやらかしてなかったっけ?まあ、いい。


「Y-MENって感じで、俺ちゃん誕生〜。」

「ホント好きよね、テッドプール。」

「あの際どいラインが最高なのよ。」

「下品なだけじゃ〜ん。」

ゆうは今年も魔女なのね。飽きんないんか?」

「美少女は何着ても可愛いからいいんです〜。ていうか、おにぃは毎年覆面に逃げてばっかじゃんね?」

ギクッ...。


とまあ、俺が忌み嫌うリア充たちと同じようにコスプレをして何をするのかと。

街中を練り歩いて〜、みたいな陽キャみたいなことはしない。つーかそんなことしたら俺も妹も死ぬ。


「今年はどのお菓子が一番売れるかな?」

「さあな、去年と一緒でチョコなんじゃね?」


近所の子供達にお菓子を配るだけだ。最初こそやる気はなかったが、あの笑顔を見ると来年もやろうとついつい思ってしまう俺がいる。子どもたちが嬉しそうにしてるのもそうだが、なにより妹が楽しそうにしてるのが良かった。友達とこういうことできたらもっと楽しかったんだろうけどな。


「それじゃ、しゅっぱーつ!」

「お〜...!」


外に出れば、ご近所ももちろんハロウィンムードだ。ここら辺はニュータウンなせいもあって小さい子どもたちがいる家庭が多い。保育園やら幼稚園やら小学校やらで作った、可愛らしいかぼちゃランタンやら飾りやらがたくさんある。

楽しみにしてたからだろう、歩くのが速い。

お兄ちゃん覆面だから結構キツイのよ。


「はい、お菓子どーぞ!好きなの持っていっていいよ〜!」

「あ、お姉ちゃん、これちょーだい!!」


ニッコニコの笑顔とクッキーを配りまくる優。大して俺は...。


「チョ、チョコレート、いるか〜?ニヒヒ〜...」

「ママ〜、この人こわ〜い!!」

「家の子がすいませんね。ほら、お兄ちゃんがチョコレートくれるって。」

「チョコ〜?」

「ほら、色々あるぞ〜。好きなの持ってけ〜。」


何が悪いのか知らんが初対面では絶対怖がられる。それでもな、俺は負けんぜ。

なにせ、必殺技があるからだ。


「チョコレートじゃんけん、はじまるぞ〜!!」


チョコレートじゃんけん、俺に勝ったらチョコを三つ、あいこで二つ、負けても一つあげる、というものだ。

母親と一緒にお友達と楽しんでる子供が大半だ。一人が来ればみんなついてくる。


「一人ずつ順番だぞ〜。最初はグ〜――――」



そうして俺のチョコレートは一瞬にしてはけた。一つを残して。

優はまだ配り切れていないようだ。まあ、気長に待つか。


「毎年ありがとうね。ウチの子毎年楽しみにしてるのよ。ハロウィン以外にもね、クリスマスとかお正月とか、次回もよろしくね。」


優の提案で始めたことだ。俺に感謝するより、アイツに言ってやってくれ。

なんて言えるようなコミュ力はない。


「あ、はい。頑張ります。」


と返すのが限界だ。

こうして眺めると、ハロウィンとはこうあるべきなのかもな。

変な欲望なんて一つもない。純粋な心で楽しむイベント、いいな。

腐りきった心が浄化される気分だ。


「おにぃ〜!全部配り終わったよ〜!!」

「今年も俺の勝ちってことで。」

「じゃんけんのやつはズルじゃん...。」

「ズルも戦法の内、勝ちは勝ち。それはそうと、今年もおつかれさん。ほら。」

「あ、ありがとう。ってこれ、アタシが嫌いな味じゃん。」

「いや〜わりぃ、そこまで気にしてなかった。」

「ホントに〜?」

「嫌なら俺が貰う。」

「ダメ!これはアタシの。」

「へえへえ、分かりましたよ。んじゃ帰るか。」

「うん。」

「あ、ちなみに。お前からのお菓子がなかったので、今日はトリックを仕掛けさせていただきます。晩飯覚悟しとけよ〜、ニヒヒ。」

「気持ち悪...。」

「シンプル傷つくからヤメテ...。」



いつぞやのハロウィンの記憶。

中二だったか中三だったか。

最初は家でハロウィンっぽい飾り付けしてお菓子食べるだけだったのが、ここまでするようになった。

本当、なんで友達がいないのか分からない。俺にはもったいないくらいしっかりしてて優しい妹だ。


今のシスコンぽかったか?


いや、全国の全お兄ちゃんが同じ気持ちのハズだ、兄妹で仲が良かったら、だけどな―――。

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放課後雑用部はここですか? サクリファイス_色白箱 @raurua

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