第2話 MLSのスケジュール

 12月になった。そういえば、MLSの2026年シーズンのスケジュールは発表になったかな。結香ゆかがWEBで確認すると、すでに11月21日(現地)に発表されていたようだった。


 ところで、結香の希望はMLB観戦で、結香の父の希望はMLS観戦である。3週間も気づかなかったことは父に内緒にしなければ、と思う結香であった。しかし結香、案ずるまでもなく、MLS観戦に気乗りしないことは父も先刻承知ずみだと思うぞ、というのは作品の書き手の須藤彩香からの神の声。むしろ結香は、MLSのスケジュールを確認してなかった須藤彩香をうらむべきかもしれない(というのも神の声)。


 プランとしては、お盆休み頃に訪米することは決まっている。そして、ロサンゼルスエリアに滞在すると、MLBとMLSの両方を観戦することができる(はず)ということまでは、前話で結香が確認している。第2話は、そこからの話の続きである。


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 結香はまず、LA Galaxy(ロサンゼルス・ギャラクシー)のスケジュールを確認した。お盆休みの時期の試合だと、8/16(日)のHOU(ヒューストン・ダイナモ・フットボールクラブ)との対戦は敵地、8/20(木)SJ(サンノゼ・アースクェイクス)との対戦ならばホームである。それにしても、物騒なチーム名だと、結香は苦笑いした。


 続いてLAFC(ロサンゼルス・フットボールクラブ)のスケジュールを確認する。8/16(日)のSan Diego(サンディエゴ・フットボールクラブ)との対戦は、ホームのBMO Stadium(バンク・オブ・アメリカ・スタジアム)での開催。試合開始は午前11:30。


 ここまで確認し、結香はようやくホッとため息をついた。どうやらこの試合を軸に旅行日程を組むと、MLBとMLSの双方を観戦することができそうである。


 とはいえ、午前中の試合開始とは、ずいぶん早い時間設定である。前日にナイトゲームを観戦しようものなら、かなりの強行日程になりそうだと、結香にふたたび不安がよぎる。


 そこで再度、MLBの日程を確認した。LAD(ロサンゼルス・ドジャース)は8/10(月)からKC(カンザスシティー・ロイヤルズ)との3連戦、8/13(木)からMIL(ミルウォーキー・ブリュワーズ)との4連戦で、8/15(土)の試合開始は18:10である。


 また、LAA(ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム)は8/10(月)からTEX(テキサス・レンジャーズ)との3連戦、8/13(木)からKC(カンザスシティー・ロイヤルズ)との4連戦で、8/15(土)の試合開始は18:38である。


 どちらのチームも土曜日はナイトゲームの日程だけれども、これだけ連日試合が組まれているならば、土曜日にはMLBの観戦予定を入れずに、翌日曜日にMLSの試合を観戦するのがいいかもしれない。


 それに、午前中の試合観戦ならば、その日の深夜の便で帰国の途につくという日程も可能である。朝にあわててホテルをチェックアウトするよりも、夕方以降にチェックアウトして深夜便に搭乗するほうが精神的にもゆとりを持てるし、帰国後の生活のリズムが狂わないのも好都合である。


 こうしてスケジュールに具体性が出てくるにつれ、結香の気分も高まってきた。


 8/12(水)日本発

 8/13(木)MLB観戦

 8/14(金)MLB観戦

 8/15(土)

 8/16(日)MLS観戦/深夜便利用

 8/17(月)機内

 8/18(火)日本帰国


 次なる課題は飛行機とホテルの手配であるが、まず基本線は固まった。この日程で、父の意向を確認することにしよう。


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 その週末、リビングでくつろぐ父に結香が話しかけた。来年の夏、アメリカに行く話なんだけど、という結香の言葉に応じる父は楽しげである。こんな日程でどうだろうと、結香がプリントアウトした旅程を父に手渡すと、それを見た父がほほえんだ。


「8月11日は祝日なんだから、この日に出発するのがいいんじゃないか」


 父の言い分はもっともである。その分のホテル代が余計にかかると結香が言いたげなのを見透かしたように、愉快そうに笑う父。


「ここはケチるところじゃないぞ。それにしても、よくできた日程だな。結香にまかせて正解だった」


 つい考えすぎる結香は、不安が和らいでくるのを感じた。父の言葉に、結香もひと安心である。


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 しかし、人生とはままならないもの。安心と不安は常に背中合わせである。そして結香も父も、別の不安を抱えているにもかかわらず、互いにそのことに気づかぬふりをしているのである。これぞ似たもの父娘おやこの面目躍如である。あとはどちらが先に口を開くかのチキンレースである。


 このときの勝者は結香。父が話を続ける。


「ところで、二人で盛り上がってるけれど結香の弟あいつの意向をまだ聞いてないんだよな。どうする?」


 どうするではない!、と言いたいところをグッとこらえた結香である。アメリカに行こうと言い出したのは父なのに、こうしてイヤな役回りを娘に押し付けてこようとするのはどういう了見なのだろうか。


 スケジュールを組んだのは結香である。これから航空券やホテルの手配をすることになるのも、おそらく結香である。そして、そのほかの細々としたことも全部結香が引き受けることに・・・、と思ったものの、結香はあまり先回りしてものを考えるのをやめることにした。今はただ、「被害」を最小限度に食い止めることを考えるのみである。


 結香もあいつに連絡をすることはいくらでも気楽にできる。問題は、弟と一緒に住んでる母なのだ。今度のアメリカ旅行についても、何かひと言、ふた言、言わずにいられるはずがない。ひと言、ふた言ですめば、むしろラッキーかもしれない。


 かといって、母に内緒で弟を旅行に連れていけるはずもない。問題はどのようなタイミングで、どのように伝えるか、なのである。弟だけに伝えると、さらに話がややこしくなることは間違いないところである。


 結局、チキンレースの敗者は結香だったのだろう。旅費を出すのは自分だとばかりに、父は結香の言葉に満足げにうなずくのであった。


「今度、わたしが連絡しておくね。母さんにも」


 次回、第3話に備えて、須藤彩香もあいつの名前を考えておかねば。(たぶん、つづく)

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2026年夏、アメリカへ行こう! 須藤 彩香 @saika_sudo

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