第20話迫りくる本隊


夜空を裂く角笛の音が、村を震わせた。

炎に照らされた森の奥から、整然と並んだ影が現れる。

剣と槍を携えた兵たち――王国軍の本隊だった。


「……っ、多すぎる……」


リーネが息を呑む。

数は三十ではきかない。五十、六十――それ以上か。

すでに村の柵では防ぎきれない規模だった。


狼が牙をむき、従属した盗賊たちが無言で武器を構える。

だが、俺の心臓は嫌な音を立てていた。


(……これほどの数を、従わせられるのか……?)



「ここに“無能の少年”が逃げ込んだと報告があった!」

「村ごと焼き払え!」


先頭の兵が剣を掲げて叫ぶ。

怒号とともに突進してくる兵士の群れ。


その瞬間――頭の奥で声が響いた。


『命令を確認――従属開始』


兵の数人が膝をつき、俺を見上げる。

だが、それでも全員を止めることはできなかった。


「くそっ……全員、迎え撃て!」


俺の声に、村人も盗賊も立ち上がる。

夜の草原で、血と炎の戦いが始まった。



「やあああっ!」

「……死ねぇ!」


農夫が鎌を振るい、子供でさえ石を投げつける。

盗賊たちは刃を振るい、狼が敵兵の喉を食いちぎった。


リーネの炎が爆ぜ、敵の陣形を焼き崩す。

その姿は頼もしく、同時に俺の胸を締めつけた。


「リーネ……!」


「悠斗! あなたの声があれば、まだ戦える!」


彼女の叫びに、俺は必死に命令を飛ばした。

倒れた者は立ち上がり、血を流しても進み続ける。

まるで死を恐れぬ兵のように。



だが――。


「っ……ぐ……」


限界はすぐに来た。

頭が割れるように痛み、視界が揺れる。

同時に、従属していた兵の何人かが膝を立ち上がり、反撃を再開した。


(……やっぱり……俺の力でも、無限には……)


歯を食いしばり、必死に立っていた。

そんな俺の肩を、リーネが支える。


「悠斗、無理をしないで!」


「ここで……止めなきゃ……!」


俺は最後の力で命じた。


「倒せ――この村を、守れ!」



その叫びが届いたのか。

炎が弾け、従属者たちが最後の力を振り絞る。

やがて敵兵は次々と倒れ、残った者は恐怖に駆られて森へと逃げ去っていった。


静寂。

血に染まった草原の真ん中で、俺は膝をついた。


「……終わった、のか……」


リーネが駆け寄り、俺を抱きとめる。

その瞳は涙に濡れ、けれど揺るぎない光を宿していた。


「悠斗。あなたがいたから、誰も死ななかった」


その言葉に、胸の奥が震える。

無能だと笑われ、追放された俺。

だが今、確かに誰かを守ることができたのだ。



夜空に星が瞬く。

村は辛うじて生き延びた。

だが、俺の力がどこまで通用するのか、その答えはまだ出ていない。


「……行こう、リーネ。ここに留まるわけにはいかない」


「はい。……あなたと一緒なら、どこへでも」


彼女の笑みを胸に、俺は立ち上がった。

新たな旅の始まりを予感しながら。




__________________


後書き


ここまで読んでくださってありがとうございます!


第20話では、村を襲った本隊との大規模戦闘を描きました。

悠斗のスキルは圧倒的でありながら、同時に限界と代償も浮かび上がり、「万能ではない」ことが示されました。

そしてリーネとの絆がより強まり、新たな旅路へと繋がっていきます。


これにて第1章は完結です!

第2章では「王都」と「クラスメイト」が再び大きく関わり、物語はさらに広がっていきます。

引き続きお楽しみください!

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クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました 髙橋ルイ @rui78936

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