血(閲覧注意)

 乾燥がちのざらっとした肌がカッターナイフの刃を受け入れ、赤く小さなビーズのような血溜まりができる。やがてそれは赤い一本の線になり、たちまち傷の周りが腫れてミミズのようになる。

 左手首に何本か赤いサインを施すと、なんだか気が紛れるのだ。

 私の辛かった思い出が手首に残っている。痛みのアルバム。

 数日後には消えている。傷をつけたあの日の私はもういない。

 

 私たちは傷ついて成長していく。それが、見えるか見えないかの違い。


 でもきっとまた傷をつける。それでもいい。

 私だけの記憶、私だけの色。

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文字によるスケッチ 沖 夏音 @kko_rw

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