「私」の形骸化

第1話

実をいうと私は自分の考えや感情が希薄な人間だ。

なんというか、「私」の出し方が分からない。私が自分の本心を見せたとして変わる物は少ないから。

そんなふうに考えて、大切なことからいつも逃げようとする自分が嫌いだ。本当に大嫌いだ。

自分勝手な私は本心を見せて嫌われることの方が嫌だったので、第二の私、「彼女」を創った。

明るく元気に振る舞って、みんなと仲良くなれるような、「理想」の自分。

それを、空っぽだった私の器に注ぎ込んだのだ。　実際人の模倣をするのは得意だったから、「彼女」を作り上げるのは簡単だった。

それに、「彼女」に私の体を動かさせているのは楽だった。誰かと仲違いをしたり、人から嫌われるようになっても「彼女」の所為にして逃げることができるからだ。

でも、「彼女」がきっかけをつくった友達は、もちろん本当の私を知らない。だからやっぱり真の友達とは言えないなって思う。

やっぱりどこまで行っても「私」は卑怯だ。

こんな単純明快なこともいつしか分からなくなってしまった。

ほんとの私って、誰だっけ。