10.謎が謎々してる
「部員になったってどういう事だよ?」
「遠足の帰りの電車、お前寝てたじゃん。その間に色々話してさ。塩谷って良いやつだな。」
茂木はニコニコしながら昨日のことを語る。あれ、お前そんなキャラだったっけ?
てか、俺はその色々の部分が聞きたいんだが…。本人たちは話す気無さそうだしなあ。あ、鹿沼は。
「ごめんなさい、私も話せないわ。」
「俺まだ何も言ってないんだが。」
まさか、心を読んだだと…。お前、…エスパーだったのか。というか、鹿沼も言えないってマジで何の話してたんだ。
「おい塩谷。」
この話の張本人である塩谷は、俺の質問に答えるかのように口元に人差し指を立てて、軽く笑みを浮かべながら言う。
「ヒ・ミ・ツ。」
いや、答えになってねーよ。
なんだかなぁ、と不服な思いでいっぱいになる。
あれ、新手のいじめかな?シクシク鼻水垂れ流しながら泣いてやる。
「さて、それでは我が部に2つ目の依頼がやってまいりました!拍手!」
パチパチパチと全員で拍手をする。
「茂木くんは初めての依頼だよ!気を張りすぎずに頑張っていこうー!」
「おー!」
あの、君そんな喋るキャラじゃなかったよね。なんか、キャラぶれる人多くない?
ンンッ。と軽く咳払いをして塩谷は依頼を告げる。
「今回の依頼は、図書室で消える本の謎、です!」
「おー。」やら「んー。」など反応は様々だ。
図書室で消える本の謎?なんだか、また厄介事の匂いがする。
詳しい事情を聞かないことには何もわからないので、俺達は図書室へ足を運んだ。
俺達の部室がある西校舎の三階に位置する図書室。人気のない廊下は、不気味さが漂っている。
俺達は図書室に入ってすぐ右手にある司書室へ向かう。司書さんもこちらに気づいて近寄ってくる。どうやら塩谷が既に話は通していたみたいだ。
俺達は司書室で話を聞くことになった。司書さんは50代くらいの女性で、丸い眼鏡をかけている。おっとりとした雰囲気は、図書室によく合っていた。
「それで、図書室の本が消えるってどういうことですか?」
塩谷が話を切り出すと司書さんは困ったように眉を下げる。
「それがねぇ、私にもよくわからないんだけど本が消えてるのよ。図書委員の子が定期的に本棚を点検するんだけど、貸出ししてない本が盗まれるのよ。」
「なるほど。ちなみに今は何冊盗まれてるんですか?」
「今は全部で6冊ね。」
6冊も抜かれていたら、誰がしているかくらいわかりそうなものだけどな。少なくとも目星をつけることくらいはできるだろう。
「対策は何かしていますか?図書室を利用する人は、多いわけでは無いと思うのでそれっぽい人とかいたりしませんか?」
「私と図書委員で見回りをしているけど、それらしき人は今のところいないわね。」
ふむ、どうするべきか。とりあえず手がかりがないことには始まらないな。さて、ここは一肌脱ぐとしますか。
「その盗まれた本の名前を教えて貰ってもいいですか?」
うまく聞けた!……なんだか心が小学生に回帰した気分だ。
「ええ。えーっと、確か………。」
盗まれた本はまとめるとこんな感じだ。
1.クスノキの番人
2.人間失格
3.魔女の旅々
4.オイディプス王
5.江戸川乱歩傑作選
6.いなくなれ、群青
だ。
いなくなれ、群青っていいよね。
ンンッ。気を取り直して。流石に、これだけだと分からないな。
「盗まれた日付とか分かりますか?」
「流石に分からないわねー。最初に気付いた時には、4冊が無かったわ。」
これさ、最悪警察コースだわ。学校の備品を盗むのも立派な犯罪なのです。
「警察に任せるという事は考えてますか?」
俺が尋ねると、司書さんは下げた眉を一段と下げて言う。
「…できるだけ大事にはしたくないのよ。」
そうか…。困った困った。警察に任せるのが一番楽だし、確実なんだが…。
「うーん。流石にこれだけだと犯人特定は難しいねー。」
頭を押さえて、くねくねする塩谷。
「そうね。犯人の目星もついてないとなると、私たちも見回りに加わるくらいしか対策がないわ。」
顎の下に手を当てて考える鹿沼。
2人の様子を見て、茂木は言う。
「だな。今日は一旦戻って対策を立てたほうがよくないか?」
「そうだな。」
茂木の言う通り、一度落ち着いて情報を整理したほうがいいだろう。
俺達は図書室をあとにし、部室へと戻る。だが、いくら考えてもいい解決策が出ることはなかった。
次に犯人がアクションを起こした時に、何かがわかる。
探偵というわけでもないが、俺の勘がそう言っていた。
次の日、司書さんから連絡が入った。
―――――盗まれた本のうち、一冊が見つかったと。
俺の選択を正すための青春は存在するのか コナンオイル @konanoil
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