第15話 「禍集結」
譲介の目が開く…
「………。ハッ…!!!」
動こうとすると体が拘束されていた。
周りを見渡すと慧悟、問馬、剣、百合香が拘束されている。
「みんな…!」
そして正面には…………禍達が立っていたのだ。
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第15話「禍集結」
飛行機が俺達をのせて走っていた。
麗華が無線を取り出す。
無線の相手はレイナ。
「事態を聞きつけ、既に禍達が日本に集まっている。麗華、笹川無事に連れて行くんだぞ。」
「了解です。」
譲介達は意識不明のままただただ連れてかれていた。
そして麗華と笹川が目的地につく。
「着きましたね」
「はい」
すると3人の男が迎えに来る。
「麗華さん。笹川さん。手伝いに来ました!」
そのうちのこの羽場という男は禍の次に称号が高い「牙謀(がぼう)」と呼ばれる者。
羽場は禍の次に有望とされている。
「ご苦労。感謝します。どうぞ。」
彼らは譲介達を担いで進んだ。
俺達の身柄はレイナに渡される。
「よくやった。そこに置いておけ。田蔵さんと唐澤福会長、黒栖会長がくるまで待機だ。」
そして禍達が集まる中、譲介の目が開かれる。
「こ、ここは…」
譲介は全身に力を入れるが、拘束されて動けない。
(体が拘束されて動けない…!みんな…!!!)
俺が目を覚ました途端。目にはいった者は…
(だ、誰だ…?)
凄まじいオーラを持つ者達だ。
譲介の視界に牙謀の羽場が入る。
「あっ、起きましたよ!皆さん!」
羽場がそういうとレイナは腕を組みながら
「うむ。これより禍会議を開始する。田蔵さんと上層部がまもなく来る。」
と宣言した。
「あ、貴方達は…」
譲介がそういうと問馬の叫び声が聞こえてくる。
「うおぉぉぉ!なんだこりゃぁぁ!
う、動けねぇ!」
「静粛に。」
レイナは冷静にそれを制する。
「問馬!騒ぐな!」
慧悟が注意するも問馬は落ち着かない。
「だってこんなのびっくりだぁ〜ぜぇ〜!」
「禍(まが)の前だぞ!!!」
慧悟が発した「禍(まが)」という言葉に譲介は口から疑問がこぼれる。
「禍…?」
「SRの武闘派・最高称号のことだ!!SRの中で最も強い!」
「な、なんですって…!?」
前には椅子の上に縛られている剣がいた。
「譲介…慧悟…問馬…百合香…すまん…」
「剣さん…!」
すると見下すような声が譲介の耳に響き渡る。
「目覚めたかな?」
「笹川…!」
・【氷雷ノ禍】(ひょうらいのまが)「笹川雪乃」(ささがわ ゆきの)
「禍に向かってその口の利き方!気をつけろ!」
レイナが即座に注意するも笹川は冷徹な目でレイナに言う。
「いや。言っても分かりませんよ。アコンシャスを匿うようなバカどもに」
譲介はあの女への怒りを抑えるのに必死だった。
「馬鹿って言ったほうが馬鹿なんだよ!」
問馬の場違いな発言に慧悟は焦る。
(問馬…あいつ何いってんだ…!)
が、それを無視し、女の声が響く。
「笹川さん。確かにそうです。アコンシャスを匿うような人達。さっさと処刑するべきですよね。」
・【霞ノ禍】(かすみのまが)神代麗華(かみしろ れいか)
「そのとおりです。処刑が最適かと。」
次に譲介の視界に入るのは手鏡を持った男。
「うん。やっぱり私は美しい!そして貴様は美しくないアコンシャス!!断罪の時がこの美顔の前にある!」
・【光ノ禍】(ひかりのまが)「鏡京介」(かがみ きょうすけ)
そしてもう一人の男が同調する。
「そうだな!俺も処刑がいいと思うぜ!」
・【電子ノ禍】(でんしのまが)「秤雅人」(はかり まさと)
「てっ!おい!起きろ!」
秤は隣の寝ている男を見ると肩を叩き、起こした。
「ああ…!寝てたでヤンスゥ!」
・【岩ノ禍】(いわのまが)「一ノ瀬哲平」(いちのせ てっぺい)
すると派手な髪型の男が譲介に歩み寄る
「水を飲んだほうがいいぞ!」
「は、はい…」
「元気ハツラツになるからな!」
・【爆破ノ禍】(ばくはのまが)「日ノ下爆人」(ひのした ばくと)
「君、名はなんという?」
「『天城譲介』です!」
「うむ!良い名だ!」
友好的な日ノ下だが笹川がつっかかる。
「日ノ下さん。何アコンシャスに馴れ馴れしくしてるんすか?」
「笹川…お前…」
「何が目的か知りませんが、こいつらはただの馬鹿ですよ。」
「笹川…俺はアコンシャスに育てられた!アイツラは敵じゃない!彼は人を命を懸けて守った少年だ!死刑にすべきではない!」
「日ノ下さん。あんたの両親のことは許したつもりだ。だが流石に両親のようにこの男が人を襲わないという保証はない。俺は理解しかねる…!」
「お前…!」
それに麗華は仲裁に入る。
「確かに人を救ったという事実は存在します。どちらの意見も納得できる考えです。ですが一旦冷静になって事実と憶測を分けたほうがいいですよ。」
「…………」
笹川はだまり、日ノ下は怒りの表情を浮かべる。
その時、槍が地面をたたく音が響く。
「もうよい!上層部が来るまで勝手な議論は許さん!」
・【水刻ノ禍】(すいこくのまが)「神代凌駕」(かみしろ りょうが)
「お兄様…!」
「凌駕さん…すみません……」
「凌駕さん…わかりました。」
すると暴れていた笹川と日ノ下は静かになった。
「静粛に!」
レイナの声が響く
「唐澤福会長、黒栖会長、そして田蔵さんが参られた!」
3人が奥から現れ、場の空気が変わる。
その瞬間、SRの構成員が頭を下げる。
(黒栖…会長か…頭を下げないと!)
譲介と百合香もそれをみて瞬時に頭を下げた
だが問馬は状況が理解できず頭を上げたままだ。
「?」
「頭…下げろ…!」
故に羽場がその頭を鷲掴みにし、無理やり頭を下げさせる。
「いてぇ!何すんだ!」
「馬鹿野郎!でかい声を出すな!上層部の前だぞ!」
問馬の騒がしさを無視し唐沢が話を始める。
「では話を始めますか。」
「…ああ。まずは田蔵。今回の件どういうつもりだ…?お前のことは武闘派を束ねるということで一目置いていた。だがアコンシャスを庇うなど言語道断だぞ。」
黒栖の問いに田蔵は少しの間沈黙をし、答えた。
「勿論…わかってます。混乱をまねき申し訳ありません…」
「何故剣を庇った」
「それは…」
黒栖を前にしても田蔵の意見は変わらなかった。
「剣は違う。人間を助けていた。その目にはいつだって正義がありました。」
「!?」
その言葉に禍達が驚く
「皆は…いかが思うか…?」
最初に反論したのはやはり笹川。
「くだらない妄言を吐き散らさないでください田蔵さん。アコンシャスが人間を襲わないって保証がどこにあるんだ。」
秤と鏡も続けて反論する。
「そのとおりだぜ!アコンシャスとかアブねぇよ!田蔵さん!」
「僕は処刑に賛成だ!」
しかし日ノ下は違った。
「いや。彼らは大丈夫だ。俺は確かにニュースで見た。彼らがアコンシャスを助けている様子を」
「剣よ…主張を述べよ」
黒栖の指示に剣は主張を述べる。
「ワイは…アコンシャスや。みんなに言えとらんかったし、最低なことをしたわ。せやけど、ワイは本気で救おうとしとる!みんなを!」
その言葉に譲介も入る。
「そうだ…その通りです!彼の信念は間違いない!」
しかし一ノ瀬は目をこすりながら秤にいう。
「秤〜さっきから話がムズイでやんすぅ…」
「わかる…本音言うと帰りてぇよな…」
「デヤンスゥ…」
「凌駕…主張を述べよ。」
「うむ。これまでの主張を踏まえ…」
凌駕がそういいかけた瞬間…凌駕の目が見開かれる
「待て…お前は…」
「えっ…まさか…」
凌駕の脳裏によぎったのは、8年前の記憶。
「まずい緊急だ。急ぐぞ麗華!」
「はい!」
凌駕と麗華は緊急任務により走っていた。
だがそこで凌駕の目にある光景が映る。
「!?」
そうそれこそアコンシャスに食われそうになっていた譲介と真由美。
「ウワァ〜!」
「キャァ〜!」
「フン!」
考えるより先に凌駕は動いていた。
「そこの女性と少年!早く逃げろ!」
「ありがとうございます!譲介いくわよ!」
「お兄ちゃん!ありがとう!」
2人が逃げると凌駕は言った。
「緊急任務へ向かっていたのに…俺は馬鹿だな。でもな目の前の命を見捨てるなんて絶対ありえないんだよ。」
が、麗華は微笑みながらフォローする。
「いいえ。素晴らしい判断ですよ。いきましょう。」
「ああ」
凌駕の意識がゆっくりと現実に戻る。
「少年よ…覚えているか…」
「えっ、あっ、」
(こんなこと…あるのか…)
「もちろんです!!あれから忘れたことは一度もない…!貴方の広い背中を追いかけてここまで来た…!」
「そうか…私はあの時感じたのだ。歴戦の勘だろうか。お前の"将来"を」
そういう凌駕の顔は無表情ながらどこかうれしそうだった。
(この少年の目にはあの時と変わらない"正義”が宿っている。剣や遊馬、他の者もそうだ。)
それを見た麗華も思い出す。
(そうか…あのときの…お兄様…なんという記憶力…)
「凌駕さん…」
「わかってる…。黒栖会長…」
「なんだ…?」
「私は…この少年達へ未来を感じます。どうかこの少年達の…剣、譲介、問馬、慧悟の死刑を撤廃していただけませんか?」
「凌駕…お前…」
「凌駕…お前ほどのものがそういうとはな…」
「ま、まじかよ…」
神代凌駕…彼はSR最強と名高い、禍の最年長の剣士。そんな彼の言葉に全員が驚愕した。
「私も…死刑撤廃を望みます。」
「俺もだ。断固死刑を拒否する。」
すると日ノ下と麗華も死刑に反対し始める。
「みんな…」
「黒栖会長…お願いします…!剣は悪いやつじゃないです!」
慧悟がそう叫ぶも問馬も前に出る。
「そうだぜ!誰だか知らねぇけどよ!おっさん!剣は悪いやつじゃねぇって!」
続けて百合香も
「そうです…剣さんは…いつも命懸けだった!」
そして譲介も
「剣さんは…大丈夫です…!」
と叫んだ。
「みんな。これを見ろ。」
日ノ下がスイッチを押すと、モニターに映像が映る。
そこにはたたかってきた譲介達の姿が映る。
「いくでぇ!」
「ぐあー!」
「無駄ちゃうわ!行くで譲介!」
「はい!」
「完敗だ…」
「行くぞ!」
「倒すぜ!」
「が、ガハァ!!!」
「逃がすか!」
「往生際が悪い!」
「観客席投げだぜ!」
「疾風居合斬!」
「うおー!」
「ばかな…」
「うおー!ヒーロー!!!!ありがとう!!!」
「SRのみんなには感謝しかない。」
映像が終わると日ノ下はこういった。
「みんな。助けられたんだ。剣に。その事実は変わらない。例え剣が何であろうとな。」
全員が静まり返った。
「黒栖会長…いかがなさいますか?」
「うむ…わかった。剣が人間を救っていた事実は確かにある。それに日ノ下の前例もある。よい。許そう。ただし様子見だ。もし暴れたら即斬首だ。」
黒栖の言葉を聞いた問馬は
「よっしゃぁぁぁぁ!」
と叫んだ。空間に響き渡るほどに。
「よかったな…!」
日ノ下と麗華も喜んでいた。
その時、凌駕が譲介へ歩み寄る。
「天城譲介…」
「はい…!」
「名乗り遅れていた。私の名は『神代凌駕』だ。これから宜しく頼むぞ。」
続けて麗華も会釈する。
「よろしくお願いします。」
「勿論です。証明してみます!この6人で!」
そこに鏡と秤もやってくる。
「なるほど。エレガントな会長が決めたならばこの鏡様は認めるしかない!」
「応!そうだな!俺もそう思うぜ!」
一ノ瀬は
「ん…?話聞いてなかった…。まあそれでいっかwww」
と笑っていた。
羽場は驚く。
「ガチで通ったぞ…すごいことになったな…」
だが一人納得してないやつがいた。それは「笹川雪乃」
「………」
(また歴史を繰り返すのか…俺は断じて認めない。)
黒栖は解散の指示を出す。
「これより禍会議を終える。みなの者。解散!」
が、笹川は一目散に消えた。まるで譲介達を拒絶するように。
譲介達は拘束を解かれた。
「凌駕さん…ありがとうございます。」
「譲介よ。俺は誰が何と言おうとお前を信じてるぞ。分かるんだ。この目が体がお前は大丈夫だと」
日ノ下も譲介をフォローする。
「天城少年。認めぬ者も今後出るだろう。だが俺だけは認めるからなッ!」
そういうと日ノ下は笑顔でガッツポーズをした。
こうしてこの件は一件落着という形で終わった。
次回 「四騎士会議・開幕」
咎禍 Yuta @Yuta_Togaka
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