2 一先ず、状況整理とかから

 

王子や家族と速やかに絶縁し、晴れやかな気持ちで

朝を迎えた私ことメディスン・ボワンコリー。

あ、流石に絶縁しといて家に居座れる程

神経は図太くないので、野宿である。

危なくないのか、と言われるだろうがそこはまぁ、

メディスンのチート的能力が関係する。


「雨と地かたまって」悪役令嬢であるメディスンは

原作だとかなりキツめの性格で、

青い髪と黒い目が印象的な美少女だが、

そうなったのは彼女の主に"無尽蔵魔力"が原因である。

彼女の断片的な記憶を知ってから、

やっと分かったことなんだけど……。

幼い頃に彼女はこの無尽蔵魔力で事故を起こした事で

間接的にだが母親を殺してしまった。

それを日々様々な人間に同情と言う名の好奇と畏怖の

目に晒され、実の父親も自身を恐れるばかり。

そんな日々を、屋敷に迷い込んだ魔物の子犬だけが

救ってくれた。

彼女は無尽蔵魔力の他にも能力があり、

原作では魔物を率いて攻略対象とヒロインに

けしかける際に、"魔物使い"と言っていた。

魔物使いは魔物の言葉を理解し、手懐けられる能力だ。

子犬…メルと心を通わせ、唯一無二の友達が出来た事に

次第にメディスンの精神は安定していった……が。


あのバカ王子は、狩りの練習としてメルを殺した。

メディスンは初めて、人を殺したいと思った。

そして、復讐を決意したのだ。


「改めて、クソだわッ!」

大声を出してしまったせいで、小鳥が飛び立ってしまったが

まぁ仕方ない。

それは!!!それと!!!して!!!

「周りがカスでゴミでクソすぎる!何なのこれ!

 つかそれ設定資料集なり何なりに書いとけよ!

 それにしたってこの設定で小説なり漫画なり

 書ァけるだろーが!」

地面を拳を殴りながら心の内から叫ぶ。

ま、まぁつまり、メディスンは血の滲む努力により

無尽蔵の魔力をモノにし、魔物使いで近場の魔物達を

配下にしていた。

断罪時点で、森の中には魔物はそこまでいない。

いたとしても、今まで封印していた無尽蔵の魔力を

垂れ流している為、並の魔物は近寄らない筈だ。

探知の魔法もあるけど、これは人か魔物かしか

判別できないから

それもこれも全て、王国を徹底的に潰す為にだろう。

流石にやりすぎ、かなぁ……とは思うけれども、

気持ちは分からなくもない。

ゴミカス王子にはしおらしくなんてしてやらずに

玉を蹴ってやるか、適度に罵ってやればよかった。

……てか、魔物はどうすればいいの?

と言うか一応現代中世って言うよく分からん世界だけど

配信機材とか、そもそも配信ってあるの?

金もないしな……うーんやることがいっぱい。

一先ず、王国タトュウを出て隣国のフェタル辺りに

行くか、異世界で冒険者になるの夢だったのよねぇ〜。


と、その時探知の魔法に反応があった……少し遠いけど

緑の反応が複数ある、緑は人だ。

とは言え、盗賊の可能性だってあるけど。

まぁ魔法でいくらでもどうにかできるし、

行ってみますか。




少し離れた場所で、遠視の魔法を使って様子を見る。

予想通り、盗賊はいたけど…一人、傷だらけの美青年が

膝をつきながらもフラフラの状態で剣を握っていた。

「く、そッ……ここまで、か………」

あれ、確か……彼も攻略対象で、しかも隠しキャラの

隣国の第二王子、エヴァルト・バートム・ファタル

だったような?

なんでこんな森の中に……まぁいいや。

運が良かったわね。


あわや、盗賊のナイフが彼に振りかかろうとした時……

盗賊の右腕がぽとりと地面に落ちた。


「ぎ、ぃやぁぁぁぁっっっ!?!?」

「な、なんだァ!?う、わぁぁぁ!!」


騒がれてもただただうるさいので、

大木の根を操作して口と動きを封じておく。

あ、右腕を斬った奴は根元を縛って、ちゃんと止血して

あげた、私ってば優しい〜。


「エヴァルト・バートム・ファタル殿下。

 ご無事でしょうか?」

転移して攻略対象の前に現れると、目を見開き

驚きと警戒が入り交じった表情をする。

「……あなたは……だれだ」

「わたくしは……メディスンと申します。

 元公爵令嬢ですが、今は関係ありませんわ。

 失礼しますわね」

屈んで、攻略対象の手を握る。

「な、何を……!?」

様子がおかしいとは思っていたけど、なるほどね。

呪いを受けていたみたい。

素人目に見ても雑ですこと、呪いを返して差し上げるわ。

禍々しい紫色の光が空の彼方へ飛んでいくのを

見届け、攻略対象に目を移す。

「……身体が、軽い?呪いを、消してくれたのか?」

「消すだなんて、そんな面倒しませんわ。

 時代は呪い返しですのよ」

「貴女は一体……何者なんだ?」

「さぁ?ところで、貴方こそ何故こんな森の奥に?」

「……すまないが、命の恩人に礼をしたい為にも、

 先ずは貴女から話してくれないだろうか」

ふぅん、警戒心がだいぶ強いのね。

まぁいいか、配信前の肩慣らしに喋り倒してあげる。

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悪役令嬢、配信中 パルラコ @ami_44

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