物語の中に出てくる粗末な食事。
それに惹かれる時がある。
北野武監督の『座頭市』
劇中に出てくる場末の酒場。
そこのツマミは不味い。
常連客も、
「コレ、不味いな」
そう言って、杯を重ねる。
店の中には、いつから下げているかわからない目刺しがぶら下がっている。いかにも硬く。臭ってきそう。
北野武監督は子どものころ見た西部劇映画で、ガンマンたちが夜に焚き火を囲んで食べていた食事を覚えているそうだ。
「何だ、また豆の煮たやつか」
ガンマンがぼやきながら食べる。
このお作品にも、粗末な食事が出てくる。
『黒パンと豆のスープ』
『干し肉と酸っぱいキャベツ』
かったい黒パンに豆だけ煮たスープ。
干し肉。きっとコレも、かったい!
惹かれる。
スゴく、惹かれるのだ。
『風の谷のナウシカ』に出てくる
チコの実。
『ドラゴンボール』に出てくる
仙豆。
物語に出てくる粗末な食事は、人を惹きつける。
そして、それを描いた作品は名作ばかりである。
もちろん、
このお作品もそれに負けないくらいの名作である。
王殺しという大罪を犯し、七日後に死刑執行が決まっている罪人騎士。その食事を運ぶ看守の物語です。
死刑執行までの最後の七日間は、死刑囚であれ好きなディナーが注文できるしきたりが柱となり、物語がじっくり展開されていきます。その構成がシンプルかつ分かりやすく、さらにそのディナーによって罪人の想いや過去が次第に明らかになっていきます。
見事なのは、この最期の七日間のディナーという要素がこのゆるやかに死へと向かう暗闇を照らす希望の光であり、物語を一層彩っているという点です。
このしきたりが二人の心に小さな波をたて、過去の栄光や幸福を鮮明にさせる反面…もう元には戻らないという切なさを感じさせてくれます。
なぜジャウハラは罪を犯したのか?
看守サフラは彼の思いに触れ何を選択するのか?
ぜひ二人の七日間の世界を堪能していただきたいです。