曇った世界はいつか灼ける。

天照うた @詩だった人

end and beginning

 突然、死にたいと思ったから死ぬことにした。

 空は曇り。晴れてはいないし、雨も降っていないし。まるで中途半端な僕自身のようだ。

僕の心にはぽっかりと穴が開いている。なにもかもを理解出来ない僕がいる。

 どうしたら死ねるのか分からなくて、ネットで検索してみた。

 『焼身自殺』というものがあることを知った。

 今、家に親はいない。絶好のチャンスだと思った。普通、嬉しいことがあれば人は笑うのかもしれないけど、僕の口角は上がらなかった。僕には感情がなかった。

 なにかに決められでもしたように、ただ淡々とキッチンにあった油を家にまき散らした。積んであった新聞紙にもかける。少し余ったから、最後は自分自身にかけた。人間から外れたみたいでなんだか面白くもある。

 自分の部屋にはなにも詰まっていなかった。僕の生きてきた人生は、まるであのそらのようだ。いつのまにか口からは溜息が漏れ出る。それが何の感情なのか、僕はまだ知らない。

 物置から漁ってきたのはチャッカマン。かちっと押すと火が付いて、なぜか僕の命と対面したような気がしてしまう。


 かちっ。


 何の覚悟も要らなかった。僕の手にはなにもない。守るモノも、大切にしたいモノもない。これが僕の人生だ。誰に分かってもらう必要もない。

 新聞紙に付けた炎は一瞬で部屋に燃え広がる。そして、それを電波のように広げて僕を取り囲む。熱気を肌で感じて、息が苦しくなって。自分はもう死ぬのだということが身に染みて分かった。でも、特別怖いなんて感じなかった。

 僕には最後まで、普遍的な感情さえも与えられることがなかった。なぜだろうか。普通の人間なら、これを怖いと感じるはずなのに。

 国語が嫌いだった。答えはいつも僕の考えと真逆で、意味が分からなかった。それから、勉強ではの自分を作ることにして、自分を封じ込めたんだ。

 ……あぁ、僕にはもう、自分なんて残ってなかったんだ。

 表面上の僕はいつの間にか本当の僕を覆い囲って、僕自身に成り代わっていた。僕自身はだから、感情も何もないからの人形になったのか。

 理由が分かったときには、もう遅かった。

 炎を僕が覆う。今までに感じたことのないような熱を感じた。

 ……あぁ、僕は今、生きてる。

 皮が焼けて、肉が露わになる。最後にはきっと骨しか残らない。

 しかし、炎に囲まれたひとりの少年は、口角を上げて幸せを噛みしめていた。

 そして、骨に成った。

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