「好きだ」「好きです」「「ごめんなさい」」

むげん

「好きだ」「好きです」「「ごめんなさい」」

「好きだ」

「好きです」

「「ごめんなさい」」


 愛を確かめ、現実を確かめる。

 これは救いと呪いの言葉。


 敵対する国に住む二人。俺と君は結ばれない。


 だから、彼女は俺を振る。

 だから、彼は私を振る。


 立場が違う。身分も違う。

 結ばれることなどあるはずない。


 手が届くのに、届かない。

 そんな距離にいる二人。


「好きだ」

「好きです」

「「逃げよう」」


 愛を確かめ、思いを確かめる。

 これは救いと希望の言葉。


 探そう。二人だけでいられる場所に。

 行こう。二人だけでいられる場所に。 


 二人は、月明かりの元、人知れず逃げ出し旅に出た。

 

 その旅は、辛く苦しいこともあった。

 だけど、君となら乗り越えれる気がした。

 

 ——村が見つかった。

 争いと無縁の集落だ。


 村の人たちにも温かく迎えられた。


 ここなら、君と二人になれる。

 ここで、君と平和に暮らすんだ。


「好きだ」

「好きです」

「「結婚しよう」」


 愛を確かめ、想いを確かめる。

 これは救いと幸せの言葉。


 結婚報告を聞いたとき、村の人たちと一緒に宴をした。

 結婚式は盛大にやろうと言った。


 二人は過ごす。この村で。

 二人は結婚する。この村で。

 いつまでも、平和に――。


「ある情報が入っている。この村に□□様がいるという情報だ」


 ある日訪れる危機。

 二人は逃げ出す。ここから。


 村の人たちがこっそり逃がしてくれた。


 大好きな村を捨てるのは辛かった。

 でも、そうするしかない。逃げるしかない。


 しかし、時は遅かった。

 二人は捕まる。もう逃げられない。


「お前、敵国の■■だな? □□様を誘拐しおって、お前は死罪だ」


 二人の平和は、所詮ガラス細工。

 ほんの小さな衝撃で、あっけなく割れてしまう。

 そして、それはもう——砕けてしまった。



 処刑の日。処刑台に張り付けられる。

 空は青く、太陽がまぶしくちらつく。


「好きだ」

「好きです」

「さようなら」「逃げよう!」


 二人の思いが初めて割れる。

 

 また逃げ出したら、今度は君だって罪に問われてしまう。

 今も君に銃を向けている兵士がいる。

 だからもう、処刑台に縋りつくのはやめてくれ。


 嫌だ。一緒にいたい。

 好きと言った。結婚までした。

 また探しに行く。二人が一緒にいられる場所に。


 そのときだった。

 処刑所の入り口が、何者かによって破壊された。

 続々と兵士も倒れていく。


 ——村の人たちだ。

 助けに来てくれた。


 処刑台から解放される。

 二人は手を取り合う。

 二人は抱きしめ合う。


 探そう。二人だけでいられる場所に。

 行こう。二人だけでいられる場所に。 


「好きだ」

「好きです」

「「大好きです」」


 愛を確かめ、愛を確かめる。

 これは救いと、愛の言葉。



 ゆっくりと瞼を開ける。

 あぁ、そうか。夢か。


 とても幸せな夢だった。

 目覚めてほしくなかった。


 処刑の日。処刑台に張り付けられる。

 空は青く、太陽がまぶしくちらつく。


 処刑場の入口を見る。


 そこには捕まっている村の人を見た。

 助けようとしてくれたのだろうか。

 ありがとう。大好きな村だった。


 正面を見る。

 そこには愛する人がいた。

 だが、兵士に止められ、こちらには近づけない。

 

 ありがとう。俺を愛してくれて。

 ありがとう。私を愛してくれて。


 ごめんなさい。一緒にいれることができなくて。

 ごめんなさい。助けることが出来なくて。


「好きだ」

「好きです」

「「ごめんなさい」」


 愛を確かめ、現実を確かめる。

 これは救いと二人の言葉。

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「好きだ」「好きです」「「ごめんなさい」」 むげん @Mugen714

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