おしまいの彼方

|三戸里市はやっと静かになった。だが何もなくなったような虚無感に覆われていた。安江市長は非常事態の終わりを宣言したが、市民にはどうでも良かった。


「誰も安江市長のことを責めないのです。それは親切からではなくて、この惨状を誰も引き受けたくないからです」


 時哉の所に来た太田は、料金の支払いと事件が終わったことへの礼を言言った後に、ぽつりと言って帰っていった。




 藤井花野美は父のように朝早く起き、家事をしていた。


 捕まった学生たちの証言によって、本宮陽菜乃は未来を変える会のことを告発しようとしたことで殺された可能性が高いこと、学生たちが青木の携帯電話に絶えず寺田議員の乗っている自動車のことを報告して青木の運転する自動車が寺田議員の乗っている自動車にぶつかるよう誘導したことが明らかになった。


「みんなごめん。すまなかった」


 斉果大学のサークル会館で、安川が未来を変える会斉果支部の会員の前で土下座していた。


「お前に謝る義務はないでしょ」


「名前を変えれば活動して良いという大学からのお許しももらっているしさ」


「騙されたのはよくなかったけど、これからまた、新しく何かをやればいいだろ」


「続けて良いのかな」


「良いに決まってます」佐野夏希が声をかけた。


「そうだな。皆様へのお詫びもかねて九月はもっと頑張ろう。と、いうわけで 、学君もサークルに入ったそうそう、こんな事件に巻き込まれて嫌になっているだろうけどもう少し一緒に頑張らないか」


 安川に手を差し出され、事件のために入ったサークルだが、もう少し続けようかと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おしまいの町に灯りがともる 川名真季 @kawanamaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ