ブラックボックス
アルとメラは手を繋ぎながら次の惑星へと降り立った。ここは遮蔽の惑星。一人一人が隔絶された孤独な世界だった。
「ねぇアル、ここはどんな惑星?」
「この惑星のニンゲンは、生まれた時からずっと黒い箱を被っているんだ」
「黒い箱? どうして?」
「現実世界よりも、箱の中の方が楽しいからさ」
そう話しながら二人は、ある一軒の家にたどり着いた。窓一つない箱型の黒い家、ここにニンゲンが住んでいるようだ。
「お邪魔します」
どこが入口かわからないような真黒のドアを開け、一切照明のない暗闇の室内を歩いていく二人。すると、そこにニンゲンがいた。
「あ、アル君いたよ!」
「ほら、黒い箱を被ってるだろ」
「ほんとだ!面白い!」
黒く四角い椅子に座り、固まったまま微動だにしないニンゲン。頭には黒い箱を被り、それ以外は一切身につけていない。メラはニンゲンの顔を覗き込もうとしたが、その箱には一切隙間がなく、どうやってその黒い箱を被ったのかも、中身がどうなっているのかもまったくわからなかった。
「箱の中ってどうなっているのかな」
「うーん。仮想空間、って言ったら伝わる?」
「仮想空間?」
「そう。ここじゃない、別の空間に繋がってるんだ」
「ふーん」
よくよく見てみると、そのニンゲンの手足は、時々ピクピクと動いてた。どうやら、その仮想空間で何かしらをしているらしく、その反応のようだ。メラはニンゲンの様子を不思議そうに見つめていた。
「なんだか、ニンゲンが黒い箱を被ってるんじゃなくて、黒い箱からニンゲンの体が生えてるみたいだね」
「・・・・・・ホントだね」
ピクリ、とニンゲンの手足が動く。おそらくこのニンゲンは、一生この黒い箱を外すことはないだろう。そう考えると、メラが言ってることもその通りかもしれないな、とアルは思った。
「そんなに楽しいのかなぁ」
「・・・・・・メラも被ってみる?」
「イヤだよ。アル君の顔が見れなくなるもの」
on the planet トロワル @torowaru
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