はぁーとても面白かった!
本作の登場人物は、一見すると、漫画やライトノベルの典型と言っていい属性を持って物語に登場してくる。どこか冷めた主人公、学年一の美少女の幼馴染、天才肌の芸術家美少女、ミステリアスなオーラの女先輩、保健室の先生……それぞれ、鮮やかな髪の色。これらは、ときに「テンプレ」などと言われ、ありきたりな設定と批判されうるだろう。
本作の面白いところは、このような「テンプレ」的キャラを、どこかメタな視点から徹底して批評して描く点に求められる。
主人公自体が、その恵まれたラブコメ的典型的シチュエーションに懐疑することは少なくない。また、物語自体も、何かをそぎ落とされた世界にある主人公が、不足に気付いて、戦って、何かを取り戻していくベクトルで描かれる。「テンプレ」から逃れる・逆行する仕組みになっている。
ことさらに面白かったのは、「テンプレ」要素を完全に突き放してしまうのではなく、そうした要素・展開を作品に含みつつ、そこに批評を加えるようなやり口で物語が進んでいく点だ。「テンプレ」要素と絶妙な距離感を取りつつ、独創的な物語が描かれる。批評としてとっても高度なことをやってのけている、と感じる。
世の中にありふれた設定やキャラクターに関して、楽しいのだけれども、どこかに物足りなさを感じる人は多いだろう。
そういう人に、ぜひに読んでほしい作品だと感じました。
あと、著者の他の作品が差し込まれたりと、野趣に富んでいるのも大変楽しく、本作の大いなる魅力だろう。特に諧謔さを出すシーンで出してくる単語のセンスが秀逸だ。クールランニングもバックドラフトも、続編あっても良いのにね。トレマーズはあんなに出たんだから。
ものすごく脳が刺激される物語です。様々なキャラクターが放つセリフは、自分に突きつけられているかのごとく感じられたり、自分の内側から漏れ出る叫びそのものだったり。
確かな描写力から、読み進めると同時に頭の中に映像が浮かび上がってきますが、その映像が、レイヤーのように、しかし少しずつズレながら幾重にも重なっていて、今この物語を読んでいる自分は現実にいるのか、もしかしたらこの重なっている世界のどこかに呑まれているのではないかと、心地よい不安感に包まれます。(うまく書き表せられないのですが、読み進めると同時に、何かしらの脳内物質が分泌されるようなイメージです)
いちばん上の表層に現れているストーリーの奥の奥の、ずっと奥のほうから「今ここにいるお前は何者か」と鋭く問われているような気分。そしてその答えを探し求めたい自分がいる。この先がとても楽しみです。
冒頭部分を読んだ時のイメージが、
進めば進むほど様変わりしつつ、
急速に出来上がっていく世界観を感じるのはとても新鮮味があります。
主人公が世界に対して感じていた感覚という物が、
そのまま読み手に対してもトレースさせているのだろうな、というのも感じました。
そして、”感覚の変化”というのが実に絶妙で、
一気に小説の世界へ没入させるチカラがあります。
そしてなにより・・・。
登場してくる女の子たちがとても魅力的でカワイイです。
繊細な表現が与える印象と、
表向きの顔と秘めたる裏の面の明暗部分がはっきりしてるのも、
キャラクターの印象をより濃く伝えてくれている気がします。
もう、次へ次へと読み進めたくてたまりません!