Rast day

懐かしい情景

 都会の喧騒の中に、一人佇む俺。

人はみな、どこか疲れたような顔をして流れるように歩いていく。


 どこへ行くのだろう?


俺は、そんな人が作る波を逆らうように、歩き始める。

 向かう場所? 目的? うっすらと記憶の断片を手繰り寄せようとするも、強い何かに阻まれる。考えるだけ無駄だ。 今はただ歩きたい。

人を時には押しのけ、時には避けながら、ただ、ただ、ひたすらに歩いていく。


さぁーー っと光の筋が目の前に現れた、気がした。 ふと見上げると、雲の隙間から太陽が顔を覗かせている。「さぁ、その先に進みなさい」そういわんばかりに。


俺は、その光に導かれるまま、その先に向かってまた歩き出した。


どの位歩いていただろう。 人の流れがなくなり、先には暗くて狭い道が伸びている、と認識し始めたときだった。

「お待ちなさいな」 ふと、声の方を見やると、髪が長い壮麗な女性がこちらを見ていることに、気づく。

「そっちは、ダメ。 戻ってきて」何かを告げたさそうに言う。

「いやだ」 そういうと、俺は逃げ出す世に走り出した。


 女性は追ってはこなかった。 彼女の悲しみを振り切るように、俺は


***


 ハトが、俺の足元に寄って来る。

木の上や、ジャングルジム、滑り台の上にまでいる。ハトの多い公園なんだなぁ。


いつの間にか、小さな公園のベンチに俺は座り込んでいた。 ひどく疲れた気分だ。

空には焼けるような赤いちぎれ雲が広がっている。 

公園には、缶蹴りをしたり、ブランコにのってはしゃいでいる子供らの姿があった。


キィン、コォン、カァァンコォォン。 カァァン、コォォン、キィィンコォォン。


そろそろ夕ご飯だ、と告げているようだ。「もう、そんな時間か」

どこからか懐かしいカレーの匂いが漂ってきた。 グゥ、とお腹がなった。


どこか懐かしくて、それでいて、どこか切なくて。 いろんな思いがシャボン玉のように浮かんでは、割れていく。 

 だんだん、俺の子供の頃の情景と、見ている景色が重なり始めていた。


「ごはんよー」「はぁーい」 親子だろうか。

「じゃぁねー」「また遊ぼうねー」 近所のこだろうか、仲がいいんだなぁ。


子供を呼ぶ親に走り寄る姿を見ながら、俺にもこんな時代があったよなぁ、と思いを巡らせていた。


チリリン 自転車が、目の前を通り過ぎる。 近所のお兄さんだった。


「おっとっと」つい、声が出た。

相変わらず、ハトは俺の足元にまとわりついてくる。 しっしっ、と寄ってくるハトを追い払いながら、いつまでもここにいられたらいいなぁ、と思い始めていた。


「待ったかしら?」 ああ、懐かしい母の声。

「ううん、全然。でもお腹がすいたぁ」お腹をさする俺

「ふふ。そろそろご飯よ、帰りましょ」

「今日のばんご飯はなぁに?」

「今日は、大好きなカレーだよ」

「やったぁ!」 ああ、さっきのカレーの匂いは自分の家からか、などど思いながら親と手をつないで家路についた。

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Dream or Real ? -Side A- ~夢と現実の狭間であがく男~ 素焼き☆悠 @nu_dy

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