第6話女神信仰「明日のために」


女神よ

己のためにのみ祈ることをおゆるしください。

この先に待っているのが絶望だと、わたくしは知りたくない。

心がただ老いていくのに我慢ならないのです。


繊細に、過敏になっていくこの心に、

悲しみを注ぎ込むのはやめてください。

怒りなら、罵倒なら、この身を痛めつける仕打ちなら、

とうに過ぎたことと思いたい。


女神。

癒しの力もちてこの身をお守りください。

悲しみの槍を打ち消してください。

わたくしがあなたへの哀しみを打ち消すように。

そしてわたくしの愛するすべての方々へ。

あなた方に、すべてのよき事、

よき望み、

よき日々がおとずれますように。


この世の苦痛と別たれたい。

すべて、望ましい未来のために、

一度目を背ける勇気をください。

恨みを、怒りを、忘れ去る力をください。


もっと強い自分になれますように。

牡牛の強い角のように、

ま白く気高い、雄々しき獣のごとく

強く――強くなりたい。

闇の獣、闇の翼の神秘はあなたの冠にふさわしい。

その威厳と偉容を我らがためにお示しください。

そして女神よ。

わたくしをお見捨てくださるな、どうか。


わたくしの手は震えている。

指先の神経は痛めつけられ、

しびれている。

明日は感覚があるのかわからない。


この恐れと、無知と蒙昧とに別れを告げて、

新しい毎日のために、

日々生まれ変わって、

明日も変わらぬわたくしでいるために。

強くあれと、

ただわたくしにお命じください。

そのためにわたくしは立ち上がるでしょう。

女神。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

rena-renaの詩編 水木レナ @rena-rena

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ