30 エピローグ






彼を思い出すたびに、ふわりと頭に浮かぶ景色がある。


それは、浜にある何もかもをまっさらにする高い陽だったり、人ひとりくらい、すぐにのみこんでしまう果てしなく広い青だったり。


さざめく波や、はるかに光るまぶしい波間、潮風にたなびく遠くの赤旗、まばたきするたびに姿を変える雲や、陽射しのかげんでもあるのだけれど。



変わらないのは、彼の立ち姿だ。



逆三角形の綺麗な骨格。健康的な肌色。

毛先を少し跳ねさせた茶色い髪は、日に焼けて色が抜けたから。

おでこの髪を風にさらさらなびかせて、まぶしい陽の中を、何かに耐えかねたように勢いよく笑う、あの姿。

ポロシャツの白をなびかせ、手を大きく振って。



そんな、白がぴったり似合うさわやかな青年の彼は。







わたしの愛しい、マイダーリン。










fin.

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【完】春の続きを待っている 姫村サキ @omotisaku

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