「人生とは旅のようなもの」と言いますが、二人の主人公の「旅の終わり/人生の終わり」まで描いた本作は、それを体現するような一本でした。
一話が二千文字あるかないかの掌編エピソードの連続で、二人は様々な怪異と旅の途中で出会います。さらっと書かれていますが、なかなかゾッとするものが多い。中華怪異譚オムニバスというおもむきですね。
が、一方で二人の心中や「旅の終わり」というテーマも同時にあり……作者様の紹介では後半から雰囲気が変わるとのことでしたが、明確に変化が起きたのは第二十一話からだと思います。
楊周は何者なのか? 友人らしき瑞賢との関係は? えっ皇帝? などなど前提となる設定がやや不透明だったのですが、楊周の最期が描かれる外伝でやっとその辺りが明かされてスッキリしました。引っかかる方は、先にそこから読んでしまった方がいいかもしれません(作者様に邪道と怒られるかもしれませんが、仙人なのか何なのか正体不明だけど、とにかくなんでも出来るおじいちゃんの楊周さんが本当になんだかよく分からなくて困ったんですね。でも格好いいの)。
本編を読んだらあとがきもどうぞ。そういう話だったのだなあという納得と、本編へのさらなる理解が得られます。
全体的に非常に荒削りな作品だと感じますが、「驢馬には驢馬。馬には馬の生き方がある」「阿呆に穿たれれば、その形になる」などなどの台詞は非常に切れ味が良く、このキラッとした部分を見ると「おおっ」とテンションが上がる不思議な作品。
老人と女性の旅路、あるいは軽い感じで中華怪奇譚が読みたい方、かっこいいおじいちゃんが好きな方はいかがでしょう?