第1話

キーンコーンカーンコーン...



午前の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。途端とたんに騒がしくなる周りの人達。

でも、その中に私は入っては居ない。私は小さく息を吐くと机の横に掛かっているスクールバッグから、お弁当を取り出した。パカリと開けてみると色とりどりの綺麗きれいなお弁当。お母さんが毎朝作ってくれるお弁当は手のんだ味で美味しい。恐らく今日の中で初めてこの時間で頬をゆるませた...と思う。そんな私を気にかける人など居ないのだけれども。

はしを手に取り両手を合わせれば小さく

『いただきます』と言った。お礼や謝罪の言葉を言えなくなったら御仕舞おしまいだ、と母は何時も言う。


美味しさに頬を緩めながらお弁当を食べていると、ふと目に入った物が一つ。


「あ...うわぁぁ、どうしよ、弁当忘れた...!」

スクールバッグを漁っている男子生徒。さぁっ、と顔を青くしてそんな事を言った。

...馬鹿ばかじゃないの、この前も忘れてたじゃない、貴方。

心の中で毒づくも届く訳がない。周りのお弁当を忘れた男子生徒の友達であろう人は『またかよー!?w』『もう今度はおごってやんねーからな!』なんてゲラゲラ笑いながら言っている。うぅぅ...と項垂れる様を見ていると何故か助けて上げたくなる衝動に駆られた。スクールバッグから《ソレ》を取り出すとガタッと音を立てて椅子を引き、相手の前に立った。




────...続く

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紅い華 @snow_flower

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