出合い Ⅰ 天人族と他人族

空から人が落ちてくるなんて書物や妄想に過ぎないと思っていた。そんな光景が今まさに起きていた。ただし場所は、町でもなく道でもなく森なのだけど。書物では大抵ぶつかられた奴は男と決まっているけど、私は女だ。


「………ぇっ⁉ちょっ………まっ‼!?………ゴフゥッ‼!?」


空から落ちてきた人とぶつかりドゴォと鈍い音と情けない私の声が響く。落ちてきた人は慣性のままに吹き飛び、私は斜め上からの衝撃に耐えられず仰向けで地に倒れこむ。書物ではうぅ痛………一体何だ?で済むけど、書物通りには絶対にならない。特に女の子では尚更だ。とてつもない衝撃と痛みが私の体に襲いかかった。

痛みに耐えられなくなり、頭から地に突っ込む人を見ながら私の意識はブラックアウトしていくのであった。




*********



夢をみていた。


大きなハウスの中にいた。


まわりには色んな種族の人がいて。


私がいて。


笑顔が絶えなくて。


とても今では手に入らない日常で。


私が望んだ世界がそこにはあった。


手を伸ばしてみても絶対に届かず段々と離れていく。


記憶の底に沈みゆく世界ゆめを見つめながら、元の世界げんじつにのぼっていく。




*********






目覚めたらベットの上であった。


どうやら誰かに運びこまれたらしい。上半身を起こしあたりを見渡す。どうやら私自身の家のようだ。ただひとつ違うのは、人が居ることだ。片翼の桃色髪の天人族エンジェルと黒髪の暗殺者衣装の人。天人族エンジェルが起きた私に気付いたようで、


「………あ、起きた?体は大丈夫?派手にぶつかっちゃったみたいだから心配で。」

「大丈夫です。ちょっと頭がぼーっとするくらいだけど。」

「所でここ君の家?まあ………あたりには一軒しかなかったけど。」

「はい、確かにここは私の家であってます。」


といいつつ私は、ベットの近くにある植木鉢の葉を1枚もぎ取り、口に含む。一口噛むと清涼感が口の中に膨れ上がる。清涼感のお陰で頭がすっきりする。


「草食べるなんて、やっぱ頭打った?大丈夫?」

「大丈夫です。これ清涼の草ハーブですから。」

「あそう?ならよかった。」

「………大丈夫?と問うのはむしろイリス、お主の方だが。。」


黒髪暗殺者が喋りだした。中性的な冷たい言葉だった。


「ンン………コホン。それは大丈夫‼」


………頭から血が滴ってるんですが。平然とした態度で私に接している。それでも私はおもむろにベットの上を叩き、


「ちょっと見せてください。私薬学を嗜んでいるので治療出来ますのよ?独学の技術ですけど。」


天人族エンジェルの頭を見たところ、かいコブと皮膚が切れて血が出ていた。私は近くの棚から黄緑色の液体の小瓶と綿を取りだし綿を液体につけそれを患部につける。


「………⁉ぃいぎゃぁぁぁあああっ‼‼」


天人族エンジェルの軽快な悲鳴をあげて頭を押さえながらベットの上でもがく。


「………に、家まで運んだのに、なんて仕打ち………!!!恐ろしい娘………。」

「よく効くお薬はよく痛むんですよー。」


クスクス笑いながら黄緑の液体を、元に戻す。………ちょっと待って何か引っかかる。?黒髪暗殺者が言っていた?まさか。


「空からぶつかった人って、貴女?」

「はいそうですあたしですごめんなさい。」


悶えていた天人族エンジェルは早々にベッド上で土下座した。私は既に傷が癒えた患部を叩く。


「これで許します。」

「ありがとうございます。靈人族エルフ様。」

「あの、靈人族エルフなんてやめてくださいその言葉は好きじゃないんので名前で呼んでください。私はユルティラ。ユルティラという名前ですので。」


私は靈人族エルフという言葉はあまり好きではない。霊長類最強だとか心理を探究する知欲の塊というのが嫌いな訳ではない。靈人族エルフは同族内での嫌悪が激しいのが嫌いなのだ。純潔種は尊重されその他は見下され、住みよい土地や浄化した土地を奪い、他種靈人族は環境の悪い土地へ追い出された。

私の種族系列、樹木靈人ドリアードエルフの一族も追放され、今では樹木靈人ドリアードエルフの生き残りは私しかいない。


「まぁ、同族嫌悪はよくあることだよ。私もその口だからね。」


天人族エンジェルも共感している。彼女いわく、片翼天使は珍しいのだが天人族エンジェルは翼の枚数で身分が変わるらしい。


「ほら私、1枚しかないから。あはは。」


天人族エンジェルは頬をぽりぽりかいていた。


「さて、心気くさい話はこれくらいにして、ユルティラちゃん。君にとっておきのいい話がある。」


急に真面目な顔になり、私を見据え、


「あたし達の旅のお供にならないかい?」


「あたしは、この世界の驚きを探す冒険者なんだ。だからさ、ユルティラ、君も一緒に驚きを探しに行かないかい?」

その話は、この生活をすてこの天人族エンジェルと共に旅をして世界を巡ろうとのこと。

私は、私の軛を放そうとする彼女に、何故かわからないけどなんの躊躇もなく。



「………一緒に旅をさせてください‼」



私の返答を聞くと。


「じゃあ、決まり‼さてさて、新しい旅を始めようか‼」




「あたしの名前は、イリス。この驚きの旅を指揮する指導者だ‼そこにいる彼女は他人族アナザー、ミスト。これからよろしく、ユルティラ‼」

「………我が名はミストだ。………よろしくつかまつる。ユルティラ殿。」




こうして靈人族エルフのユルティラは天人族エンジェルのイリス、他人族アナザーのミストと共に、世界をめぐる旅が始まろうとしていた。






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ソウルバルドン 平菖蒲 @Hira_Asami

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