君とテレキャスター

@she_58

第1話 ある夏のこと

一目惚れだった。


完全に。


スポットライトの光の中で

黒いテレキャスターを弾きながら歌うあなたを

私は一瞬で好きになった。


眩しくて


苦しくて


こんなの初めてで


ベースのビートやバスドラムに共鳴するように

私の鼓動はうるさかった。


....


はじまりは高校1年生の6月。


その日は高校での初めての定期試験である中間テストの最終日だった。


風見 桃子かさみ ももこは 最後の試験科目である数学を終え、自分の席で帰り支度をしていた。


「桃子〜帰ろう〜」


そう言いながらぽんっと桃子の肩を叩いたのは木下 きのした はな


桃子の中学からの友人で同じクラス。


整った顔に優秀な成績。

完璧そうに見えて結構さばさばした性格。

桃子にとっては頼れる姉の様な存在。


肩にかかるくらいのダークブラウンの髪は、最近パーマをかけたらしく華にとてもよく似合っている。


1つ動作をするたびにふわふわと揺れていた。


「はなぁぁテストおわったねつかれたねぇ」


桃子は華を見るなり、席に座ったまま勢いよく抱きつく。


中学からの変わらない習慣。

こうするとすごく落ち着くのだ。


「はいはい、良いから早く支度しなされ」


華は呆れ顔で桃子の頭をぽんぽん叩く。



「あれ、華いい匂いするね、なんかつけてるの?」


「あ、わかる?」


華は桃子から離れると、いま流行りの黒いリュックの中からポーチを取り出し、その中をがさごそと何か探している。


「最近買ったんだ〜ずっと探してて。これこれ」


ポーチから出てきたのは、オレンジ色のボディミストだった。


そういえば桃子も雑誌などで見たことがあった。


香水まではきつくなく、気軽に香りを纏うことができると女子の間で人気なのだ。


華のはシトラスの香りだろう。

爽やかで美味しそうな香り。


美味しそう…


「華…お腹空いてきた」


「…shell行こっか」




❁❁❁


クッキーセットひとつ。

桃子はオレンジジュース。

華はホットミルクティ。


ここに来た時のお決まりの注文。


shellは高校の近くにある小さな喫茶店。

地元の夫婦二人で営んでいて





















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