誰も知らない少年

立川てまき

第1話 始まり

 誰もがこれからの中学校生活のことに思いを馳せながら桜の咲く校門を通る。そのなかには少年もいた。少年はごくごく普通の少年だった。年相応に未来に希望を抱き、心踊らせるよくいる一般的なあどけない少年。友達もいないことはなかった。ただ少々天然が入っているせいで人からちょっとおかしな子と思われていた。まあ、少年はその事を気になどしていなかった。それよりも友達と見たアニメなどの話をするのに忙しくて、聞こえていないぐらいである。そんな少年だからこそ、中学生になったというだけでちょっと大人になった気がして、どきどきしていた。これはそんな少年の人生の一部の物語。


「なんで。なんで、入学式の日からもうこの道を歩かないといけないんだよ。どうせ、母さんも入学式に来るんだから車で送って行ってくれてもいいのに。大体、化粧にどれだけ時間がかかるんだよ。はー、坂がきついどれだけあるのこれ。まさに大人への一歩だな。大人ってきびしー。」と俺はぶつぶつ文句を言いながら今日から通い始める中学校に向かっていた。

「なにぶつぶつ言ってるんだよ。端から見ると怖いぞお前。」

いきなり背後から声をかけられ俺は驚いた。俺はとっさにその声の主を睨むように見た。

「いきなり真後ろから声をかけんな。怖いだろ。あー、びびった。正直、十年くらい寿命縮んだかとおもったわ。大体いるんだったらさっさと声をかけろよ。」

声の主は小学校からの仲のいいやつの一人だったの宮崎信也だった。

「周りに人がいることも気にせずぶつぶついってるやつが悪い。そんなのに近づいてたら俺も変人に思われる。」

「へえへえ、そうですね。私がわろうございました。」

そんな話をしながら坂を上っていると急に信也が。

「そういやなにをぶつぶつ呟いてたんだ。」

「いやさ、今日中学校まで車で送ってきてもらうはずだったのになんか準備に手間取ってて自分で歩いて行けって、追い出されたんだよ。」

「そりゃ、ご苦労様。しかし、災難だったな。」

「しかし、これからこの道を毎日通うと思うと気が滅入るわ。まだ初日なのに。」

「おいおい、俺なんかその二倍だぞ。」

「お前はこれから自転車で来るんだろ。今だってお前が押してるそれは一体なんだ。鞄を運ぶ用の荷車か、カートかなんかか?」

「何むきになってんだよ。」

「うらやましいだけ。」

「おいおい自転車だってしんどいんだぞ。」

話が終わる頃には生徒玄関の前に着いていた。俺は信也と別れて教室に向かった。

 地元の三つの小学校から来ているとはいえ、やっぱり島の田舎なだけあって、人少ねー。と思ってたら、クラスの発表の紙を見て驚いたなんとクラスに信也もいたから、だってさ、よくよく考えたら信也とクラス一緒になるの初めてじゃない。何て思いながら自分の席に荷物を置いて、一緒のクラスになった同じ小学校出身のやつらととりとめのない話で盛り上がった。途中からは信也も入って話をしていると担任の先生らしき人が来た。なにか話していたけどあまり聞き取れなくて取り敢えず周りのやつらに合わせた。その後入学式が無事終わり、クラスで自己紹介の時間となって、俺の順番が回って来た。俺はテンプレートに

「みなさん初めまして、といっても知ってる人も何人かいるのですが、市山小学校から来ました川西正平です。好きな食べ物はオムライスで嫌いな食べ物はありません。」っていう感じのことを言った。

 全員の自己紹介が終わり、ホームルームも後もう少しで終わるというとき俺は窓の外の景色を眺めて、勉強ついていけるかな~みたいなことをぼんやりと考えていた。このときの俺はまだ呑気なものだった。すでに底無し沼に片足を取られているとも知らずに。




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誰も知らない少年 立川てまき @Robotto1

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