第7話

どうやら、俊樹君も両親の死に納得がいっていなかったらしく、彼らの軌跡を辿りたいということだった。確かに子供は行動範囲が限られているのかもしれない。この一ヶ月でその作業を片付けてしまおう、ということだった。

 私は親類と言えど少し遠いので、二人の手記を見るのは他人の脳みそを覗くようないたたまれなさがあった。だから、ルールを決めた。

・危険な所には一人で行かない。

・見せたい部分があったときは、俊樹君が見せる。私は見ない。

・極力仕事の邪魔になるようなことはしない。

これを守れば何をしてもいいと言うと、彼の目はまた大人びた光をはなった。

「やっぱり僕には興味がないんだね。安心した。」

そう言うとそそくさと布団を敷き、手記を開き始めた。体調を崩さない程度にと忠告すると、そうだねと作ったような笑顔を向ける俊樹君に少し不気味さすら感じた。

展示会に出す油絵を少しすすめようと筆を持ったら、意外にも熱中していたようで00:00を回ってしまっていた。若い頃ならばなんら問題はなかったが、最近気になる肌のたるみのためにしっかりとケアをしてベッドルームに移った。ちらっと客間を見ると、まだ電気の光が漏れていた。

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半月 @momotarouz

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