第6話

それから私達はコペンを走らせ、適当なショッピングセンターに入った。

俊樹君は下着をいくつかと、か細い腕で持ち上げていることが信じられないくらいの衣料をカゴに勢いよく詰め込むと私にアイコンタクトをしてレジへ向かった。

お会計を済ますと俊樹君はサッと紙袋を持った。小さな紳士の産まれたての子鹿のような震える腕を見ながら初めて俊樹君に対する母性が生まれるのを感じた。

家に着き、買った衣類のタグを切り洗濯をしている間に俊樹君はゆっくりと話し出した。

俊樹君が持ってきていた荷物はどうやら彼の両親ー即ち隆にぃとその奥さんの手記・その他持ち物だった。

 亡くなった両親の手記が気になる気持ちもわからなくはない。しかし、俊樹君の着眼点は親を亡くし、哀しみによるそれとは違うようにみえた。

「琴音さん、一緒に謎を解き明かそうね。」

そう言って笑う彼の口もとはとても妖艶だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る