第2話 ロマネスタウンと鏡の塔の試練

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サーシャ・マクウェルド 雌 クマ 47歳


レオとマオとナナミの3人は、休みながらも1歩づつ進んでいった。

30分歩いてようやく町が見えてきた。


「あれが『ロマネスタウン』かな?」


マオは指差した。


「そうだと思うけどね。」

「あと少しだからがんばりましょう。」


そしてさらに10分歩き、ようやく『ロマネスタウン』の城門にたどり着いた。


「うわぁ・・すごい大きいなぁー」


レオは下から上まで見上げた。


「あ、そうだ。レオ君にナナミちゃん。僕ね、ここに住んでいるおばちゃんに用があるんだけど、一緒に来てくれる?」


レオとナナミは頷いた。


「ありがとうー」


そして3人は中に入った。

中に入ると、まず市場になっていた。

3人は歩きながら活気あふれる市場を見た。

色とりどりの果物や野菜、魚、アクセサリー、等いろんなものが売られていた。

マオは途中、道を聞きながらおばさんが住んでいる場所に向かった。


「マオ君はここに来たことあるの?」


ナナミは聞いた。


「僕がまだ小さかった頃、買い物や配達でお母さんと一緒に行ったことあるけど、最近は来てないなー」


マオは頷きながら言った。

市場から離れると、そこから宿泊街を抜けて居住区に到着した。

そしてマオは家の屋根の色を確認しながら歩き出した。


「んーとー・・・赤じゃない・・青じゃない・・黄色じゃない・・・水色・・・緑・・・・あ、ここだー」


マオは緑色の屋根の家の前で立ち止まると、そこの家の呼び鈴を押した。

すると、体格がふくよかな熊の獣人が出てきた。


「あら!マオ君じゃないのー!?元気にしてたかい?一人できたのかい?お母さんは??」

「僕とお友だちだけだよーサーシャおばさんー」


サーシャは後ろにいるレオとナナミを見た。


「一体どうしたんだい??」

「実はねー・・」


マオは今までの経緯を説明した。


「カウ・・またあいつか・・・懲りない奴だねぇ・・・しかも女に手を上げるなんて言語道断!男として最低だわ!!」


今までの経緯を聞いてサーシャは怒った。


「そしてあたしのとこに来るようお母さんは言ってたのね。」

「うん・・・」

「大丈夫。マオ君は悪くないわよ。悪いのはあなたのお父さんなんだから。さぁ、長旅で疲れたでしょ?お友達も立ち話はなんだから中に入ってちょうだい。」


サーシャおばさんに家に入れてもらった。


「僕、レオって言います。」

「私、ナナミです。よろしくお願いします。」

「レオ君にナナミちゃんね。長旅で疲れたでしょう?今日はうちに泊まってきなさい。」


サーシャはあえて二人の両親のことは触れなかった。

そして一人一人部屋に案内した。

レオとマオは荷物を。ナナミは魔法の杖をベッドに置いて一息ついた。

その晩は、ごちそうをふるまってくれた。

3人はおなかが膨れるまで食べて満足した。


「「「ごちそうさまでしたー!」」」


サーシャが笑顔で食べ終わったお皿を片付けて流し場に持っていった。

ナナミもテーブルの上に残ったお皿を持っていった。


「あらーありがとう。」

「おばさん、私もお手伝いしていいですか?」

「あら、食べたばっかりなのにいいのかい?おばさん助かっちゃうわ。」


そして2人で皿を洗った。


「あなた・・ナナミちゃんだっけ?よかったらお話聞かせてほしいなぁ。」


ナナミは暗い表情になったが、意を決して自分がいままで『エバラスタウン』で奴隷のような暮らしをして、『シェリル』という仲間と一緒に抜け出してきたことを話した。

サーシャは洗い物の手が止まった。そしてナナミに抱きついた。


「大変だったねぇ・・もう大丈夫だよ!」

「お、おばさん・・」


心配してくれてナナミは涙が出て泣き出した。

サーシャはナナミの頭をなでて落ち着くのを待った。




一方、レオとマオは沸かしてくれたお風呂に入っていた。


「ふぅ・・」

「気持ちいいね。」

「そうだねー」


レオはふとマオのおなかに手が触れたので、軽く揉んでみた。


「ひゃぁあ!レ、レオ君、やめてよ・・」

「ごめんごめん。」

「もう・・」


マオはため息をついた。


それから3人は忙しい日々を送った。

まず1日目

1日目はサーシャおばさんの手伝いとして洗濯に買い物を手伝った。

2日目からはレオとマオは子供たちに混じって訓練所で力をつけ、

ナナミは魔術教習所で魔法の使い方・魔法道具・呪文を朝から夕方になるまで勉強した。

訓練所では、レオは素早い攻撃、マオは遅いけど重い攻撃を得意とすることがわかった。

ナナミも勉強をしていく中で、風の魔法と治癒魔法が得意であるとわかった。


そして9日目の夜、夕食の時だった。


「みんなどうだい?だいぶ力つけてきたかい?」


サーシャは3人に聞いた。


「僕は大丈夫です!」

「大変だけど強くなってきたと思うー」

「私も多少の魔法は覚えました!」


サーシャはその3人の言葉を聞いて頷いた。


「そうかいそうかい・・・じゃあがんばってる3人に、おばさんの昔話でもしてあげようかね?」


そう言うと、サーシャは立ち上がって自分の部屋に向かった。

そして地図のようなものと、色あせた茶色のバンダナを持ってきて、テーブルに置いた。


「あたしがそうさねぇ・・・・20代のころかな?あたしも仲間と一緒に旅をしてたことがあったねぇ・・懐かしいなぁ・・・あいつら何やってるかな・・・?・・・ああ、ごめんね。話を続けるよ。えーとレオ君はどこから来たんだっけ?」


「ぼくは『カラハスタウン』からです。」


「『カラハスタウン』かー行った行った。気候暑いの苦手だったなーおばさん、汗っかきだからさ。あはははは!」


サーシャは笑った。


「『ファインタウン』の『ファイン牧場』の『ファインミルク』には驚かされたねー本当にあれを飲んだらファインファイン。元気になっちゃうもの!」


それから話はさらに続いた。冒険の最中に仲間と楽しかったことに辛かった事、お宝の事にモンスターの事・・・3人の知らなかった話しは3人にとって、とても興味があった。

気づいた頃には、夜が明けようとしていた。


「・・あらやだ!おばさんったら話しすぎちゃったわ。ごめんね。眠たかったでしょ?」

「そんなことないです!」

「ぼく、おばさんの話とても好きだよー」

「私もとてもおもしろかったです!」

「そうかいーありがとうねー」


サーシャは3人を抱き寄せて頭を撫でた。


そんな話をしながら、1ヶ月経った。

サーシャはある決心をした。


「あんた達もだいぶ強くなってきたのがわかったから、ちょっとおばさんについておいで。」


サーシャは3人を連れてまず『ロマネスタウン』を出た。

そして『ロマネスタウン』から10分歩いたところに森林があったので、またさらに歩いた。

さらに10分後・・・

鏡でできた塔が現れた。


「わぁ・・きれい・・・」


ナナミは塔を見渡しながら言った。

サーシャは黙って中に入っていった。


塔の中は少しだけ薄暗かった。

壁や床、天井全てに至るまで鏡でできていた。

そしてサーシャは足を止めると、そこに大きな3枚の鏡があった。

3枚の縁には赤、青、緑色と3枚とも違っていた。


「この鏡には中に入ることができる。あんたたちにはこれからこの鏡の中でさらに腕を磨いてほしい。そう、それとね・・もし負けるなんてことになったら・・・」


サーシャは言いよどんだ。

この子達を危険に曝してまで試すものなのか・・・


「・・・鏡が割れて閉じ込められてしまうのさ・・・。」


3人はごくっと息を呑んだ。


「・・・ぼ、僕は・・やってみせるさ!」


そう言うと、レオは赤い縁の鏡の前に立った。


「ぼ、僕だって・・!」


マオは青い縁の鏡に


「これ以上・・足手まといは嫌なんです!」


ナナミは緑の縁の鏡の前に立った。


「あんたたち・・・」


サーシャは3人の足が震えているのを見て不安になった。


「じゃあ・・鏡に手を触れて・・・。」


3人がそれぞれ鏡に手を触れると、鏡が光りだした。


「光ったら中に入れるようになる・・だけど待って・・・おばさんにあんたたちを抱きしめさせてくれ・・・!」


3人はサーシャに飛び込んだ。

サーシャは涙を堪えるのに必死だった。

3人は離れると、各々の鏡の中に入っていった。

サーシャは3人を見送るとため息をついた。

すると走ってくる音が聞こえ、目の前に現れたのはあのシェリルだった。


「あら!?シェリル!!?」

「おばさん、久しぶり・・・と言いたい所だけどもしかして、鏡の試練をやっちまってるか??」

「ええ・・」

「まずいなぁ・・」

「どういうこと?」

「ちょっと外に来てみてくれよ。」


二人が外に出ると、モンスター達の大群がこっちに向かってきていた!


「あらあら・・困ったわね・・・」

「そう言いつつもおばさん、背中に剣・・しょってるんだろ?」

「あら、バレちゃったかしら?」


サーシャは背中から大剣を取り出して構えた。

シェリルは2本の剣を構えた。


「一応ロマネスタウンのギルドには応援を頼んでるけどそれまでは・・・」

「この塔には誰も入れさせないようにしなきゃね・・」


二人は塔の入り口を閉めて大群に備えた・・・





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◇青い縁の鏡

マオ編

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真っ暗闇の中、不安な表情でひたすら前に進むと、急に視界が開けた。


「え!!?ここは・・僕の故郷!!?」


なんと、『ファインタウン』に来てしまった!

マオは夢なのかと頬をつねった。

しかし、痛い。目が覚めない。

現実であった。

すると、町の人が通ったので声をかけてみた。

しかし、反応はないうえに睨み返してきた。


(おかしいなぁ・・・)


今度は屋台のおばさんに声をかけてみた。

しかし、ちらっと見るだけで忙しそうにしていた。


(屋台のおばさん・・いつも僕に優しいのになんでだろう・・?)


マオにはわからなかった。


「そうだ・・牧場に行ってみよう。」


マオはとりあえず『ファイン牧場』に向かった。

『ファイン牧場』に到着して彼は真っ先に2階建ての家に入った。


「お母さん!」


マオは1階の階段の近くの部屋のドアを開けた。

しかし、その部屋はとても乱雑していた。

まるで倉庫のようだった。


(おかしいな・・ここが母さんの部屋だったはず・・)


マオは次にリビングに向かった。

そこに、母親はいた。


「母さん!」


無事なのかは彼には考えなかった。

とにかく抱きつきたい一心だった。

母親はゆっくり振り向いた。

首にはまるで犬を飼う首輪みたいなものをつけていた。


「あら・・?どちらさまですか?」


マオは抱きつくのをやめた。


「僕だよ!マオだよ母さん!!」

「あなた・・・マオ君と言うのね・・残念だけど私はあなたの母親じゃないですよ。」


母親らしき人は笑顔で答えた。

マオは愕然とした。


「なんだこのガキはホルス?」


マオの大嫌いな父親だ。


「近所の子どもが遊びにきたんですよ。」

「けっ・・・ん?」


すると、カウはマオを覗き込んできた。


「お前は・・・・・」


マオはまさか、自分のことがわかるのか期待した。


「思い出したぞ・・・お前はあの時の・・・!!!」


すると血相を変えてマオの胸倉を掴むと、外に放り出した。


「あなた!!?なんてことを・・」

「うるせぇ!!!」


カウはホルスを殴った。

マオはあの時の光景を思い出してしまい、恐怖に陥った。

カウは拳を鳴らしてマオのところにゆっくり向かってきた。

マオは逃げ出したかった。

しかし、足が言うことを利かない。


「お前みたいなガキを見るとムカムカするんだ・・・・」


カウは拳を振り上げた。

マオは目をつぶって自分に


(逃げるな・・逃げるな・・逃げるな・・!!)


「よ!!!!!」


と言い聞かせ、目を見開くとカウの拳を両手で受け止めた。


「・・・ほう?俺の拳を受けるなんて・・なかなかやるじゃねぇか!」


すかさずカウは攻撃を続けた。

マオは一つ一つ防御していった。


(・・・見える!あの時訓練所でひたすら稽古をしてきたかいがあった!)


マオにとって彼の拳は、力はあるが遅く感じた。

何度か受けてるうちに、彼のスピードが鈍くなってきたのを感じたので、


「ここだ!!」


と思うタイミングで拳を左手で受け止めると、右手で力をこめて彼の腹に当てた!


「ぐぅ・・!!?」


彼は一歩後ろによろけた。

マオはその瞬間を見逃さなかった。


「母さんを・・・!!!」


今ここにいるのは母親じゃないかもしれないが

あの時の光景を思い出すと、だんだんと母親を守りたい力が出てきた。

そして彼の腹に何度も自分の拳を加えた。

その一手ごとにだんだん力が加わってきた。


「いじめるなぁ!!!!!!!!!!!!」


マオの最後の拳は彼のあごに当たり、彼は宙を浮いて倒れた。

マオは荒くなった息をゆっくり整えていた。

すると彼はゆっくりと起き上がった。


「・・・強くなったな・・・。」


するとカウは倒れ、急に視界が暗くなった。






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◇緑の縁の鏡

ナナミ編

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ナナミは手探りしながら暗闇の中を歩いていった。

一人で心もとないが、手元の杖を持っていると少し落ち着いた。

さらに歩くと、視界がひらけた。

しかし出た場所は、ナナミが一番来たくなかった『エバラスタウン』だった!

脱出前の記憶が甦り、ナナミは足が震えた。

すると、門が開いてこちらに向かってくる何者かがやってきた。

ナナミは杖を構えて様子を伺った。

何者かはフードを顔ごとすっぽり隠していた。

立ち止まったと思ったら、急にナイフを取り出して投げてきた!


「きた・・!か、風の壁ウインドウォール!!

水晶が薄緑色に輝き、ナイフを弾き飛ばした。


「からの・・・風の壁前方押し出しプッシュウォール!!」


風で作っていた壁を何者かにぶつけた。

この壁には殺傷能力はない。

この風でフードがめくれた!


「しぇ・・シェリルさん!!?」


シェリルはフードを隠そうとしたが、遅かった。


「バレちまったか・・わりぃナナミ・・」

「ど、どうしてですか!?どうして・・・?」

「感動の再会ってわけか?」


シェリルの後ろから、ナナミをいたぶっていたワニの獣人が現れて

恐怖に陥った。


「どけっ、てめぇは邪魔だ。」


ワニの獣人はシェリルを蹴り飛ばして前に出て、長いムチを取り出した。


「逃げ出したらどうなるか・・わかってるんだろうな???」


ワニの獣人は長いムチを使ってナナミが握っている杖に巻きつけた。

ナナミは取られまいと抵抗したが、雄の獣人に力で敵うはずはなく、杖を取られてしまった。


「くっくっく・・・」


すると、ワニの獣人は何かを詠唱しだした。

ナナミは懐からもうひとつ、水晶がない杖を取り出した。


「ふん!!」


ワニの獣人は杖を天に掲げると、空が暗くなった。

そして、雷をナナミに落とした!!


「きゃあぁぁぁ!!」


全身が焼けてしまうのではないかという痛みが襲った。


「お、おい!あいつは殺さない約束だろ!!?」

「知らんな??裏切り者にはこのぐらいしないとな!!」


ナナミは倒れこんだ。

立ち上がろうとするが、体中に電気が走って立ち上がることができなかった。

感電しているためである。

ナナミは何度も立ち上がろうとした。しかし、体を起こすどころか、顔も上げられなかった。

そんなナナミの前にワニの獣人が立った。

そして頭を踏みつけた!


「ガキだからといって遠慮しねぇぞコラァ!!!」


そして何度も踏みつけた!

ナナミは何も言えなくなっていた。


「や、やめろ!!!!」


シェリルは何か液体みたいなものをワニの獣人に投げつけ、ナナミにも液体がかかった。


「あ?なんだてめぇ・・・?」


ワニの獣人はナナミの頭を踏みつけるのをやめて後ろを向いた。

すると、ナナミはゆっくり顔を上げることができたどころか、

痛みが消えていって体を自由に動かせた。


「許さない・・あなたみたいな獣人ひとがいるから・・・!!」


ナナミは怒りに燃えていた。


「なまい・・あちぃ!!!??」


ワニの獣人が持っている杖が高熱を発して落とした!

ナナミはこれを拾うと、詠唱をしてワニの獣人の腹に杖の水晶をあててこう言った。


風の・・弾丸ウインド・・バレット!!!」


水晶が濃い緑色に発光して、ワニの獣人の腹に風の弾丸を当てた!

ワニの獣人はその場から吹っ飛んで倒れた。

注意しながら見に行くと、ワニの獣人の腹がへこんでいて、口から血を流していた。

ナナミは立てなくなり、膝を地面につけた。

すると、そのまま意識を失った。






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◇鏡の塔前

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「たぁーーー!!!」

「はい!!!!」


サーシャとシェリルはモンスター達と攻防していた。


「たくっ・・キリがないねぇ・・おばさんだってキツイよ・・・」

「くそっ・・・」


2人は息が荒くなっていた。


「これで200匹目よ??」

「あたいも200匹目だ・・・」


2人は400匹も倒したが、まだまだモンスター達は減る気配がなかった。


「鏡の塔には、あの子達が必死になってるんだ・・!抜かせないよ!!!」


すると、近くのモンスターが弾け跳んだ。

後ろを振り向くと、多数の獣人が武器を持って駆けつけた!


「遅くなりました!!助太刀します!!鏡の塔には誰かいますか?」

「今、3人いるんだ!試練の最中!!」

「わかりました!おい!みんなで鏡の塔を守るぞ!!誰一人入れるな!!!」


二人とギルドが合流して、防衛戦を展開した。






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◇赤い縁の鏡

レオ編

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レオが目を覚ますと、『カラハスタウン』の門前に立っていた。

しかし、様子がおかしい・・・

周りを見渡すと、荒廃と化していた。

レオは辺りを見渡しながら歩いていった。

すると、花屋があった・・らしきところがあったが、お店がつぶれていて

どうなっているのかがわからなかった。

そしてさらに歩いていくと、レオがいつも昼寝するために使っていた

木があったところに、見覚えのある後姿があった。


「もしかして・・・ララか?」


振り向くとたしかにララだったが、何か様子がおかしかった。


「レオ・・くん?遅いよ・・・遅すぎて・・・」


ララの手元には、ライガ(レオの父親)の剣が握られていた。

所々、血痕がついていた。


「み~んな・・じゃない!!!!」


ララは走ってきて剣を振り回した!

レオは剣を出して盾を構えた。

振り回す剣を盾で全部受け止めて、攻撃のチャンスをうかがった。


「守ってばっか・・いんじゃねぇよ!!!!」


ララの力が強くなってきた!

普段ララはこんな暴言を言わないので驚いてしまった。

そして今度は剣で弾くことにした。

すると、二人の剣はそれぞれ弾け飛んでしまった!

ララは戦闘姿勢ファイティングポーズを構え、向かってきた。

レオは盾を置いて応戦した。

実はララもレオと同じ、レオの父親と稽古をしていて

腕前もレオと同等だった。

攻防の末、レオはララのお腹に一撃を与えることができ、うずくませた。


「はぁ・・ひゅぁ・・・!」


ララは荒々しく息を吐いた。


「いったいどうしたんだよラr・・!!?」


するとララが急に立ち上がり、レオの股間を蹴り上げた!!

体は鍛えていても、ここだけは絶対鍛えられない場所であり、

激痛でうずくまってしまった。


「へっ、油断してんじゃねぇよ!!」


それから痛みが治まるまで、うずくまっていることしかできず、

何度も蹴られてしまった。


「こんなの・・ララじゃない・・・お前は・・・お前は誰だ!!?」


ララは攻撃をやめた。


「俺か?いずれわかるさ。」


そしてそのまま気を失った。






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◇合流

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一番先に気がついたのは、マオだった。

振り向くと、元の場所に戻っていた。

それから鏡の前で倒れているナナミとレオを起こした。


「レオ君、ナナミちゃん、大丈夫・・?」

「う・・うーん・・・」

「うん・・・大丈夫かな?」


「あんた達!!?大丈夫!!?」


すると、サーシャが走ってきた。

3人はのろのろと起き上がった。


「ああ・・心配したんだ・・ぜ?」


その言葉に3人は違和感を覚えた。


「「「ぜ??」」」


「(あっヤバ・・!)あ、あはは。何言ってんだろうね。私みたいなのが・・・」


3人は武器を構えた。


「ちょ、ちょっと・・どうしたのよ・・?武器なんて出して・・?危ないからしまって??」


サーシャは後ずさりした。


「じゃあおばさん、聞きたいことあるんだけど?」


マオが少し前に出た。


「ん~?どうしたの?」

「僕の名前は?」

「やだなーおばさんが忘れるわけないじゃない!えーとあなたは・・でしょ?」


3人は確信した。

そう感じると、ナナミは風の魔法でサーシャ?を風の渦に閉じ込めた。


「マオ君!」「レオ君!」


2人は合図して持っていた武器で一閃に切りつけた!

ナナミは風の渦を解くと、サーシャ?は悪魔に変わっていた!


「おのれガキ共が・・・!!!ギャアァァァァ!!!!!!!!」


悪魔は断末魔を上げて消えていった。

3人はハイタッチして喜んだ。

改めて手元に持ってる武器を確認した。

レオの剣は鉄製のものから、クリスタルに変わっていて綺麗になっていた。

マオはいつの間にか両刃の斧を持っていた。

ナナミの杖は水晶の玉が少し大きくなっていた。

すると、大勢の足音が聞こえたので構えると、

たくさんの獣人とサーシャがやってきた。


「あんたたち、大丈夫かい!!?」


サーシャは心配した。


「待って、本物??」

「何言ってるんだいマオ、本物以外に何がいるんだい??」


3人はサーシャの偽者について話した。


「くっ、真似悪魔が我々の眼をすり抜けて中にいたとは・・不覚だった・・・」

「でもあんたたちやるじゃないか!!どうやって見破ったんだい??」

「僕の名前を聞いてみたんだよ。案の定、間違えてたけど。」

「しかしあの真似悪魔を打ち破るとは・・・君たちは将来我々の希望になるな!!どうかな?我々『ギルド』に携わって・・・」

「ギルド長さん、この子達はまだまだですよ。それに早すぎますよ。この子達はもっといろんなところに行って、いろんなことを学んで、どんどん力をつけていかなきゃいけないんですから。気持ちはたしかにわかりますがね?」

「いやはや、失礼した。君たちは次に行くところは決まっているかね?」


3人は見合うと首を振った。


「では、ここから少し遠くなるが、『カスケード村』に行ってみる気はないかね?あそこは君たちのいい経験になるだろう。それに、そこまでは我々が送っていこう。どうかね?」


3人はサーシャを見た。

サーシャは頷いたので、3人も頷いた。


「よし!いいでしょう。今日は疲れたでしょう?今日はゆっくり体の疲れを取るといいでしょう。明日の朝にはサーシャさんの家に迎えに行きますからね。」


「「「よろしくお願いします!!」」」


3人は頭を下げると、周りの獣人たちは拍手をした。


その後、3人はサーシャおばさんと夕食を食べてから

それぞれ、試練がどういうものなのかをみんなに教えた。


「3人とも、よくがんばったね。おばさんなんだか・・涙がでてきちゃったわ・・・」


サーシャは涙をぬぐっていて、それにつられてナナミも涙を流してしまった。


「おばさん・・!」


ナナミはサーシャに抱きついた。


「よしよし・・・」


サーシャはナナミの頭を優しく撫でた。

レオとマオは気まずくなったのか、そそくさと風呂場に逃げていった。


「(あの子達・・わかってるんじゃないの・・・)さぁ、明日でおばさんとは会えなくなっちゃうから、思いっきり泣いたり甘えたりしていいよ。」


ナナミは声を上げて泣き出した。

サーシャはずっと頭を撫で続けた。


一方、お風呂場でもナナミの声は聞こえていて

さらに気まずくなった。


「レオ君・・体は大丈夫?」

「僕は大丈夫だけど・・マオ君は?」

「僕も平気だよ。」

「・・・。」

「・・・。」


沈黙してしまった。


「『カスケード村』、どんなところだろうね?」

「そうだねー」


2人はあれこれと妄想してみた。

しかし、のぼせそうだったので急いで風呂場から出た。


それから、ナナミとサーシャがお風呂に入った。


「・・少しは落ち着いたかい?」

「はい・・ありがとうございます・・」

「いいのよ。私も子供の頃はお母さんに泣きついたんだから。そりゃあ怖かったわよ・・・だって、試練に屈しちゃったら・・・おばさんね、たまに鏡の塔に行ったりしてるんだけどね、割れてる鏡を何枚も見てきたからね・・心配になっちゃったわ・・・私、けっこう鬼でしょ・・?嫌いになっちゃったでしょ?」

「そ、そんなことありません!!おばさんはいつも優しくて、料理も美味しくて、それに・・それに・・・」

また泣き出しそうになったが、ぐっとこらえた。


「お母さんの・・・んです・・」


サーシャはきょとんとした。


「お、おかしいですか??」

「いいや。おかしくはないよ。おかしかったら大笑いしてるから。そういえば、あんたのお母さんって言うのはどこにいるんだい?」

「・・・わかりません。」

「そうかい・・でも、気を落とすんじゃないよ。あんたたちはこれからいろんな場所に行く。この大陸のどこかに、きっとあんたのお母さんもいるさね。」

「はい・・」


サーシャはそっとナナミを抱きしめた。


「また・・この町に3人で戻ってくるんだよ?おばさん・・寂しがりやなんだからね?戻ってきたら・・・あんたたちのお話・・楽しみに待ってるよ。おいしい料理と温かいお風呂とふかふかのベッドを用意して・・待ってるからね・・・」


サーシャは泣くまいと我慢してたが、涙を流してしまった。




翌日・・・

3人は朝食を済ませると、荷物と武器を持ち、玄関に立った。


「忘れ物はないかい?傷薬や薬草とかも大丈夫ね??」

「うん、大丈夫だよー」


サーシャはまた涙がこみ上げてきて後ろを向いて必死にこらえた。


「あんたたち・・最後におばさんの言うこと一つだけ・・聞いて?」


3人は頷いたが、ナナミは感ずいてしまったため、泣きそうになった。


「あんたたちをもう一度だけ・・・抱きしめさせておくれ・・・!」


3人は武器も荷物も置いて、サーシャに抱きついた。

サーシャとナナミが泣いているのを見て、レオもマオも泣き出した。

サーシャが満足すると3人を放した。

名残惜しかったが、3人は荷物と武器を持った。

玄関を開けると、昨日のギルドのメンバーが荷車を用意して待っていた。


「お早うレオ君、マオ君、ナナミちゃん。昨日は眠れたかな?」


3人は頷いた。


「うんうん。いい眼をしている。よし、早速出発しよう。乗ってくれ。」


3人が乗り込むと、荷車は動き出した。

サーシャは、荷車が見えなくなるまで見送った。


「おばさん、大丈夫かい?」


シェリルが後ろからやってきた。


「久々に泣いちまったよ。年かね・・?」

「かもなー」

「もう!おばさんをからかうんじゃありません!」

「へへへ。ごめんごめん。」

「あの子達・・どう?あんたも一緒に行けばよかったじゃない?あなたも『カスケード村』に行くんでしょ?」

「ああ・・だけど俺にはがあるからな・・・」

「・・・・そう。わかったわ。あんたも辛くなったら帰ってくるんだよ?」

「ああ・・わかったよ。」


シェリルも近くにあった荷車に乗ると、動き出して行ってしまった。

サーシャはそれも見送ると、町の上側にある教会に向かった。


「おや?サーシャさんではありませんか。」


神父が驚いた。


「珍しいですね。何かご用ですか?」

「ちょっとばかし、お祈りさせてくれないかい?」


神父はさらに驚いた。

なぜなら彼女は教会に一度も来たことがなかったからだ。


「どうぞどうぞ。開いておりますので。」

「ありがとう。」


サーシャは中に入って、礼拝室にやってきた。

サーシャは巨大な十字架の前でヒザをついて手を組んだ。


(神様・・どうかあの子達が・・・あの子達が無事にまたここに帰ってくるように見守ってあげてください・・・お願いします・・・お願いします・・・・!!)


神父はその後姿を見て、心を痛めた。

神父も彼女の近くに来てお祈りした。


「神父さん・・」

「何かお祈りに来たんでしょう?私も一緒に神様に祈ってもよろしいですか?」


サーシャは頷くと、二人で十字架の前でお祈りを捧げた・・・





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