夢小説 冒険

ロブスト

第1話 旅立ち

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1st Character

レオ・ライオネス 雄 獅子(ライオン) 9歳(後に10歳になる)

砂漠の街、『カラハスタウン』に住む男の子。

カラハスタウンに退屈して、外の世界を夢見る男の子。積極的な性格


ライガ・ライオネス 雄 獅子(ライオン) 45歳

レオの父親。カラハスタウン警護隊隊長を務める。

かつて英雄と呼ばれていたが、その剣の腕前は衰えを知らない。


シェア・ライオネス 雌 獅子(ライオン) 30歳

レオの母親。カラハスタウンで花屋を経営している。

レオの外の世界に行くことを認めていない。


ララ・シャンダイン 雌 獅子(ライオン) 9歳(後に10歳になる)

レオの幼馴染。実はレオに恋心を抱いている優しい女の子。

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ここはカラハスタウン。

カラハスタウンとは、広大な砂漠のど真ん中にある都市である。

砂漠にあるということで、実際に来る人は少ないと思われがちだが、実は外交で来る人が多いため、人は多いのだ。

しかし、カラハスタウンに行くにはがいると言われている。

というのも、カラハスタウン前の砂漠・・カラハス砂漠には、という、砂漠の砂と同じ色をした大きな芋虫みたいな化け物がいるため、飲み込まれたものは生きて戻ってこれないとも言われている。だが、毎回出てくるというわけでもなく、サンドワームが街を襲ったこともないという。

なので、カラハスタウンに行く者や、砂漠を抜ける者は、命がけである。


「レオくーん!」


幼馴染の声がする。

木陰の下で眠っていた男の子、レオはその声で目を覚まして伸びをした。


「またここで寝てたんだね。」


ララはレオの隣に座り込んだ。


「ねぇ、今日は何して遊ぼうか??」

「んーそうだなぁ・・」

「あら、ララちゃんじゃない?」

「あ、レオ君のお母さん!」

「どうしたのお母さん?」

「お昼ご飯のお買い物をしてたのよ。あ、ララちゃんもおうちにいらっしゃい。お昼ご飯ご馳走してあげる。」

「ホント!?あたし、お母さんに言ってくるー!」


ララは駆けていった。


「お母さん、今日のお昼はなんなの?」

「レオの大好きな『サボテンステーキ』よ。」

「やったー!」


レオは喜んで母親についていった。


レオの1日は大体、木陰で眠ってお昼ご飯を食べて、夜に父の武勇伝を聞くのが日課になっていた。


そしてその日の夜、父は彼に語った。


「レオはもう9歳になるのか・・俺が10歳のころはこの街を抜け出していろんなところへ旅に出たものだ。」


そして父親は古い地図をテーブルに広げた。

レオの目は輝いた。


「お前、この街の外に出たいと思うか?」

「ちょ、ちょっと、レオはまだ10歳ですよ!?外に出るなんで危険よ!!?出ている最中に『サンドワーム』にでも遭遇したらどうするんですか!!?」


母親が猛烈に反対した。


「それはレオの決めることだ。もし冒険を始めるなら、明日から警備隊の訓練がある。それに俺と毎日参加するんだ。さぁ、選ぶんだ。」


レオは両親の顔を交互に見た。


「僕・・旅に出たい!!」


迷いはなかった。

父親は頷き、母親はため息をついた。

それから、1年にも及ぶ地獄の鍛錬を重ねた。


そしてレオは10歳を迎え、旅立ちの日を明日に迎えていた夜。

ララに呼び出されて、いつもの遊び場の廃ビルの屋上にいた。そして2人で星を見ていた。


「レオ君、明日・・行っちゃうんだね。」

「うん。」

「そっか・・」

「大丈夫また戻ってくるから。」

「そうだよね・・」


ララは浮かない表情をした。


「じゃあ、僕はそろそろ・・」

「うん。ごめんね。急に呼び出したりして・・」


レオはその場を立ち去ろうとした。


「ぐすっ、やだよ・・レオ君・・・行かないでよぉ・・ひっく・・」


ララが泣いているのが見えた。レオは気まずくなって振り返らないようにして立ち去った。




そして旅立ちの日が来た。

レオは大きなリュックサックに毛布、食器、砥石、薬草の本、ランプ、テント、そして少量の食料と、剣と盾を持って家のドアを開けると、カラハスタウン警護隊が父親と共に立っていた。そしてその脇に、幼馴染のララもいた。


「準備はいいか?」


父親がいつにも増した真剣な表情で尋ねた。


「はい!!」


レオは敬礼した。


「ふむ。よし!カラハスタウン警備隊!!レオをカラハスタウンの門までゆくぞ!!」

「「「「おーーーー!!!!」」」」


父親の一声で、一斉に動き始めた。

その様子を見ようと、たくさんの人が押し掛けてきた。


「10歳でここを出るなんてなんて勇敢な!」

「がんばれよーー!!」

「応援してるわー!」

「体に気を付けるのだぞー!」


と、様々な歓声が飛び交った。

門に到着すると、サンドホース(砂漠を抜けるのに使われる、砂漠という砂地を走るのに適した馬のこと)と呼ばれる馬が待っていた。


「乗り方はわかるな?」

「うん。」


そしてサンドホースにレオは乗り込んだ。


「いいか?サンドワームに出くわしたらすぐに逃げることだけを考えろ。わかったな?」


レオはごくっとつばを飲み込んだ。


「レオ・ライオネス。・・行きます!!!」


そして門が開かれた。レオは馬にムチを入れて出発した。

街のみんなが歓声で送ってくれた。

しかし、父親の表情は浮かない顔だった。


「・・・。おい。念のため、サンドワーム撃退用大砲を持って俺らも行くぞ。支度しろ。」

「は!わかりました。」


父親は警備隊と話し、準備をしに向かった。




一方、レオは周囲を警戒しながら砂漠を走っていた。

すると、若干の揺れを感じた。

レオの血の気がさーっと引いた。嫌な予感がする・・

その揺れは少しづつ大きくなり、砂の中からは少しづつゴゴゴゴゴという何かが近づいてくる音も聞こえてきた。

その瞬間だった!レオの後方500mからサンドワームが姿を現した!

レオは急いで馬にムチを入れて全速力で走った。

しかし、音は遠ざかるどころかどんどん近づいてくる。

近づく音がかなり大きくなってきて、レオの心臓も鼓動が早くなった。

すると、爆発音が響いたと思ったら、サンドワームが断末魔を挙げて倒れてきた。


「大丈夫かーー!!?」


その声は、父だった。

警備隊を連れて馬で走っていた。

すると、今度はその後ろからまたサンドワームが2匹現れた!


「よーく引き連れて・・撃てーーー!!!」


警備隊は、大砲を発射した。

大砲は見事に2匹に命中して倒れた。

レオが安心したのもつかの間、警備隊の後方から1km離れたところから先ほどのサンドワームと違う、黒いサンドワームが現れた!


「なんだあいつは・・・??」


父親は面食らった。


「と、とにかく狙って撃てーー!!」


そして大砲を発砲した。大砲は全弾命中した。

しかし、倒れるどころか、向かってきた!!

そして次の瞬間、警備隊から悲鳴が聞こえた。

どんどん喰われていっているのだ。

レオはその光景が目に焼き付き、恐怖を感じた。

やがて、警備隊は父親を入れて3人まで減ってしまった。

その間も大砲を撃ち続けているが、まったく効果がない。


「レオーー!よく聞け!!もし俺が喰われたとしても絶対止まるな!!」


レオは震え始めてきた。

そしてレオはふと後ろを振り向いた。

すると彼は見た。サンドワームが警備隊2人とともに喰われる父親の姿を・・・


「と、父さん・・・・・」


彼は頭が真っ白になった。

そして・・・・急に暗くなったと思って上を向くと・・・サンドワームが大きな口を開けていた。


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」


彼は目をつぶったが、サンドワームに飲み込まれてしまい、気を失った。






・・・・・・・・・・・・・・・・。

彼が目を覚ますと、そこは暗く、肉の壁が蠢めいていた空間だった。


「死んだんだな・・僕・・・」


そう思うと、両膝を下の肉壁についた。

彼が周りを見渡すと、暗いのだが周りを見ることができた。

警備隊が倒れて動かなくなっていた。


「レオ・・無事か?」


なんと、父親がよろめきながら彼のもとにきた。


「レオ・・すまなかった。この俺が冒険に行けと言ったばかりにこのザマだ。悔やんでも悔やみきれん・・・」


レオは泣いていた。


「けっ、泣くんじゃねぇよ。まぁ、俺も泣きたくなるけどな。」


そうして父親はズボンからたばこを出して火をつけた。


(あなたの冒険はこれで終わりではありません。)


レオははっとした。

そしてリュックを開いて中を確認すると、発光している石があった。


「まさかそれは・・・魔法石か・・!?」


父親は近寄った。


(助かりたいなら、この石を奥に投げ入れたら目をつぶって下さい。)

「レオ、その石をお父さんに貸しなさい。」

「うん。」


レオが父親に発光した石を渡すと、力強く投げた。


「目をつぶれ!!!」


目をつぶった瞬間、ばしゅっと爆発したと思ったら体が宙を浮いた。

しばし宙を浮いたと思ったら、砂の感触で目を覚ました。

そこはいつもの砂漠だった。

周りを見渡すと、近くに父親が倒れているのがわかったので揺すると起きた。


「どうやらお前に助けられたみたいだな・・・」


父親はレオの頭を撫でた。


「お前は何かツイてるのかもしれない。そのを大事にしろよ。」


その後、2人で砂漠を横断して、砂漠の終わりに到着した。

2人は馬から降りた。


「ここからは道なりに行けば『ロマネスタウン』という町に到着する。無事に帰ってこいよ。」


父親は敬礼した。

レオも胸を張って敬礼して父親に背を向けて歩き出した。

父親はそれを見送ると、レオの乗っていた馬に近寄った。


「いつかレオが帰ってくるまでしばらく待っててくれな。」


馬は大きく1回頷いた。

父親は馬に乗って走り出した。






砂漠での砂地じゃない道を歩いてレオは、これから始まるのか・・と思うと楽しみになってきた。

すると、3つある道の左と右の道から初めて会う牛の獣人と兎の獣人がやってきた。


「あれー?君も『ロマネスタウン』に行くの?」

「うん!そうだよ。」

「私も行くところなんです。」

「じゃあ一緒に行こうよ!」

「いいねぇ。」

「行きましょう!よろしくね。」










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2nd Charcter

マオ・ノウン 雄 牛 10歳

『ファインタウン』の中にある『ファイン牧場』で住む白黒のぶち模様がある牛の男の子。

おっとりしていて誰に対しても優しいのだが、

父親に虐待を受けていて抜け出そうと決意する。見かけによらず力持ち。


カウ・ノウン 雄 牛 35歳

『ファイン牧場』の牧場主でマオの父親。

マオのよき父親だったのだが、酒に酔うとマオを虐待してしまう。


ホルス・ノウン 雌 牛 29歳

マオの母親。とても優しくてマオは笑顔が好き。料理が美味しく優しい。

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ファインタウンはのどかな田舎で自然豊かな町である。その町のファイン牧場にもう一人の主人公、マオ・ノウンはいた。

マオは力持ちなことで、重いくわや、10kgもする牛乳タンクを持ち運びできるくらいだ。


「マオは強いなー俺に似たか、ははは。」

「あなたーマオー、ご飯ですよー」

「お、できたか。よーし、いくぞ!」

「うん!」


マオは父親のことを好きだが、半分嫌いだ。


夕食が済んだ夜中、父親はふらっとでかけることが多くなった。

父親は、ギャンブルに夢中だった。

大抵は負けて帰ってくる。たまに勝って大金を持ってくることもあったようだ。

しかし・・・

父親が帰ってきたのは朝方だった。マオが近寄ると、酒臭い臭いを感じた。

マオはとっさに後ずさりした。


「あ?父さんが帰ってきたのに何怯えてんだよ?ああ!!?」


そして拳がマオの頬をえぐった。マオはふっとび、壁にぶつかった。


「と、とうさん・・!!」

「まぁマオ!!何てことするんですか!?」

「うるせぇ!!」


すると今度は母親のお腹に蹴りをいれた。


「うう!」


母親はその場でうずくまった。


「お父さんやめ・・!」


全てを言い終わる前にまた拳が来たので両手で顔を守った。

しかし拳の威力が強く、またマオはふっとんで壁に頭をぶつけた。

そして母親を引きずるように、両親の寝室に引きずり込んだ。


「お前も女ならヤってもよかったんだがな。」


そう言い切ると、強くドアを閉めた。


「あなた!いや、やめて!!」

「うるせえぞ、またぶたれてぇのか!!?」

「ひぃ!」

「おとなしく脱いでおけ!!」


マオは怖くなって牧場のサイロに逃げ込んだ。

ここはマオが落ち着くところでもあった。

マオは仰向けになって手を天井に挙げた。


「弱いな僕・・・こんなんじゃお母さんを守れないよ・・・ううう・・」


そして泣き出した。


その日の夜だった。

マオが寝ていると、体を揺さぶられる感覚がしたので起きた。

目をこすると、ろうそくを持った母親がいた。


「(マオ、このリュックをしょってお母さんと一緒に来なさい。)」

「なん・・」

「(しー。早く、静かにね・・)」


そして母親とともに牧場から抜け出した。

夜中の外は少し肌寒かった。


「いい?この町を出たら『ロマネスタウン』に行って、サーシャおばさんの所に行きなさい。わかったわね?」

「でもお母さんは・・」


その瞬間、マオは凍り付いた。母親の背中越しに見える父親の姿が・・


「どこへ行く気だお前ら・・?」


母親もばっと振り返って同じく凍り付いた。

母親はマオを見ると後ろに突き出した。


「マオ、行きなさい!」

「どういうつもりだホルス?」

「あなたには愛想がつきたわ!」


母親は構えた。


「俺に勝てるとでも思ってるのか?」


父親は拳を鳴らして構え、指で母親をあおった。


「こいよ。負けたらお前を一生こき扱ってやる。」


「行きなさい!!マオーーーーー!!!」


母親は立ち向かっていった。

マオは振り返りつつも走っていった。


両親が見えなくなると、立て看板のある石場で腰を下ろして息を整えた。

気が付くと朝方になっていた。息を切らしながらも、リュックサックを下ろして中を見てみると、水と牛乳とパン、地図、テント、ランタンと3日分の食料・・手紙が入っていた。

『ロマネスタウンに着くまで読まないこと』と書いてあったので、とりあえずほっといて水を飲んだ。

すると、分かれ道3つあるうちの2つから誰かが歩いてくるのを見た。

獅子とウサギの・・マオと同じくらいの子どもだ。


「あれー?君も『ロマネスタウン』に行くの?」

「うん!そうだよ。」

「私も行くところなんです。」

「じゃあ一緒に行こうよ!」

「いいねぇ。」

「行きましょう!よろしくね。」







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3rd Charcter

ナナミ 雌 ウサギ 10歳

とある大魔術師の子どもだが、幼い時に『奴隷』として捕えられ、

『エバラスタウン』で奴隷生活を余儀なくされている。

5歳の時から感情を持たなくなってしまった。

シェリル・ランカ 雌 ウサギ 25歳

同じく『奴隷』として奴隷生活をしている姉貴的な存在。

何度か脱出しようとして失敗しているが、『奴隷』から抜け出そうと常に暗中模索している。

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「おら!きりきり働け!!動け!!!」


何度その怒号を聞いたことか。

ここは『エバラスタウン』にある食品工場。この工場から出ている加工食品は今や誰も知らない人はいない。

しかし有名とは裏腹に、環境は最悪だった。

この『エバラスタウン』は通称と呼ばれていて、奴隷売買は当たり前で奴隷に性別・種族・歳は関係なかった。小さい子で5歳、大きい人で50歳と様々である。男性は工事など体力が必要な場面で、女性だと家庭的なお手伝いさらには、なども請け負っている。

5歳の時にナナミは両親が出たのを見届けたと思ったら、すぐ後ろで待機していた何者かに連れ去られてしまった。どんなに泣き叫んでも何も変わらなかった。他の奴隷と一緒にトラックで『エバラスタウン』に連れていかれ、首輪をされてボロの衣服にさせられた。抵抗しようと試みたがその都度、ワニの獣人がムチでナナミを叩き付けた。5年も経つとと思い込んで奴隷生活を強いられていた。

ナナミは他の奴隷20人と小さい建物で生活していた。

1日の活動としては、朝5時に起床し掃除をして朝6時になる前に、パンを1個だけ済ませてそれぞれの奴隷仕事を行う。その際には必ず見張りがついて、逃げ出したり怠けていたりしないように見張っている。

ナナミは食品加工工場で普通の従業員に混ざって作業を行っている。

10歳になったナナミは、ある日の作業終了時間になるとフラフラと立てなくなり、倒れてしまった。


「お、おい!大丈夫か??」


倒れこんだナナミを抱きかかえたのが、シェリルだった。


「こんなに痩せ細って・・ガキに対しても容赦無しかよ・・」


シェリルは歯をぎりぎりと噛みしめて見張りを睨みつけた。


「あん?なんだその目は??」


シェリルはナナミを抱きかかえると、踵を返して工場を出た。


「あ、あの・・ありがとうございます・・・」

「お前、大丈夫か?」

「あ・・その・・・」

「無理すんなよ。お前は俺が助けてやる。俺は『シェリル・ランカ』。シェリルって呼んでくれ。」

「わたしは・・ナナミ・・・・何だっけ?」


シェリルはずっこけた。


「ナナミだけかよ・・でもいい名前だぜ!」

「ありがとう・・お姉さん。」

「お、お姉さん!?」


シェリルは照れ臭くなった。


「お姉さんか・・」


頬を掻いてナナミが寝泊まりする場所へ送っていった。


「ありがとうございます・・」


ナナミはお辞儀をした。


「いいっていいって。お互い様だからな!」


シェリルは頷いた。


「もうそろそろ寝ておこうか?」

「え?お姉さん、ここなんですか?」

「そうだぜ。気づかなかったか?」

「はい・・」

「ま、しゃーねっか。にしてもお前・・感情ねぇな。」

「感情・・・?」


ナナミは首を傾げた。


「お前、いつからここにいるんだ?」

「・・5歳の時から・・・」

「マジかよ!?ちっ・・」


シェリルは頭を掻いた。


「でも安心しろ、俺が助けてやる!」


シェリルは胸を叩いた。


「はい!」

「じゃ、寝ようぜ。」


そして二人で眠った。




3週間後の夜だった。

ナナミが一人でいると、シェリルが大きな杖を持ってきた。

先端には中ぐらいの水晶玉がついていた。


「見ろよこれ、『魔法の杖』だぜ。」

「どうしたのそれ?」

「へへっ、工場のロッカーに入ってたのを拝借したんだ。」

「大丈夫なの??」

「大丈夫だって、だけど何回もやってるけどなんもでねぇんだ。もしかして俺、才能ねぇのかな。お前もやってみろよ。」


シェリルが杖を渡してくれたが、少し重かった。

そこで何か念じてみると、水晶玉から淡い緑色の光が放たれて風が舞った。


「おー!すげえじゃねぇか!それ、お前にやるよ!」


シェリルは感心した。


そして・・・その日の深夜だった。

揺すられて目を覚ますと、シェリルが横になっていた。そして静かにするように促した。


「(いいか、お前と俺とでここを抜け出すんだ。)」

「(でもどうやって・・?)」


シェリルは顎で隠している杖を示した。


「(でも私・・魔法なんて知らないよ?)」

「(なんでもいい。唱えるだけやってみろ。)」


2人はゆっくり中腰で奴隷たちを踏まないように一歩一歩歩いて行った。

そして扉があった場所は開いていた。その先には周りを見渡している見張りがいた。


「(よし、何か唱えてみろよ)」

「(・・・・眠れ・・!)」


すると、水晶から淡い水色の光が放たれたと思ったら、見張りがあくびをして眠り始めた。

その瞬間を逃さず、二人は走って脱出した。

そして入口の門付近に到着したが、銃を持った二人の見張りがいたので近くの草むらに隠れた。


「ちっ、あと少しなのに・・・」

「もう一回やってみるね・・・眠れ!」


しかし、何も起きなかった。


「あれ??眠れ・・!」


水晶すら光らない。


「なんで・・?さっきは成功したのに?」


ナナミは気づかないうちに息を切らしていた。


「もしかしたらお前の体力も関係していると思うから少し休め。」

「うん・・・」


ナナミは座り込んだ。

シェリルは常に茂みから様子を伺った。


「あーだりぃー」

「まぁそう言うなよ。」

「一発やりてぇな・・」

「お前、あいつは?」

「あ?ミミィは最高の具合だぜ。」

「マジかー俺もヤリてぇぜー」

「ダメだ。俺のだ。」

「ちぇー」

「・・・・・」

「あ?どした?」

「ちょっくらしょんべんしてくるわ。」

「はいはいいてらー」


そう言うと、見張りが一人離れたのに気がついた。


「おい、ナナミ、何か出せるか??」

「・・・・・。眠れ!!!」


すると今度は成功した。どさっと倒れたのを見ると、急いでシェリルは銃と弾を奪って門を少し開けて外に脱出できた!


「走れ!!」


そして『エバラスタウン』が見えなくなるまで走った。

やがて、立て看板があるところに、分かれ道が3つある道にたどり着いた。

いつの間にか夜は明けて朝になっていた。

2人はその場で座り込んで息を整えた。

息が整うや否や、シェリルが立ち上がった。


「ナナミ・・お前と一緒にいれて嬉しかったぜ。」

「え・・?」

「俺はこの先の『ロマネスタウン』に用事があるからここでお別れだ。」

「そ、そんな・・・」


悲しそうな表情をしていたナナミを見て驚いたが、感情が戻ったことにほっとしたのか、すこし後ろ髪ひかれる思いになって複雑だった。

そして答えを出した時、シェリルはナナミを抱きしめていた。


「大丈夫。俺は死なない。いつか必ず会える。」


ナナミは泣き出していた。

シェリルはすぐ離れられずにいたが、意を決して離れて走って『ロマネスタウン』に向かった。

ナナミはその姿を見て涙をぬぐうのに必死だった。

すると、別の分かれ道から獅子と牛の子どもがやってきた。


「あれー?君も『ロマネスタウン』に行くの?」

「うん!そうだよ。」

「私も行くところなんです。」

「じゃあ一緒に行こうよ!」

「いいねぇ。」

「行きましょう!」

「僕はレオ!」

「僕はマオー」

「私は・・ナナミです・・・」

「よろしくね、マオにナナミちゃん!」

「レオ君も・・よろしくね。」

「じゃあ行こー『ロマネスタウン』へ。」

「「「おー!」」」


こうして3人の子ども獣人の冒険の幕が今、開けていった。

これからどんなことが3人に待ち受けているのかわからない。

不安と希望を前に3人の足は、前へ前へ歩き出した。


              第1話 旅立ち END


第2話へ続く・・・

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