ちっく・すいらい

@yamashita

戦艦、駆逐艦、潜水艦

「ちっく・すいらい」と言う言葉を見て、どれぐらいの人々が過去の懐かしい子供時代の男の子の遊びとして思い出すことができるだろうか? 

 この遊びを、誰がいつ何をモデルとして作ったのか、そしてまた、当時、どれぐらいの日本のあちこちに広がっていたのか、私は知らない。

 そのような時代考証的、かつまた文化的疑問はともかくとして、私が小学生の高学年になるまでの数年間、私の住んでいた福岡県八幡市(現在の北九州市八幡東区)の丸山(現在の東丸山)でも一部の子供達の間で盛んに行われていた非常に面白い遊びであった。

 その遊びには、三種類の人々が登場する。つまり、1人目は、「ほんかん」(「前」とも呼ばれ、また、漢字では「本艦」になると思う)で、まさに、2つのチームには1人しか存在せず、判り易く説明すると隊長であり、この隊長が敵から手でタッチされるとそこで勝負がつくのである。

 次は「ちっく」(「横」とも呼ばれる。また、「ちっく」は「駆逐艦」からきているのだろう)で、最後が「すいらい」(「後ろ」とも呼ばれる。漢字では、「水雷」になると思う)である。

 「前」、「横」および「後ろ」と言う呼び方は、帽子の被り方から来ている。つまり、廂を前にするから「前」であり、横にするから「横」であり、後ろにするから「後ろ」なのであり、廂の向きによって相手を識別するのである。

 それから、3者の関係が極めつけの面白さをもっている。つまり、「前」(隊長)が「横」にタッチすると勝ち、相手の帽子を手に入れ、自軍に欠員があれば帽子の数だけ自由に「横」か「後ろ」の兵員を補強できるけれども、「後ろ」からタッチされると前に説明したように、「前」は隊長であるから、それで勝負は終わりである。

 また「横」は、「後ろ」には強いが「前」に弱く、「後ろ」は、「前」には強いが「横」に弱いのである。まさに世に言う三すくみの関係なのである。

「本艦」は1人であるが、「ちっく」と「すいらい」は複数であり、2チームの人数は同じであるが、それぞれのチームの「ちっく」と「すいらい」の振り分けは戦略によって自由であるところがまた面白い。

 それぞれが、2平方メートル位の陣地(人数によって大きさは変動する)を持ち、陣地内では弱肉強食の関係はないが、陣地を一歩でも外に出ると戦闘状態になる。

  弱肉強食の関係は前に説明したように、「前」が「後ろ」にタッチするとそこで勝負は終わりになるのだけれども、「前」が「横」にタッチしたり、「横」が「後ろ」にタッチすると勝者が敗者から帽子を取り上げることができ、さらにタッチした地点が一時的陣地となって3歩まで陣地内の移動と見なされて移動することができる。

 さらにまた、奪った帽子を自軍の敗者に渡して帽子の数だけ自軍の戦闘員を復活させることもできる。

 実際の遊びでは、1時間も2時間も、場合によっては決着がつくまで半日も続くこともあった。

  逃げたり追いかけたりのなかなかの運動能力も必要であり、またタッチしたとかしていないとかでもめることもしばしばだったので、もしも今の子供達にやらせるとするならば、審判員が必要かもしれない。

  過激な遊びではあったが、一緒に遊んでやるための低学年の子供への配慮も持っており、継子(当時、そのようになぜか呼んでいた)、つまり、勝者にもなれなければ敗者にもなれず、とにかく正式の戦闘員と共に行動するのであるが、敵は全く相手にしないため、本人が飽きてよく文句を言ったものであった。

 いずれにしても、非常に懐かしい小さい頃の思い出ではあるが、このゲームの仕組みは良くできていると思う。

 もしも軍国的響きに受け入れ難いものがあれば、名称を変えれば良い。

 勝者も敗者も恒久的なものではなく、一時的なものであり、人間万事塞翁が馬なのである。

 敗者ではないかと考えている諸君!やる気さえあれば、次は勝者ですよ!

 夢を捨てずに、実社会で大きな夢の花を現実の花として咲かせてみませんか?

 また、勝者であると考えている諸君!その「勝者」たるものの中身の小ささや、次の敗者への心構えも考えてみませんか?

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