エピローグ。
終章
つらいとき。
悲しいとき。
いつも文章にぶつけている自分がいた。
コトバは、玉手箱。
つらい気持ちも悲しい気持ちも、ぜんぶ詰め込んで保存できる。
思い通りにならない歯車の中で。
負の感情は何もかも二次元に置き換えて、後は我慢。
それがいいと思っていた。
だけど人間、どんなに表現が巧みでも誤魔化し通せない事はある。
ある日、そこに込められた
周囲への詐り、己への欺瞞、
全てが融け落ちて
「苦しみをコトバに換えるのは、大切なこと。
でも、それを隠し持つ必要はないんだよ。
怖がらないで、見せてごらん。読んでごらん。託してごらん」
そう言って、彼は
もう、逃げるのは嫌だった。
本当はずっと、吐き出す先が欲しかった。
無機物でない相手が。
溢れた泪を受け止めてくれる、手が。
でも、今はそれが傍にいる。
いや。本当はもっと前から、目の前にあったのだ。
そう気づいた時、世界がまた少し、
キモチを伝えるのは、難しい。
時には跳ね返され、
時にはかき消される。
どんなことをしても、無駄に終わることだってある。
それでも、
例え声が届かなくても、
そんな時のために、
伝えたい思いも感情も、
書くための手も、言うための口も揃っている。
誰かに自分を
再び、
筆を取る。
冷たくて優しい感覚が、戻ってきた。
『某月某日
今日、嫌なことがあった。────』
──おかえり。
自分で書いたその文字が、
私に
fin
テガミ 蒼原悠 @shakefry
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