アルコール

乾いてるけど光だけ濡れている


何を首をかしげてるのやら


誰でも自分だ あたりまえだ


嘘ではないが本当ではない。


心を大事に


自分のはあまり大事にしすぎることはない


大事であることを信じろ


そして忘れてた歌を思い出す


歌は思いだした、誰が歌ってるのか思いだせない


かまわない俺が歌おう


今は俺の歌だ


酔っ払いのアルコールは歌った。シャウトの途中、走ってきた車のサイドミラーに、肘があたって地面を転がり回った。回りながらレコードの事を考えた。


自動販売機の前で目を覚ました。皮のジャンパーは血にまみれ、一瞬喧嘩でもしたのだろうかと手の甲を見るとただ血がついてるだけ。カピカピに固まった血を剥がす。残った血はピカピカしていた。落ちていた車のサイドミラーを手にとって、顔を見ると目の上を切ったらしく血がが固まっていた。いつもの事だ。たまにある。いつもボクサーみたいだと思う。そしてボクサーの友達を思いだす。


頭が痛いし気持ちが悪い。病院に行って目の上を縫ってもらい、頭の中も調べてもらった。特に異常はなく頭痛と吐き気はただの二日酔いと胃があれすぎていると診断を受け胃薬をもらった。 そういえば自動販売機の前で誰かと話していたような気がする。思いだそうとすると吐き気がくる。いつもの事だ。電信柱に吐く。太陽の下のゲロはグロテスクだ。グリンピースがおもちゃのピストルの弾みたいにまん丸のまま転がってる。そして子供の頃に買ってもらったおもちゃのピストルを思いだす。それと同時にキラーンを思い出す。キラーンはおもちゃのピストルで星を撃ち落とす。そんなおとぎ話の主人公。


目を覚ましたのは家で、胃薬は気休め程度に効いていた。気持ちが悪い。酒が抜けたせいか、体がところどころ痛い。時計を見るまでもない。夜だ。何かが足りないと思いはじめる。いつも何かが足りないと思うが、酒を飲んだら忘れる。死んではいけないので、家には酒を置かないことにしている。自分は死なないと思ってはいるが、自殺ならば死んでしまうとは思っている。死にたくはない。


コンビニでビールを買って、歩きながら飲んだ。ビールが体に染みてきた。ビールが昨日の事を少し思い起こさせる。車にはねられ転がって、すぐ側にあったサイドミラーを手にとり歩いた。右目が腫れてよく見えないから左に曲がった。自動販売機の前に男が立っていた。火がついてないタバコを指に挟みながら言った。

「 タバコはあるのに、ライターがない」























  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ケルノジャクウ @KILLNOJACK

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ