時を超えてラブアゲイン

ノックターンルージュ

第1話

カビ臭い匂いとネズミの死骸が散乱して異臭を放っている地下室。



『ボリッ』



と湿った音が奥の方から微かに響いてくる。




目を凝らすと奥の方に半分腐食している扉があった。



湿った音は、その中から聞こえてきていた。




暫くすると扉が、




『ギィギィ…』




耳障りな音を部屋に反響させながら開いた。




中から、“ぬぅ”と現れたのは女であった。



この部屋には場違いのファッション。



深紅のドレス。



真っ赤なルージュ。



灰色の帽子から、金髪が覘いている。



灰色のコートを肩に掛けている。



年の頃は20代後半だろうか?



この女は素足であった。



何故だろう……。



この女から狂気の香りが漂っていた。



この女と同じ空間に存在するだけで、発狂するのでは……。



そんな危惧を抱かせる女が、



『ニッ』



と不自然な笑みを浮かべた。


この女、どう考えても人間では無い。



(逃げないと……)



身体が震えて上手く走れない。



足がもつれて転んでしまった。



『クックッ……』



後ろで、ゾクッとするような声が聞こえる。



這ってでも逃げなきゃ……



『うわぁ~』



いつの間にか乳白色の霧が立ち込めている。




逃げなきゃ……



足がもつれながらも、頭を上げて前方を見た。



突然、湧いて出たように墓石が現れる。



さっきまでは無かったのに……。



足を掴まれた。



もう駄目だ……。



『助けて!』



と、叫んだ途端に目が醒めた。




早瀬光一は、悪夢のせいで寝汗をびっしょりかき、

首や肩が、ガチガチ凝り固まっていた。



濡れた下着を着替えながら、首をゆっくりと回す。



『ゴキゴキ』


と音が鳴った。



最近、同じような悪夢を見るのは何故だろう。


悪夢を見るたびに首や肩が、

ガチガチになる。


理由が分からない。


……何かの予兆か前兆なのか?



枕元の目覚まし時計に視線を移すと午後4時を指している。


(えっ、嘘だろう……?)



たった2時間しか寝てないのに満ち足りた感じがする。



今日は1週間振りの本宮明菜とのデートだ。


明菜の事を思い浮かべると嫌な気分が消える。


光一は鼻歌を口ずさみながら、ステップを踏んだ。


明菜との出会いは六本木のジャズグラフだった。


CD発売ライブをやっていた時にお客として来ていた。



彼女とはフィーリングが合い、

それからの付き合いになるから、かれこれ2年になる。



プロポーズしたのは去年の12月15日。




自分のマンションに彼女を招待した。



10畳のフローリングの部屋の真ん中に

丸い硝子のテーブルを置いた。


テーブルの上には、明菜の好きなケーキと赤ワイン。



蝋燭をテーブルを囲むようにハートの形に合わせる。


約束し


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