第7話回想
「幸子ったら~」そう言い、美月はあどけない笑顔を浮かべ幸子の肩をトンッと叩く
「何よ美月だって~」などと返している、二人ともセーラー服姿だ、どうやら学校からの帰り道と言った様子
そんなやり取りをする二人の様子は誰がどう
見ても微笑ましく目に映る事であろう。
二人は親友だった、この日この
時までは確かに・・・
「そこのお嬢ちゃん達、ちょいとお待ちよ」まるで地の底から滲み出して来る様な声、いや、音の様な・・・
その音が背後から二人の足を止めさせる。
美月が後ろを振り向くと其所にはボロ布を身に纏った老婆が一人立っていた。何ゆえか幸子は後ろを振り向きもせず、その場に黙って立っていた。
老婆は見るからに怪しげな様子ではあったが、美月は「おばあさんどうしたの?私達に何か用かしら?などと優しげに返した。
老婆は又低く答えた「そう、そこのお前にな、こっちをお向き、そう、そこのお前だよ、
上手く化けたつもりだろうがね、騙されたりはしないよ?」
そう言い、幸子の方へと歩を進めようとした時、ふと、何かに気が付いた様子の老婆
「お前・・・何でこんな所に・・・それもこやつと・・・」
老婆は相当に驚いている様子であった。
そんな老婆を見つつキョトンとした面持ちの
美月、そんな二人の様子を伺いつつ素早くその場から霧の様に姿を消す幸子、幸子の消えた事など
気にもしない老婆
「おばあさん?私達初対面だと思うんだけどな」
そう困り顔で言う美月に老婆は言う
「あん?私らが私らが初対面?どういう意味だい?よもや忘れたとでも言うつもりなのかい?かぐや」そう老婆は美月に詰め寄る。
って「かぐや・・・?一体何の事を言っているの?」
その一瞬の間を突いたかの様に意識が遠退く美月
そして、自分の中の何かが弾け飛んだ感覚に教われた、一体何が起こったのであろうか?
そして聞こえて来る何者かの声
「なんだい、もう見付かってしもうたか、今度は上手く隠れたつもりだったのにの」
誰?いいえ、私の声で話をしているのは誰?
老婆はその言葉に身を震わせた
「どんなに隠れようがよ、その淫蕩な血の臭いに蓋は出来んよ、しかし上手い具合に隠れたというのは正にそうじゃな、よもや血縁を保っていたとは驚いたわいね、かぐやよ」
美月はその二人の会話?を聞いている、どこだか分からない処で
「まあな、保険よ、ある悪霊退治の得意だと言っていた武士の種よ」何やらおかしな内容の会話では在るが、今のこの有り様程ではない。
「ちょっと!これは一体どうなっているのよ!あなた達は一体何なの?幸子は?誰か説明してよ!」
がなりたてる美月
すると自分の声で妙な返事が返って来た。
「うるさいの、少し黙っていられんか?」
えっ?誰?誰が自分の声で自分に話掛けて居るの?などと案外と冷静に思えた美月自身も自分は今マトモ?なのだろうか?と思っている。
「一言言っておくがな、今この身体は我の支配下に在る、今この怪しげな者と込み入った話が在ってな、少し引っ込んでおれ」
どうやら今、自分の身体が自分の中の何者かに乗っ取られているらしく、自分自身は自分の中に押し込められて居るらしい、という事までは理解出来た、気がした・・・
「で、なんじゃ?まだ我を怨んで生きて居るのか?」と、自分の中の何者かが目の前の老婆に訊ねる。すると老婆は身体を怒りに震わせたかの様子でこう返す。
「怨んでいるのかだと?今そう言うたか?何ゆえそう思う?少しは罪悪感の様なものでも感じて居るのかね?1000年以上も経って居たとてな、この身をこんな有り様にしてくれたおのれを怨んで居ない訳が無かろうよ、え?かぐや姫よ」
老婆が今言っていた名、確かにかぐや姫と、かぐや姫というのはあのおとぎ話の?
まさか、などと思いつつも、今この状況を見てしまったあとでは何故か素直に受け入れらる気も美月にはした。
自分の中のかぐや姫と名乗る者、一体どういう事なのであろうか?
月明かりの綺麗な夜に 龍月 @ryugetsushadow
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