答え
桜の木はピンクのハート型の花びらを全て大空へと飛ばし、今では大昔のことのように感じる。
もう、あの卒業式からもう2ヶ月が過ぎ去っていた。
残った寒さに耐えながら咲いていた梅の花は、気づいた時には全身に「緑」を纏っていてもう暑苦しそうだ。
必死に受験勉強をしていた毎日も、試験当日のことも、卒業式も、泣き崩れそうになったあの日も、結衣との卒業旅行も、全てが昔のことに感じる。
そういえば、結衣が号泣したって言ってたドラマは正直イマイチだった。
結衣のせいでハードルが上がりすぎたんだ、と結衣のせいなんかにしてみる。
あれからまだ2ヶ月しか経ってなかった。
私は少し物思いに更ける。
少し想像してみる。
私の知らない世界の私の姿を。
今日も別のどこかで私は笑ったり、怒ったり、泣いたり、喜んだり、
知らない場所のどこかで、
私の知らない親友と出会ったり、
その友達たちと遊んだり、学んだり、
もしかしたら大切な人と出会ってたりして、喧嘩したり、その人との時間を過ごしてたりして、今の私の知らないことをたくさん経験してるのかな。
そんなことを思っていたらふと、授業の終わりを告げる鐘が鳴る。
はぁー、と息を吐きながら空に向かってグンと伸びをする。
久しぶりに結衣に連絡をしてみようかな。
後ろから声がする。
「波留、ご飯食べいこ!」
「うん!」
私は声の方を向き応えた。
その声はいつもよりワンオクターブ高く、裏返っていて莉那に笑われた。
今日も、やっと昼休み。
私の知らない世界の私。 みゅーと。 @musicdolphins
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます