運び屋・隼の仕事を通して少しずつ明らかになってくる、ほろびゆく世界とその謎に引き込まれました。淡々として単調なようでいて、所々で人々の感情がにじみ、変化があり、人間の生のぬくみがある。だからこそ繋がる最後の出会いが、一際際立つ――――殺伐とした世界の人間ドラマが見事に描かれている作品だと思います。
設定からして、してやられた感がありました。いや面白い。こんなシリアスな話かけないなと思ってたら、所々にギャグが混じってて思わずニヤリ。サイバーな崩壊世界の行く末を最後まで見届けたい。そんな気にさせる一作です。
終末の国、というなんとも心惹かれる名前のどこかが舞台のSF。『運送屋』の主人公から見たとある事件とそれを取り巻く人々の姿は断片的だけれど、最後まで読んだときに点と点だったものがつながって姿を現すところがとてもときめきます。 そういった物語としてのしかけも面白いのですが、荒廃した世界の雰囲気や、秘密を抱えた登場人物たちや、言葉の響きだけでがぜんわくわくしてくるキーワード(鳥の塔とか、歌姫とか!)がたくさん詰め込まれていて大変ときめきます。