第2話

ーセパレーツ区域積暦高校教員室ー放課後


「おい、立木、聞いてるのか」

「聞いてますよ、そりゃ。目の前にいるんだから。先生こそ補聴器とか大丈夫ですか?」

「相変わらずクソ生意気なのは変わらんな。なんで毎回呼び出されるのか分かってるのか?」

「分かってるけど無駄なことしてるなと思ってるだけです」

「無駄でもやらなきゃいけないのが先生という職業なんだ。俺も早く帰りたいんだからさっさと怒られろ」

「先生も大変なんですね。同情します」

「同情はいらないから遅刻するな」

「善処します」


遅刻を理由に怒られる女子高生の図。

観察対象『立木美樹』に今のところ不穏な動きなし。


「善処じゃねーよ。はいかイエスで答えるんだよ」

「いや、頑張ってはいるんですよ。ただ朝の六時までコンピュータを弄くって7時に寝て午後1時に起きて2時に学校に来ただけです」

「ほとんど学校が終わってるだろうが!」

「そうですね」

「ったく、お前が昔から電子機器系統に強いのも知ってるしこの学校で教えられる分野で無いのも分かる。だけどな、学校はちゃんと来い。でねぇと一人暮らしが認められなくなるんだ」

「すいません。叔父さん」

「学校では先生だ」

「はい、叔父先生」

「あのな、俺はお前のことが心配で」

「分かってるよ。今度から気をつけるから。ね?」

「まったく、兄貴に顔向け出来なくなるようなことだけはやめてくれよ。あまりにも遅刻が多いと俺が何を言おうが怖い怖い教育委員会に俺と同居させられるぞ」

「うげっ」

「思ってても口と表情に出すなよ」


立木誠二、年齢35歳。

立木美樹観察対象の叔父そして担任教師。

経歴に問題なし。

観察対象とは別々に住んでいる模様。

理由は『例の事件』が原因かと思われるが詳細は不明。


「分かったならとりあえず帰って明日はちゃんと来い」

「ありがとう誠二叔父さん」

「だから学校じゃ先生だっつってんだろ」

「はいはい。また明日」

「ったく」


教員室から出て友人と合流

仙崎千恵、年齢16歳。

立木美樹との関係、幼馴染。

経歴に問題なし。


「ごめん、千恵、待たせた」

「また怒られたの?誠二さんに?」

「そう。凄い真面目だからね。誠二おじさん」

「そうだね、美樹ちゃんは誰に似たんだろうね」

「え?どういう意味?」

「さぁ?どっか寄ってく」

「さすがに今日はまっすぐ帰る。寄り道してんの見つかったらなんか言われそう」

「私は構わないけど?」

「そりゃそうでしょうよ...」

「そういえば見た?昨日のアルト・コネクションの」

「あー、『ニュー・ヒーロー』とか言う馬鹿っぽい機械のこと?」

「そうそうその馬鹿っぽいの」

「あんなの作ってもどうせ差別されるんだし意味ないっての。それに本当に安全かなんて分からないし」

「相変わらず機械嫌いだねー」

「機械が嫌いなんじゃないの。アルト・コネクションが嫌いなの」

「まあ、うちらは未だに携帯だしアルコネの何が凄いのって感じだもんね」

「『ニュー・ヒーロー』なんてもうニューヒーで良くない?ニューヒーで」

「あはは!ニューヒーね。なんかそっちのほうが可愛い。そのニューヒーなんだけど、ふふふ」

「何?気持ち悪い」

「ヒドッ!じゃなくてニューヒーの無料体験のテスターに選ばれちゃいました!」

「えっ」

「なんかこれが終わったら本物をくれるっていうし届いたら後で使わせてあげるね」

「いや、その千恵、やめたほうが良くない?」

「大丈夫だって。本当心配症だなー。体に埋めるわけじゃないから」

「でも」

「大丈夫!ほら家についたよ、また明日」

「うん...また明日」


観察対象帰宅

これより接触行動に移行する。

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