デバッキング

モンスターなカバハウス

第1話


「この日本にまた新しい時代が来るかも知れないということですね!」

「そうですね。私達の理念でもありますが、より安全かつ安心な生活への新たな一歩を踏み出せると自負しております」


街の中、ビルの大型ディスプレイで新しいニュースが流れている。

何人もの人がその新しく報道されている衝撃の内容を見るために忙しい中一旦足を止め、上を見上げる。


「では、まずこちらの素晴らしい商品の開発に至った経緯をご説明頂けますか?」

「もちろんです。そのためにはまず我々人類の歴史から説明させて貰います。約100年ほど前に人類は携帯端末を手動で動かし、情報の検索や人と繋がる連絡機能を使用していました」

「今では考えられませんね」

「そうですね。当時の科学者、エヴリオ・バードが身体内臓型端末、我々も使用している『新たな繋がり方アルト・コネクション』を開発することに成功し、科学はさらなる進歩を遂げます。人の思念波を読み取ることでその人が今何をしたいかを即座に理解し、情報の伝達スピードが上昇します。そして動画、映像等を見る方法が2面のみではなく、脳に直接映像を送り込み、実際に自分がそこにいるかのように体験出来るようになったのも娯楽の進化に繋がったかと思います。ですが『新たな繋がり方アルト・コネクション』には未だ解決出来ていない問題があります」

「不適合者、族に言う『セパレーツ』ですね?」

「そうです。やはり一定数の人間、といってもごくわずかですが、この『新たな繋がり方アルト・コネクション』を埋め込む段階で体が拒否反応をしめす人が一定数出てきてしまいました。当時は問題視されていませんでしたが、アルト・コネクションを使える人間と使えない人間とではやはり知識、効率、価値観にかなりの差が出てしまったため、各地でこの不適合者に対する風当たりが強くなって行きました」

「そこで特別区画『セパレーツ』の誕生ですか?」

「アルト・コネクション不適合者を保護する特別区画、セパレーツ。当時議論を呼んだこの案件ですが不適合者を守る意味でも必要な処置だったのではないでしょうか?」

「用は人を閉じ込めてるだけですからね」

「ですから私達はこのアルト・コネクションをこのセパレーツに住んでいる方にもなんとか使用する方法はないかと考えました。それがこちら、外付けアタッチメント『ニュー・ヒーロー』の開発です。こちらはアルト・コネクションのサーバーに繋がることができ、今まで無理とされてきた外部からの脳波の読み取りや、脳にも直接情報を送ることが出来る機会なのです!」

「何度聞いても凄いですね。つまり」

「そうです。つまり人類皆が同じように生き、同じように感じることが出来る。今はまだ機会自体の処理速度がアルト・コネクションに追いついてはいないものの、いずれはセパレーツという保護区自体が無くなるくらい差は無くなるかと思いますね」

「こちら安全性等にも問題は無いのでしょうか?」

「はい、勿論です。後は正式に量産する認可が必要なテストをクリアすれば日本全国で、そしていずれは全世界で販売が可能になります」

「楽しみですね!それでは本日のニュースは私、アナウンサーの梶谷雅と『ニュー・ヒーロー』開発者の田地正彦さんでお送りしました」


そのニュースを見たセパレーツに住む住民の反応は歓喜に満ち溢れていた。

これで馬鹿にされずに住む、迫害されずに住む。

けれども何の反応も示さない女子高生が一人ぼそっとつぶやきます。


「また新しい殺しの道具か。バッカみたい」


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