「悪VS悪」の正義なき戦い。戦慄と慟哭の異能SFロボットアクション!

最新話(第4章幕間・177話)まで拝読しました。
最初にカテゴライズすると、異能SFロボットアクション?とでも表現すればいいのでしょうか……。
かなり独自性の強い設定の作品なので、既存作に類例を探して比較説明するのは難しいですね。

主人公の少年は、特殊かつ超強力な異能力者で、国家権力からさえ危険視されているダークヒーロー。
その前に立ち塞がるのが、敵勢力が抱える巨大人型兵器「ジャスティス」です。
主人公は、肉親を奪われたことによる復讐心から、「この有人戦闘用ロボットを破壊し、究極的には世界中から排除殲滅したい」という願望を持っており、目的達成のために戦いはじめます……
なんと、己の身体ひとつで! 

もちろん異能力者ですから、主人公の強さは徒手空拳でも、むしろ戦闘ロボさえ凌ぐほどなのですが、大型機械兵器相手に生身の人間がバトルを挑む――というシーンのスペクタクル感には、思わず驚嘆。

また、非常によく考えられているなあと思うのは、この作品における武力衝突の背景や戦闘に臨むキャラの動機付けの部分でしょうか。
権益上の野望や腐敗した体制で軍事行為に及ぶ敵対国家が悪ならば、そこに私怨と復讐心で反逆する主人公たちも公的秩序や法規を無視した悪であり、大局的に概観すれば「悪VS悪」の対立を描いた物語になっているのです。
「敵も味方も、争いが悪以外の何かであるはずがない」
――まるで、そんな逆説的な倫理観が言外に語られているようです。

争いに身を置けば、心は狂うし、人は死ぬ。
むしろ、か弱くて、死んで欲しくない人から先に死ぬ。
このお話は、読み進めるほど、そんな当たり前の事実をまざまざと突き付けてくれます。

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