ばれてしまった秘密

 早めの昼食を済ませて、学校に行く準備を終えて優美と登校。

 弁当がない分いつもより鞄が少し軽いなとお気楽なことを考えながら学校に向かう。

 隣を歩く優美は、アニソンを歌いながら上機嫌だ。

 学校に着くと、昼休みで多数の生徒が廊下をうろうろしていた。

 遅刻した俺と優美からしたら、静かな授業中に校内を歩かなくて済むだけありがたい。


 「あれ? 香織さんですよね?」


 「あぁ、そうだな。 何してるんだろ?」


 中庭にいる白石さんを廊下の窓から発見。

 白石さんの周りには3人の男子生徒がいる。

 少し距離があってわかりにくいが、白石さんの表情はなんだか怯えているように見えた。

 嫌な予感がする。


 「鞄、教室まで持って行っておきましょうか?」


 「ごめんな。 ちょっと様子見てくる」


 「隼人さんならそう言うと思ってましたよ」


 鞄を優美に預けて、中庭に向かう。

 廊下を走ってはいけないと小学生の頃によく言われた気がするが、そんなこと今は気にしない。


 「白石さん!」


 「水町くん!?」


 「お前誰だよ?」


 「俺は水町隼人。 白石さんのクラスメートで部活仲間だ」


 「俺達、ちょっとその子に内緒の話があるんだけど邪魔しないでくれないか?」 


 「なんの話か知らないけど、白石さん困ってるじゃないか。 話なら俺も聞く」


 「お前には関係ない話だよ。 ほっといてくれないか?」


 「み、水町くん。 私なら大丈夫だから」


 「ほら、大丈夫だってよ。 だいたい、お前2年だろ? 俺達、3年だぞ。 先輩の言うことは素直に聞いとけよ」


 「白石さん。 本当に大丈夫ならなんでそんな顔してるんだ?」


 「おい、無視してんじゃねぇよ!」


 さっきから、ごちゃごちゃと言ってきてる長髪の男に胸ぐらを掴まれた。

 まともに喧嘩なんかしたことがない俺は、情けなくも手と足が震えてしまっている。

 けど、こんな奴らを前に、白石さんだけを残して逃げることはできない。

 恐怖を押しのけるために、唇を噛んで長髪の男を睨みつけた。


 「おい、お前達何やってるんだ? 校内で喧嘩か?」


 学年主任の先生が駆け寄ってきた。

 後ろには、優美がいる。


 「なんでもないですよ」


 そう言うと軽く舌打ちをしながら、3人組の男子生徒はその場を後にした。

 先生にいろいろ聞かれてもめんどくさいので、俺達も「大丈夫です」だけ告げると、先生は職員室に戻っていった。

 俺達は、とりあえず中庭のベンチに座って話をすることにした。


 「優美、ありがとうな。 助かったよ」


 「私は、当然のことをしただけですよ」


 「水町くん、優美ちゃん、本当にありがとう」


 「俺は、当然のことをしただけだよ」


 「隼人さん! 真似しないでください!」


 「それより、あの3人組は白石さんに何の用だったんだ?」


 「実は私がコスプレしてテレビに出てたことがばれてしまったみたいで……」


 「えっ!? 香織さんテレビに出てたんですか?」


 「はい。 そういえば、このことは水町くんしか知らないんでしたね」


 「すごいじゃないですか! ん……? なぜ、隼人さんだけ知ってるのですか?」 


 「たまたま、気付いたというか、なんかそんな感じだ」


 「なんか怪しいですね」


 「そんなことより、テレビに出てたのがばれて何か言われたのか?」


 「はい。 ファンクラブを作りたいと言われました……」


 「……」


 「それだけですか?」


 「え、はい。 ですが、そんなこと言われたの初めてで、どうしていいか……」


 「それだけなら勝手にどうぞって感じで良いんじゃないですか?」


 「確かにそうだな。 ばらされたくなかったら連絡先教えてくれとか、コスプレ写真撮らせろ的なことを言われたなら一大事だけど、ファンクラブなら勝手にどうぞ、で良いと思う」


 「良くなぁぁぁい!!!」


 「!?」


 突如、ベンチの背後にある草陰から美香と勇太が現れた。


 「お前、いつからいたんだ?」 


 「まさか、あのコスプレ美少女アテナちゃんが香織ちゃんだったとは……」


 勇太は、拳を握りながら震えている。

 そういえば、こいつにあのテレビの話聞いて、白石さんがテレビに出てる映像見せてもらったんだったな。


 「勇太、どうしたんだ?」


 「どうしたもこうしたもあるか!? ファンクラブを作るなら会長は俺だ!」


 拳を天に向けて叫ぶ勇太の頭を隣にいた美香が叩いた。


 「この馬鹿はほっとくとして、香織が迷惑ならちゃんと断ったほうが良いんじゃない?」


 「迷惑というわけではないのですが、私なんかのファンクラブなんて恐れ多いというか……」


 「ミカンと優美ちゃんにはすでにファンクラブがあるんだ。 香織ちゃんのファンクラブができても不思議じゃない」


 「えっ!? 私のファンクラブあるのですか?」


 「うちのファンクラブ……?」


 「知らなかったのか? 男子はみんな知ってるぞ。 なぁ、隼人」


 「いや、俺も今初めて聞いたんだが」


 「訂正だ。 男子は、ほとんどみんな知ってるぞ」


 昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。



 「とりあえず、この話の続きは放課後ということで」


 俺の一言で、その場は解散となった。


 教室に戻り、優美と美香のファンクラブの存在についても気になるが、白石さんがテレビに出てたことが学校中に広まったりしたら大変だなと心配しながら、午後の授業を受けていた。

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俺のノーパソの秘密を知った同居人 迷い猫 @mayoineko

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